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特集 北国ラーメンものがたり 北海道四大ラーメンを訪ねる 旭川編 取材・文・写真/重田サキネ
黄金の観光コースは、動物園と旭川ラーメン


旭川のラーメン

▲旭川のラーメン
協力:「蜂屋5条支店」旭川市5-7

旭川ラーメン、そのスープと麺の秘密

 「旭川ラーメン」と聞いて思い浮かべるのは、何といっても「しょうゆ」味。それも、豚骨と魚介類(おもにアジ)のダブルスープで独特のコクを生み出した、印象的なしょうゆ味だ。各店のこだわりによって、比較的あっさりめのものから、グレイビーソースのような濃厚さとパンチを持つものまで、味の個性はさまざま。最近では、鶏ガラや野菜もよく使われている。
 かつて旭川は養豚業が盛んで、捨ててしまう骨を活用しようと豚骨スープが考え出され、食堂などで利用されていた。これがラーメンのスープのルーツ。強烈な匂いを消し、なおかついい風味を加える工夫として、煮干しや昆布など魚介類を併用するようになったという。


なまラーメン
なまラーメン

▲中太の縮れ麺。断面は角、太さ約2ミリ

 このスープには、もう一つ重要なポイントがある。
 「ほら、湯気が立ってないだろ」と言われてよく見ると、確かに表面は穏やか。しかし箸を差し入れると、とたんにふわあ…と湯気が立つ。これは、ラード(脂)の効用なのだ。加えられたラードが、スープに甘み・まろみを与えると同時に、表面に膜を張り、熱を閉じ込める。旭川の冬は極寒だ。体を温め、冷えにくくするラードはまさに生活の知恵と言える。
 そんなスープのインパクトに負けない麺は、中太の縮れ麺。旭川ラーメンの麺は加水率(水分比率)の低さが特徴で、そのためスープの吸い込みが段違いにイイ。からめて食べる&内側からもウマイ、というわけだ。噛むと、シコッ、とする快い歯応えとコシ。「これ以上ウマイ麺はどの土地にもない」と断言する地元ファンがいるのもうなずける。




しょうゆ・みそ・しおの三傑が語る


しょうゆ〜「蜂屋(はちや)」
「蜂屋5条支店」店長、白井隆さん

▲「蜂屋5条支店」店長、
白井隆さん

 旭川ラーメンの歴史は、昭和22年から始まった。この年、中華そばをヒントに、スープの改良を重ねて「蜂屋」と「青葉」がしょうゆ味の「ラーメン」を売り出す。
 当初「蜂屋」は、ハチミツを使ったアイスクリーム(これが店名の由来)やうどんも出す店だったが、やがて評判となったラーメン一本で勝負することに。最新流行の食べ物=ラーメンは、現在より少々特別な存在で、昭和30年代には「日曜日には映画を見て、蜂屋でラーメンを食べる」という過ごし方が、市民の間で理想の楽しみとなっていたほどだ。
 「蜂屋」では今も、創始者・加藤枝直が生み出した味を守り続けている。
「時代と共に食材が変わったので、微妙に変化はしているかもしれない。でも、流行に合わせて変えることはしません」と、5条支店の白井隆店長は語る。


 伝統の味の秘密は、なんと「塩水づくり」。海産物を隠し味に仕込んだ塩水をつくることから始め、それをダブルスープや厳選した生醤油と合わせていく。豚骨を煮出す時は、白濁させてから一度冷却し、よけいな脂分を取り除く。その作業のために設備が必要となることから、平成4年に「新横浜ラーメン博物館」の出店依頼があった時は、環境が整わず断念。あきらめきれない同館関係者が説得を重ね、7年後、環境を整えてようやく出店となった逸話を持つ。味に妥協するくらいなら、出店しない。「蜂屋」のこだわりの勝利である。

旭川の麺文化を語る時には欠かせない「加藤ラーメン」の特注麺

▲旭川の麺文化を語る時には欠かせない「加藤ラーメン」の特注麺。水分が少ないためさわるとやや硬いが、その分、ゆでると実によくスープを吸い込む。ちなみに、同社創業者と「蜂屋」創業者は兄弟。


蜂屋5条支店

▲「蜂屋5条支店」
住所:旭川市5-7 小路ふらりーと

「蜂屋」のラーメン

▲「蜂屋」のラーメン
「ラーメン」というこの表記に、元祖の重みが感じられる。写真は、濃いめスープ。ラードの甘み・まろみがクセになる美味。

 守り続けた味の魅力に、旭川まで足を運ぶ観光客も多い。「若い子がバイトして貯めたお金で旅行に来て、『あ、ここだ!』と目を輝かせて入って来るのを見ると、ウマイ1杯を出さなきゃ、と思いますよねえ(笑)」と店長。また地元客も、麺のかたさと脂の濃さを選んで注文できるため、年代、季節、体調に合わせて楽しみ、年齢や好みが変わっても常連をやめない。変わらぬ味。こうしてブームに左右されず存在し続ける店があってこそ、その土地に「ラーメン文化」が生まれるのだ。




[関連情報]
 新横浜ラーメン博物館
 URL:http://www.raumen.co.jp/home/

 (株)加藤ラーメン
 URL:http://www.iibeyahokkaido.co.jp/katoura-men/


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