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公園すべてが、ひとつの彫刻 札幌市モエレ沼公園

■「地球を彫刻した男」

 イサム・ノグチさんは1904(明治37)年、ロサンゼルスで生まれた。
 父は英文学者で詩人の野口米次郎、母はアメリカ人の作家、レオニー・ギルモア。2歳から13歳まで母と日本で暮らすが、1918年に単身でアメリカへ渡り、アーティストをめざして彫刻を学びはじめた。
 22歳、パリで彫刻家ブランクーシの助手をつとめ、その後もさまざまな人に出会い、創作の世界を広げていく。舞踏家のマーサ・グラハム、建築家のルイス・カーン、日本では丹下健三、北大路魯山人などがいる。

画像:イサム・ノグチ 撮影:野口ミチオ

 1933年の冬、イサムさんにある考えをひらめいた。
 「未来の彫刻は地球そのものに刻み込まれる」
 そして、モエレ沼の原形ともなる「プレイマウンテン」をデザイン。彫刻を単なる芸術作品として捉えることを拒み、「ぼくの創造の根底にあるのは、役に立つことにつきる」、「彫刻をもっと日常体験と直接的にかかわり合うものにしたい」と強く考える。この思いは、生涯を通じてイサムさんの創作の根源となった。

 また、イサムさんは多くの人と出会うとともに、ヨーロッパをはじめアジア各国を旅して歩き、さまざまな自然、古代からの遺跡、建築などにふれ、環境彫刻やランドスケープ・デザインなど、幅広い活動を開始する。戦後は日本を訪れ、陶器作品や、和紙と竹を使った照明「あかり」などのデザインも行っている。1969年には香川県牟礼(むれ)町にアトリエを設立(現在はイサム・ノグチ庭園美術館として公開)。
 世界各地のさまざまな空間で、彫刻、モニュメント、環境設計を続けたイサムさん。「大地を彫刻した男」とよばれ、20世紀を代表する偉大なアーティストが、モエレ沼に、生涯最大の、いままでの集大成ともいえる作品を残してくれた。

[おもな作品]

  • 慶応義塾大学「新万来舎」(1950年)
  • 広島の平和大橋(1952年)
  • パリのユネスコ本部の庭園(1958年)
  • 大阪万博の9つの噴水(1970年)
  • デトロイトの公園「フィリップ・ハート・プラザ」(1979年)
  • 東京の草月会館ロビー「天国」(1977年)
  • テキサスのキンベル美術館「星座」(1982年)
  • コスタ・メサの彫刻公園「カルフォルニア・シナリオ」(1982年)
  • フィラデルフィア「ベンジャミン・フランクリンのためのモニュメント」(1984年)
  • ヒューストン美術館の彫刻公園(1986年)
  • ヴェネチア・ビエンナーレの滑り台「スライド・マントラ」(1986年)
  • 高松空港「タイム・アンド・スペース」(1989年)
  • 札幌大通公園のすべり台「ブラック・スライド・マントラ」(1992年)
  • 札幌・モエレ沼公園(2005年)
    (参考:イサム・ノグチ庭園美術館)

[関連情報]

  • イサム・ノグチ庭園美術館
    http://www.isamunoguchi.or.jp/
    香川県牟礼にある美術館。1969年につくられたアトリエで、多くの作品が並ぶイサム・ノグチさんの聖地のひとつ。
    住所:香川県木田郡牟礼町牟礼3519
    電話:087-870-1500
    ※見学は、往復はがきによる事前予約が必要です。
  • イサム・ノグチ財団
    http://www.noguchi.org/(英語のみ)
    ニューヨークにあるイサム・ノグチ美術館の紹介や、世界中にある作品や交友のあった人々などが写真で見られます。
  • 株式会社オゼキ
    http://www.ozeki-lantern.co.jp/
    伝統的な岐阜提灯のメーカーで、イサム・ノグチさんがデザインした照明器具「あかり」の製造販売をしています。
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