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特集 北国ラーメンものがたり 北海道四大ラーメンを訪ねる 取材・文/編集部
「シューマイラーメン」を知っていますか?
札幌の老舗ラーメン店にのこる、屋台の伝統
シューマイイメージ画像 ラーメンといえば、ふつう思いうかぶのはギョーザ。 ところが札幌の古いラーメン店には、シューマイを出す店がいくつかある。 これがどこも個性的でおいしく、しかも「1個60円」というバラ売りや、 「シューマイラーメン」というメニューもあり、初めて見る人はかなり驚く。 ラーメン店のシューマイについて、その背景を探った。

 ラーメン店にシューマイが現れたのは、昭和初期、札幌にラーメン屋台が登場したのと同じころと思われる。昭和5(1930)年に父の渡辺勝井氏が屋台を始めた「いちまる」の3代目・巖さんは言う。
 「父は戦前からラーメンの麺とシューマイの皮を作っていました。シューマイなら、リヤカーでひく小さな屋台で、コンロがスープ用と麺あげ用の二つしかなくても、調理できたからだと思います」
 シューマイは昼間のうちに仕込み、夜に店をあけてからは、スープをあたためている鍋にセイロをのせて蒸す。コンロの火口が余計にいらず、さほど手間もかからない。ギョーザならそうはいかないだろう。シューマイは、「ラーメンだけじゃ物足りない」という客の要望に応えた、手軽なサイドディッシュだったのである。

 「龍鳳」の2代目・松田滋さんも、昭和20年代のシューマイ事情を話してくれた。
 「ススキノにあった最初の店では常時シューマイを蒸していて、お客さんが2個とか3個とか好きな数だけ頼んで、ラーメンのスープに入れて食べていました」
 ここから現在もメニューにある「シューマイラーメン」が生まれた。


「龍鳳」のシューマイラーメン 「龍鳳」のシューマイラーメン。 しょうゆ味ラーメンにシューマイが2個のっていて、すこしおくと、ほどよくスープと馴染んでくる。 スープのほうにもシューマイの肉汁が混じって、またちがう 味が楽しめる(道央の美唄市では、焼き鳥をそばの汁に 入れて食べる人が多いが、それとよく似ている)。


 同じく昭和20年代創業の「味の三平」や「芳欄」も、シューマイをメニューに掲げている。札幌の製麺企業・西山製麺の創始者のひとり、西山仙治氏が始めた屋台「だるま軒」ののれんにも、「シューマイ」「ワンタン」の文字が並んでいる。
 西山製麺常務の西山博さんに聞いた。
 「戦後、東京や横浜にたくさんあったラーメン屋台では、シューマイやワンタンは定番メニューでした。仙治は向こうで商売をしてきた人で、そういう技術を習得して札幌に来ましたから、最初からシューマイも出していたようです」
 当時札幌では仙治氏の作る麺を仕入れている屋台が多かった。かれの麺は味がよいと評判で、麺といっしょにシューマイの皮も取引され、実際によく売れた。こうして、札幌のラーメン店にシューマイが定着していったようだ。
 また、シューマイをラーメンに入れて食べるスタイルは、かつて東京などでもよく見られたという。戦後の材料不足の時代、チャーシュー用の塊肉を仕入れることは難しかったはずである。しかし具に肉類のないラーメンはさびしい。そんなとき、こま切れ肉でもできるシューマイは、庶民の強い味方だったのだろう。
 小さな屋台に登場し、きびしい時代のなかで人々に愛され続けたシューマイ。現在、東京などのラーメン店で見ることはほとんどないが、札幌のラーメン店ではやや控えめにひっそりと、でも確かに受け継がれている。

「龍鳳」のシューマイ
「龍鳳」のシューマイは、いまも滋さんの母・千代さん (先代勘七氏の奥様)の手作り。 ひき肉と玉ネギのシンプルな組み合わせで、スープに 入れても合うように、濃い味つけはしていない。
「芳蘭」のシューマイ
「芳蘭」のシューマイ。こちらもラーメンに入れて 食べるお客さんが多かった。 昔なつかしい肉屋さんのシューマイのような味わい。
「味の三平」のシューマイ
「味の三平」のシューマイは、かくし味にバターと チーズを使っている。ふつうに辛子しょうゆで 食べてもいいが、ウスターソースや塩コショウも合う。


取材協力:阿部 大さん


味の三平   「味の三平」の初代・大宮守人氏が考案したみそラーメン
「味の三平」の初代・大宮守人氏が考案したみそラーメン。炒めたひき肉とモヤシ、玉ネギがスープになじみ、コシの強い熟成太麺によく合う。
▲「味の三平」住所:札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラルビル4階 午前11時の開店とともに常連客、観光客が入り交じってやって来る。通常のみそラーメンのほか、寒い季節に身体があたたまる辛みそラーメンも人気。

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