北海道人・特集バックナンバー HOME バックナンバー一覧

旅人をさそう知床4 根室海峡の漁業

極上の「羅臼昆布」に会いに行く。

取材・文・写真/重田サキネ
 その名を聞けば、すぐさま「高級」という形容詞が思い出されるほど、質の良さで知られる「羅臼昆布」。正式名はオニコンブといい、厚岸から北方領土にまで分布するが、何といっても主産地は羅臼町だ。道内外の一流料亭・割烹で、料理の味を決めるダシとして重用される逸品であり、天然ものは弾力があり黒くコク深く、養殖ものはやや褐色で甘みが強い。
 この豊かな風味を生んだのは、滋養あふれる根室海峡、つまりは知床の大自然にほかならない。羅臼昆布のふるさとを、訪ねてみた。
[関連情報]
・北海道デジタル図鑑 100の物語[食]コンブ
http://www.hokkaido-jin.jp/zukan/story/04/03.html

■短い夏の漁期に、精一杯の力仕事をくり返す

 車の窓から、さわやかな潮風が流れ込んでくる。普通と何か違う、と思うのは、その中にくっきりと昆布の芳香が混じっているせいだ。見れば、浜辺のあちこちで、幅広の昆布が天日干しされている。
 羅臼昆布の漁期は、2年モノ昆布が十分に生育する夏の1カ月ほど。今年は7月22日から始まり、8月25日あたりまで続くという。朝6時からの採取開始にそなえ、漁師たちは4時くらいには起き出し、5時過ぎにはすでに漁場へと向かっている。思い思いの場所で合図を待ち、浜に白旗が揚がると、いっせいに作業開始。短い夏の漁期に、どれだけ収穫できるかが勝負なのである。
 「まっか」という、先が二股に割れた長い棹で昆布をねじり取り、船に勢いよく引き上げる。かなりの力仕事。「足・腰がパンパンになるよ。塗ったり貼ったりしてしのいでるけどね」、と漁師たちが笑う。わりと浅瀬で漁が行われるため、その様子が港や海岸からよく見えて面白い。見る見る間に船は昆布の山となる。漁が終わる昼頃には、いっせいに船が帰港し、海が埋め尽くされる様子は「圧巻」だ。

羅臼昆布
▲羅臼昆布の幅は25〜27cm、長さは大きいものだと2m70cmに及ぶこともあるという。乾燥室の中にいる人と比べると、その長さは歴然。

羅臼昆布を玉砂利を敷き詰めた上に並べる
▲玉砂利を敷き詰めた上に並べるのは、昆布に砂がつくのを防ぐため。

羅臼昆布の周囲にあるひらひらした部分、赤葉
▲つややかな昆布の周囲にあるひらひらした部分は赤葉と呼ばれ、出荷時には切り落とされる。が、捨てずにダシ用などとして商品化。余さず使う。
羅臼昆布のマンニットというアミノ酸の一種
▲よく昆布の表面に現れる白い粉は、マンニットというアミノ酸の一種。旨味成分だが、知らない人は汚れと思い、せっかくの成分を洗い落としてしまうという…。
漁師・杉本一彦さん
▲漁から帰り、ひと息つく建根別地区の漁師・杉本一彦さん。漁協組合・養殖部門の流通委員も務めるベテラン。「今年の昆布は大漁。質もまあまあってところかな」。

先が二股になった「まっか」で昆布をねじりとり、勢いよく船の上へ
先が二股になった「まっか」で昆布をねじりとり、勢いよく船の上へ。とても女性にはできない力仕事だ。

文字通り昆布の山となって船は帰ってくる
文字通り昆布の山となって船は帰ってくる。



前のページへ
生命のつらなる場所知床半島目次へ戻る
次のページへ

生命のつらなる場所 知床半島 北海道人トップページへ 知床半島マップ