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特集 北国ラーメンものがたり 北海道四大ラーメンを訪ねる 函館編 取材・文・写真/高山 潤・編集部
味はあっさり、気骨たっぷり

中国の湯の種類
▲監修辻勲『中国料理専門料理全集』(柴田書店)より

手間ひまかけた清湯スープ
 函館ラーメンの特徴である「透明・塩味・あっさりスープ」は、中国料理の「清湯(ちんたん)」に近いといわれる。前章でも述べたように、「清湯」が塩ラーメンの直接的なルーツであるかどうかは明確になっていないが、函館ラーメンを作る調理人たちの多くは、自身が作るラーメンスープと「清湯」との共通点に言及する。

 この透きとおったスープを作るには、豚骨や野菜などを入れた寸胴鍋を火にかけ、沸騰させることがないようにじっくり煮込む必要がある。沸騰させるとスープは白く濁り、「白湯(ぱいたん)」へ変化するためだ。
 「透明」なスープは、料理人の手間の結晶である。スープに色がついていないのではなく、色がつかないように気を遣いながら長時間にわたって煮込むことで、ようやくあの透明感を得ることができる。

 また、味噌や醤油に比べて、それ自体に旨味を持たない「塩」で味つけするスープは、ほぼダシの良し悪しで味の勝負が決まる。
 そして、「あっさり」した後味は、港街に生きる料理人たちの「気っ風」を体現しているかのようだ。今も昔も、函館を吹き抜ける潮風のようなスープを、函館人は一杯のラーメンに感じているのではないだろうか。




函館塩ラーメンの味を守れ!――函館製麺組合の取り組み

函館らーめんガイドマップ
▲「函館らーめんガイドマップ」。初版10万部を発行して、市内各ラーメン店などに配布された。函館周辺を5つのエリアに分けて、69店舗のラーメン店を紹介している(現在閉店した店もふくむ)。
函館製麺組合の宮川照平さん 函館製麺組合の宮川照平さん
▼2004年9月4・5日に開催された「第3回函館塩ラーメンサミット」の様子。函館駅前の大門エリアにある催事スペースで開催され、2日間で23,000人を集客した。(写真提供:函館塩ラーメンサミット実行委員会)
2004年9月4・5日に開催された「第3回函館塩ラーメンサミット」の様子

 「このままでは、函館ならではの塩ラーメンが失われてしまう。そんな危機感があったんですよ」
 函館製麺組合の宮川照平理事長は、現在の函館塩ラーメンブームが訪れる前の状況をそうふり返る。そのきっかけは、自らが経営する製麺会社の工場見学に来た市内の小学生に、「いちばん好きなラーメンはなに?」と聞いたアンケートだった。
 宮川さんは、ほとんどの子どもが「塩味」と答えるはずだと思っていた。ところが、回答は塩だけではなかったし、塩が断トツでもなかった。
 「函館で塩ラーメンが親しまれてきたのは、ここが温暖な港街だからだと思っているんです。新鮮な海産物を食べるとき、お刺身ならほんの少しの醤油、鍋なら塩仕立てのあっさりスープと、素材の味が生きるシンプルな味つけが好まれますよね」
 当たり前と思っていたそんなことが、子どもたちには受け継がれていなかった。

 函館製麺組合では、2000年に「函館塩ラーメン」と染めぬかれたのぼりを製作し、2001年に養和軒の歴史などにも触れた「函館らーめんガイドマップ」を発行、2002年には5月8日(養和軒が「南京そば」の広告を最初に掲載した日)を「塩ラーメンの日」に定めるなど、積極的な塩ラーメンの普及活動を行っている。
 また、2002年から3年続けて開催された「函館塩ラーメンサミット」では、初代の実行委員長を宮川さんが務めた。こうして、函館塩ラーメンの評判は全国に広がった。函館市民もまた、塩ラーメンに目を向け直し始めた。

 「塩ラーメンは、函館の郷土食と言って良いでしょう。あっさり味のスープは、この街で育まれた食文化です。失わせるわけにはいきませんし、これからも美味しいラーメンが生まれ続けていければと思います」


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