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旅人をさそう知床5 知床遊覧

クジラ棲む海から、秘境を望む 観光船で行く根室海峡  重田サキネ

クジライメージ画像(※)写真提供:羅臼の宿まるみ 撮影:奥山明成

 流氷が運んだ滋養豊かなエサを目当てに集まり、出産や子育てをしながら知床沿岸で夏を過ごす海の生物たち。特に羅臼沖の根室海峡は、巨大なマッコウクジラをはじめ、ミンククジラ、ツチクジラなど、どこよりも多くのクジラを観察することができるスポットとして有名だ。また、カマイルカやイシイルカが船と戯れるように海面を飛ぶ姿や、群れをなす豪快なシャチの姿も見ることができる。
 彼らの存在はつまり、ここが豊かな海であることのあかし。この目でそれを確かめに、そしてまた、彼らの棲む場所から秘境・知床半島を眺めてみたいとの思いから、観光船に乗ることにした。

(※)写真提供:羅臼の宿まるみ 撮影:奥山明成
「羅臼の宿まるみ」が運営する観光船「アルランIII号」
▲「羅臼の宿まるみ」が運営する観光船「アルランIII号」(5〜10月運航)。朝8時30分ころには客が集まり始め、乗客名簿に記帳したり、トイレに行ったりと準備が進む。朝9時に出港し11時30分くらいに帰港。

食い入るように波間を見つめる乗客たち
▲甲板の寒さも何のその。「何か見えない!?」と、食い入るように波間を見つめる乗客たち。

低空飛行で散って行くハシボソミズナギドリ
▲船に驚き、低空飛行で散って行くハシボソミズナギドリ。群れとなって海上に休む姿はあちこちで見受けられ、見つけるたび船を近づけて飛翔を楽しませてもらった。

■人の思い通りにはならない。それが「自然」。

 「明朝、船が出るかどうか? 分かりません、明日になってみないと」。そんな…、と不満げな顔をする都会からの観光客に、「海次第ですから」と言葉が続く。ホエールウォッチングをメインとした、観光船「アルラン」根室海峡クルーズの受付での風景だ。海次第。その言葉を聞いてドキリとした。自然は、全天候型遊園地ではない。人の都合に合わせていつでも好きに遊べるマチのルールを離れ、いま、大自然のふところ近くにいることを、改めて実感した。

 翌朝、船は出た。快晴とはいかず、肌寒い。船はスピードを出して30分ほど走り、観察ポイントへ移動。ただでさえ気温の低い洋上では、船が風を切ると吹雪の中のように寒い。それでも乗客たちは、「何か」が見えることを期待して甲板に立ち、彼方を凝視している。そこへ、あっ!という声。見ると、イルカが数頭、波間を跳ねながら泳いでいる。歓声があがった。
 次いで海上に黒いラインのようなものが見えた、と思ったら、これがハシボソミズナギドリの大群。船がそちらに向かうと、いっせいに飛び立って、海すれすれの低空飛行で広範囲に散っていく。その見事さに、再び歓声。

[関連情報]
■「夏の知床観光船アルラン根室海峡クルーズ」問い合わせ
「羅臼の宿まるみ」
住所:羅臼町八木浜町24
TEL:01538-8-1313

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