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公園すべてが、ひとつの彫刻 札幌市モエレ沼公園

ゆるやかなカーブ、直線と円、幾何学模様。

 モエレ沼公園の風景をつくる形は、どこから見ても美しく、むだがなく、すっきりしている。大らかでのびのびと北海道の空気にとけている。
 20世紀を代表する芸術家イサム・ノグチさん(1904―1988)が最後の仕事として手がけたこの公園は、1988年の設計から約17年の歳月をかけて、すべての工事がおわり、今年7月に完成した(1989年より順次オープン。イサム・ノグチ財団ショージ・サダオ氏監修、アーキテクトファイブ設計統括)。
 札幌はもちろん世界中から多くの人が訪れ、北海道の新しい顔となりつつある。広大な空間全体がひとつの彫刻作品であり、私たちは彼が創造した宇宙のなかで遊ぶことができる。

▼2005年8月のモエレ沼公園。周囲をお堀のように沼が囲む(写真提供:モエレ沼公園)

 この公園となった場所は、かつてゴミの埋め立て地だった。
 吹きっさらしで風が強く、上空をカラスが飛び交い、不燃ゴミを運ぶ大型車だけが出入りする場所だった。だれも今のような風景を想像していなかったにちがいない。
 ただひとり、イサム・ノグチさんを除いては。

モエレ沼公園

▲1980年代、上空から見たモエレ沼の様子
(写真提供:モエレ沼公園)

■モエレ沼の空と風

 子どもたちの歓声がひびき、散歩する人であふれる今のモエレ沼を見たら、イサムさんはどんな風に思うだろう。ニッコリ微笑んで喜ぶだろうか。「次はこんな遊具をおこう」「あんな噴水をつくろう」と新しいアイディアを次々と提案するだろうか。

 札幌市東区にあるモエレ沼は、昔、このあたりを蛇行して流れていた豊平川がつくった三日月湖といわれる。アイヌ語では「モイレ・ペッ(静かな・川)」と呼ばれていたらしく、周囲の開発がすすんだ今もくっきりと馬蹄形の水面を残している。
 モエレ沼公園に来てまず感じるのは、広い空と吹き抜ける風だ。
 空や風なんて何処にでもある、と思われるかもしれない。でもここに来るとそれが私たちにとっていかに大切なものかが分かる。それは、この空間全体が空と風を内包して設計されているからだろう。

 園内には、高さ62メートルの「モエレ山」をはじめ、展覧会などの会場としても使われるガラスのピラミッド、片面が石の階段になった「プレイマウンテン」、直径2メートルのステンレス円柱でできた「テトラマウント」、水を高く吹き上げ、渦を巻く「海の噴水」などが配されている。春になると桜が咲きほこる広場には、色鮮やかでユニークな遊具がならぶ。
 古代から続く遺跡のような、未来から来た遊園地のような、世界にたったひとつの芸術空間がゆったりと広がっている。

(※) の写真は提供:札幌市

ガラスのピラミッド、HIDAMARI
広場に点在する遊具
石段から登っても、スロープを登っても、芝生から登ってもいいプレイマウンテン
子どもたちが水遊びに夢中になるモエレビーチ
モエレ山から海の噴水を望む
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