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春 流氷が去るとサカナの季節


 流氷が去り、海あけを迎えるこの季節は秋とともに魚が豊富な季節だ。この時期の代表格はウニ。知床のウニはエゾバフンウニで、名前は悪いが、日本の近海で捕れるウニのなかではもっとも美味とされる。最高級の羅臼コンブをエサにして育ったウニなのだ。水生生物ではナマコの旬もこの季節だ。
 魚ではキンキが美味しい。場所によって、キチジ、メンメなどと呼ばれる魚で、体は赤く、白身魚とは思えないほど脂がのっている。高級魚で、焼いても刺身にしてもうまいが、地元漁師は昆布で巻いた蒸し物や、湯煮にして、大根おろしと生醤油で食べる。
 カレイは羅臼を代表する魚で、多種多様なものが水揚げされるが、この季節ならばサメカレイがうまい。サケも、トキシラズ、または単にトキと呼ばれるこの季節のものが脂がのってうまい。

キンキとキンキの開き
▲キンキとキンキの開き
「キチジ」「メンメ」とも呼ばれる。生で刺身や煮ものにするほか、開いて軽く干したものを焼くとまた格別。
キンキの昆布包み蒸し
▲キンキの昆布包み蒸し
羅臼コンブに包んで蒸し上げ、大根おろしと醤油で食べる。一度食べたら忘れられない味わい。(写真提供:知床倶楽部)
トキシラズ
▲トキシラズ
春から初夏にかけて水揚げされるトキシラズ(時知らず)は、まだ成熟していないシロサケのこと。脂がのって、焼いても刺身でもよい。


夏 エビ・カニ・貝が美味しい


ボタンエビ
▲ボタンエビ
甘味の強い大きなボタンエビは、まずは刺身で。カラつきのまま塩焼きにしても美味。


ラウスバイ
▲ラウスバイ
羅臼の長川吾郎氏が発見したツブの仲間。(長川氏については歴史人物列伝をご参照ください)
http://www.hokkaido-jin.jp/
issue/200507/sp_12.html


 夏は、羅臼にしては漁が薄くなる。他の産地に比べると多くの魚が水揚げされるが、水温の高いこの季節は、魚の脂のりも寒い季節には譲る。
 この季節、ねらい目は、魚類以外のサカナ。エビやカニ、貝の類だ。とくにエビはこの季節が旬。北海道といえばホッカイシマエビが思い浮かぶが、根室海峡では、シマエビよりも高級なボタンエビやブドウエビが主力となる。ガサエビという地元にしか出回らない希少なエビもこの季節。
 北海道で捕れるカニの種類はすべて捕れるが、ここでは他地域ほど宣伝していない。カニに頼らなくてもいいだけの豊かさがあると言うことか。しかし輸入物とは比べものにならない味の深みがある。地元ならではの楽しみにカニの内子(卵巣)や外子(蟹卵)がある。いずれも鮮度が求められるので地場でこそ味わいたい。
 貝では、ラウスバイと呼ばれるツブを食べたい。握り潰せるくらいカラがやわらかく、刺身、塩ゆで、醤油煮などどれもうまい。

ラウスバイの塩ゆで、カニの内子、コンブの煮物
▲ラウスバイの塩ゆで、カニの内子、コンブの煮物 (*)
番屋の食卓には、毎日旬の魚貝がふんだんに並ぶ。
マスのはさみ漬け
▲マスのはさみ漬け
夏から水揚げが始まるカラフトマスのはさみ漬。カラフトマスは「セッパリマス」または単に「マス」と呼ばれ、知床で多く捕れる魚のひとつ。(写真提供:羅臼ふるさと料理研究会)


秋 魚を食べるならばこの季節


 秋は魚のもっとも充実した季節だ。さまざまな魚種が水揚げされるが、やはり代表格は4年連続水揚げ日本一となったサケ。見た目は太平洋だが、味はオホーツクと言われる。
 サケのなかで近年話題なのがケイジ(鮭児)だ。これはアムール川を母川とするサケと言われ、秋サケ数千匹に1匹の割合で水揚げされる。小柄だが、サケのトロといわれるほど脂がのり、刺身でも焼き魚でも絶品だ。その分、一匹数万円と値段も超高級品だ。
 サケが一段落するとイカの季節となる。羅臼のイカはスルメイカで味が深い。乾物よりも、透き通るほどのイカ刺しがおすすめだが、機会があれば浜に伝わる「沖漬け」を味わって欲しい。
 またこの時期の旬にホッケがある。羅臼のホッケは「ラウスボッケ」としてブランド化されている。地元ではホッケをすりつぶし、コンブで巻いてカマボコにする。同様にカレイ類もこの時期が美味しい。ソウハチ(宗八)、クロガシラ、マガレイなどが代表的だ。

ケイジの焼き魚
▲ケイジの焼き魚
一匹買うのは大変でも、切り身の焼き魚なら財布も安心。


サケの飯ずし
▲サケの飯ずし
新鮮な魚でつくる飯ずしはまさに浜の味。サケのほか、ホッケやハタハタなどでもつくる。(写真提供:羅臼ふるさと料理研究会)

イカの沖漬け
▲イカの沖漬け
もとはイカ釣り船の上で、捕ったばかりの生きたイカを醤油樽に入れてつくったという沖漬け。(「羅臼の宿まるみ」提供)
ホッケとホッケの開き
▲ホッケとホッケの開き
大きくて身の厚いホッケは手早く開いて塩をし、浜風にあてて一夜干しに。生ではすり身にしたり、飯ずしや揚物にしたり食べ方はさまざま。
ホッケのカマボコ
▲ホッケのカマボコ
ホッケのすり身に卵、でんぷん、調味料を加えて羅臼コンブで巻き、やわらかく蒸し上げたカマボコ。(写真提供:羅臼ふるさと料理研究会)


冬 氷塊を縫いながらタラを追う


スケソウ汁
▲スケソウ汁
コンブでとっただし汁に、スケソウのぶつ切りと大根などの野菜を入れて煮、塩や醤油で味を調える。魚の旨みがじんわり広がる。(「羅臼の宿まるみ」提供)


タラ鍋
▲タラ鍋(*)
タラの切身とタチ(タラの白子)をたっぷり入れた冬の鍋は寒い夜のごちそう。

 冬の魚が他の季節よりもいくぶん薄く感じられるのは、海を覆う流氷のせいばかりではなく、この時期の漁師がイカとスケソウの漁に追われるからだろう。スケソウとマダラに代表されるタラは冬の味覚の代表だ。
 スケソウは身がやわらかく、すり身にしてカマボコなどの原料にされるため、食べる魚としては印象が薄いが、地元では干物、鍋物、焼き物などさまざまに食べられる。
 マダラも冬が旬。特に羅臼の物は「ラウスタラ」としてブランド化されている。身は鍋物に、卵は真子、精巣は白子として、煮物、鍋物の食材となる。
 冬になると民家の軒先にはタラやスケソウ、カレイなどが干され、この季節の風物詩となっている。凍ったもの削ぐようにして食べる「リュウベ」という食べ方が地元では行われる。
 お歴々に囲まれて目立たないがタコも忘れてはならない特産。知床のものはミズダコで、通年捕れるが正月のあるこの季節に入れておく。

ソウハチガレイの一夜干し
▲ソウハチガレイの一夜干し(*)
11月下旬になると、家々の軒下にソウハチが吊るされる。
ソウハチの焼き魚
▲ソウハチの焼き魚
軽く干したソウハチをこんがりあぶるとヒレや頭まで美味。酒の肴に絶品。
写真(*)は北海道アート社

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