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特集 北国ラーメンものがたり 北海道四大ラーメンを訪ねる 函館編 取材・文・写真/高山 潤・編集部
味はあっさり、気骨たっぷり・続き

澄んだスープにも個性がある

創業当時の屋台「星龍軒」
▲創業当時の屋台「星龍軒」(昭和20年代後半)

親子二代の味「星龍軒」

 創業は1951(昭和26)年。「星龍軒」という店名の由来は、星の数ほどある店のなかで、龍のように秀でた存在でありたいという思いから。
 1923(大正12)年生まれの創業者・佐々木松次郎さんは、1946(昭和21)年に満州から帰国して函館での生活を始めた。湯川(ゆのかわ)の料亭で和食の調理を経験した後、中華料理店「陶陶亭(とうとうてい)」の柳小路店で修行した。
 当時、厨房のチーフだった中国(山東省)出身の王鴻吉さんに、料理の腕を仕込まれたという。そこから独立して屋台の店を始めた。
 「当時の大門には、ラーメンの屋台がたくさんあった。広小路には30軒くらい並んでいたはずだ。スープの取り方もわからない屋台がほとんどで、屋台から店舗を構えられたのはほんの数軒さ」
 創業当時のメニューは、ラーメン・チャーハン・ワンタン・ヤキソバ。ラーメンはもちろん塩味で、当時は1杯50円。仕事を終えたバンドマンやダンサーが、深夜にラーメンをすすっていったという。

 現在は息子で二代目の由了さんが、妻の妙子さんとともに厨房に立つ。17年前に店を任された。
 「手間は仕込みに9割。ラーメンはスープが命で、毎日作っていても、納得できる味にする難しさは変わらないですね。だからこそ、ラーメン作りはおもしろいのかも知れませんが」
 豚骨と野菜からとったスープは、使い切らずに翌日のスープのベースにする。これは松次郎さんの代からおこなってきた「呼び戻し」という手法だ。親子二代のスープは、深い風味を感じられる角のとれた塩味で、気がつけばどんぶりから麺もスープも消えていた。


「星龍軒」
住所:函館市若松町7-3

「星龍軒」の塩ラーメン、一杯480円   1代目、佐々木松次郎さん   2代目、息子夫婦の由了さんと妙子さん  
  ▲「星龍軒」の塩ラーメン、一杯480円   ▲1代目、佐々木松次郎さん   ▲2代目、息子夫婦の由了さんと妙子さん  



シンプルを極めた1杯「十字街 鳳来軒」

 「難しいことはしてませんよ。『こだわり』と表現するほど大げさなものではありません。ただ、自分が美味しいと思うラーメンをめざして作っているだけです」
 店の創業は1948(昭和23)年で、初代の経営者が廃業した後に、現店主の千田正昭さんが名前を引き継ぎ店を再開した。ラーメンの塩タレは、新巻鮭に使用する粗塩から作る。毎日、寸胴鍋1個分のスープを仕込んで、それがなくなれば店じまい。ラーメン50杯分が限度で、たいていは13時過ぎにはのれんを下ろしてしまう。

 もう一つの自慢は、濃厚な味のギョウザ。
 千田さんの父親は、戦前の旧満州鉄道の車内販売権を持っていた関係で、地元の料理人が作る「ギョウザ」のレシピを見知っており、それをさらに千田さんが取り入れた本場仕込みのギョウザだ。
 どんぶりに9分目まで注がれた澄んだスープ。レンゲを沈めると、スープの透明感がよくわかる。かるくかき回して、スープを一口すする。体に馴染み染みこんでいくような感覚を楽しめる。


「十字街 鳳来軒」
住所:函館市末広町8-1

  鳳来軒ご主人の千田正昭さん   鳳来軒のメニューはシンプルに、ほぼラーメンのみ。   「昔、中国で食べた味だ」と感動する客もいるギョウザ   「鳳来軒」の塩ラーメン、500円。営業は14時までだが、スープが無くなり次第閉店。  
  ▲ご主人の千田正昭さん   ▲メニューはシンプルに、ほぼラーメンのみ。   ▲「昔、中国で食べた味だ」と感動する客もいるギョウザ   ▲「鳳来軒」の塩ラーメン、500円。営業は14時までだが、スープが無くなり次第閉店。  



汗もぬぐわず飲み干すスープ「ラーメン めんしょう」

 函館市東部の住宅街にあるラーメン店。3年前にオープンした新しい店であるが、ここでもしっかりと函館塩ラーメンの特徴が生きた1杯を楽しむことができる。
 店名の「めんしょう」とは、「麺で勝負」という意気込みから。ご主人の上村利光さんの、料理人としての第一歩は、旧青函連絡船の食堂の調理師として始まっている。1988(昭和63)年3月に連絡船が廃止された後は、JR函館駅前の人気ラーメン店で腕をふるった。そして、50歳を過ぎての独立。
 「夢でしたから。店を持つことの苦労は大きいですが、それ以上に自分が理想とするラーメンを作っている幸せを感じてますね」
青函連絡船の就航当時の様子
青函連絡船の就航当時の様子
▲青函連絡船の就航当時の様子

 スープは5時間ほどかけてゆっくり煮込む。使い切らなかったスープは翌日に残さず、毎日新しいものを用意する。
 「最初から塩で勝負するつもりで店を始めました。料理人の腕がそのまま反映するのが塩ラーメンだと思います。だからこそ、まずは塩で評判になりたいと思ったわけです」
 昔風のさっぱり味のスープは、食べ初めから終わりまで、塩味の加減が安定していた。飲み干したどんぶりの底を見つめながら、思わずもう1杯食べたくなるラーメンである。

  ラーメン めんしょうご主人の上村利光さんと、妻の明美さん   「めんしょう」の塩ラーメン、550円  
  ▲ご主人の上村利光さんと、妻の明美さん   ▲「めんしょう」の塩ラーメン、550円  
「ラーメン めんしょう」
住所:函館市昭和2-1-23

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