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【知床体験!】初夏の一日、フレペの滝と森のなかを歩いてみよう  取材・文・写真/編集部
   初夏の知床半島をたずねた。
 空はあいにくの小雨模様で、知床連山は霧にけむっている。しかし今日は一日、知床の森をゆっくり歩いてみよう。ガイドのかたは、「森を感じるには最高の日ですよ」とうれしいことを言ってくれた。さて、どんな発見ができるだろうか。
フレペの滝と森のイメージ画像

 知床自然センター(※1)の建物の後ろ側に、ミズナラやシラカンバなど広葉樹の森があって、そのなかに遊歩道が続いている。海岸の断崖にある「フレペの滝」まで、片道約1キロ。森林があり草原があり、知床半島の自然がコンパクトにまとまった散策コースになっている。さっそくカッパを上下着込んで出発した。

知床自然センター(※1)知床自然センター:知床国立公園の玄関口にあり、自然環境や野生動物などの情報案内、調査や保護活動、自然体験プログラムのガイドなどさまざまな活動を行っている。知床に足を踏み入れる前に立ち寄るとよい。知床の自然を大型映像(ダイナビジョン)で紹介する設備や「100平方メートル運動ハウス」など隣接する。またホームページの「知床の情報」にある「ヒグマ遭遇マニュアル」はとても詳しく状況別に解説されて分かりやすい。ぜひご一読を。

 

▲フレペの滝に向かう遊歩道。鳥の声が聞こえる
知床半島の草原
  ▲いきなり視界がひらけて森から草原になる

■風がつくった草原

 森に入ると雨風が弱くなり、暖かく静かになった。木の根元にはササが茂り、どちらを見ても緑、緑である。深呼吸すると木の葉の香りが鼻の奥まで染みてくる。足下に小さな花を見つけたり、小鳥の声を聞いたりしながらしばらく歩くと、いきなり目の前がひらけた。森が突然おわって、ササとススキと、ワラビの草原になったのだ。これはもちろんだれかが木を切り払ったわけではなく、自然に形成された草原である。

 知床半島の海岸線は、切り立った断崖が続いている。海岸線は長い時間をかけて波や流氷にけずられ、深い入り江になっているところが多い。そして、その上の台地は海から吹き上げる風が一気に集まって通り抜けるため、いつも強い風が吹き抜けている。つまり、あまりに風が強いので木が生長できず、必然的に背の低い草原になったというわけだ。

▲高さ100メートルの断崖から滝の水が流れ落ちる

フレペの滝。断崖の下はオホーツク海。深い入り江になっている

▲断崖の下はオホーツク海。深い入り江になっている  

■断崖から流れ落ちる不思議な滝

 草原の先にある展望台にたどりつくと、遮るものがなく、ますます風が強くなった。霧も濃くなって肌寒い。でも目の前に、別名「乙女の涙」と呼ばれるフレペの滝が現れると、そんな寒さも吹き飛んでいった。霧の草原と、高さ100メートルの断崖、絶え間なく流れる白い滝、強風に吹き上げられて、ちり紙のようにフワフワ舞うカモメたち。吸い込まれそうな景色である。

 「フレペ」はアイヌ語で「赤い水」という意味で、滝の水が知床連山の伏流水で硫黄や鉄分が多いため、手をつけると赤くなることから名づけられたという。
 この滝には流れ込む川がひとつもなく、断崖絶壁の途中からいきなり水がほとばしり出ている。草原の下が水を通す風化した溶岩層と、水を通さない溶岩層になっていて、その間を雨や雪解け水が地下水となって流れ、断崖から吹きだしているのだ。大地の水が海にむかって注ぐ、美しい滝である。


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