園の正門から入ると右手に、こじんまりした「タスマニア館」がある。
ここは今から16年前にできた施設で、北海道とオーストラリアのタスマニア州(6つある州の1つ)が姉妹提携を結び、カンガルーなどタスマニア産の動物が寄贈されたことからスタートした。ちなみに、札幌は北緯42度、タスマニア島は南緯42度に位置しており、地球の南北でちょうど同じ緯度にある。
タスマニア館に、新しい仲間が増えていた。
ベネットアカクビワラビーの赤ちゃん、1歳4カ月のメスで、名前はまだない。
彼女のおかあさんは子育て中に事故で亡くなってしまい、その後、飼育係の川野弘幸さんがミルクをあげて大事に育てた。小さなころから人と接してきたため、あまり人を警戒しない。私たちが手を差し出すと、小さな鼻をフンフンさせて近づいてくる。
これが、ものすごくかわいい。
ワラビーは小型のカンガルーの仲間で、大人になっても背丈が70センチくらいしかない。目がぱっちりしてまつ毛が長く、モコモコの毛におおわれて、まるでぬいぐるみのようだ。親もたいへんにかわいい。しかし、赤ちゃんのあどけない顔と仕草は別格である。
春の屋外デビューを前に、現在、特別お散歩訓練が行われている。毎日1回(月・火は休み)、お客さんたちがしゃがんで見守るなか、館内の通路を30メートルほどゆっくりと歩くのだ。エサのニンジンを見せると、小さな両手で受け取り、カリカリと音を立てて食べる。あちこち寄り道したり、後戻りしたりするので、短いルートを5分くらいかけて歩く。
どんなに機嫌の悪い人でも、たとえ悲しいことがあった人でも、この姿を見て微笑まない人はいないだろう。動物の赤ちゃん(もちろん人も含めて)が元気に育つ姿は、明るくて、うれしいものである。
動物園には、ほかにもいろいろな赤ちゃんがいる。
同じタスマニア館のモモイロインコ夫婦には、ここ数年続けてヒナが生まれた。現在は目下巣のなかで子育て中。その様子がビデオカメラで生中継されている。また、別のワラビーのお腹には、まだ親離れしていない赤ちゃんが入っていて、たまに袋から顔を出すのが見える。歩き出すのはもう少し先のようだ。
今年1月に生まれたキリンは、「シゲジロウ」と名前が決まり、おかあさんの「たかよ」に寄りそっている。4月以降は屋外の広い運動場に出る予定。
昨年生まれたホッキョクグマのツヨシは、みんなに愛されてスクスク成長し、先日無事に釧路市動物園に旅立っていった。
新しい命が生まれ、育ち、また新しい命へつながっていく。動物園では、そのドラマにたくさん出会うことができる。 |