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北海道の名物弁当を訪ねて
終点の町の、初めての駅弁根室本線・根室駅「花咲かにめし・花咲かに釜」
「花咲かにめし・花咲かに釜」が買える根室の地図 根室駅は大正10年の開業以来駅弁のない駅だった。しかし2004年、ハナサキガニを使った駅弁が誕生。
ハナサキガニは、襟裳岬から根室半島北のオホーツク海にかけて分布するが、主な漁場は、根室半島の太平洋側東部。ゆでるほかに、味噌汁仕立ての「鉄砲汁」も美味。(写真提供:光洋水産株式会社)
釧路の駅弁屋「釧祥館」。地元のお弁当屋さんとして昔から愛されてきた。
ハナサキガニのお弁当は、根室へ届けるため、朝4時までに作り終えなければならない。カニをたっぷりのせたお弁当が、つぎつぎと作られていく。
塩ゆでしただけでもしっかりした味のハナサキガニの身を、昆布だしで仕上げる。
食欲がそそられる中身のみえるパッケージ。これも工夫のひとつ。
現在、一番人気の「たらば寿し」。
店長の佐藤洋子さん(左)と、スタッフの松川直美さん。佐藤さんは、厨房では厳しい顔をみせるがとても気さくで明るい店長。7年勤めるベテランの松川さんは、なくてはならない存在だ。
佐藤部長は、店長の息子さん。まったく違う仕事から転身して弁当業界に飛び込んだ。「今、駅弁に求められているのは、ただ安いものではなくて、高くても本当においしいものです」。

 ハナサキガニの駅弁を手がけているのは、釧路の弁当屋・釧祥館(せんしょうかん)。明治時代から現在まで、海産物の駅弁を中心に作り続けている老舗である。
 釧路市の中心部、北大通から道を1本入ったところにある、かわいらしい建物に「釧祥館」の文字。駅弁マークがはためく入り口に、立ち売りの箱が飾られているのがなんとも懐かしい。
 人気商品は、デパートなどの駅弁大会で常に上位にランクインする、タラバガニを使った豪華な「たらば寿し」と、30年前からのロングセラー、ケガニを使った「かにめし」。こうしたカニの弁当は、ずっと釧祥館の看板だった。

 「駅弁のない根室に、ぜひ根室らしい駅弁を作りたいと思い、ハナサキガニのお弁当を作ることにしたんです」と、釧祥館部長の佐藤功一さん。しかしこれは大きなチャレンジだった。
 「ハナサキガニは、いつもたくさん獲れるカニではないので、手に入りにくい。殻もトゲトゲしていて固く、手作業で剥き身にするのに手間がかかります。だから普通はあまり使われないんですよ」。
 確かに、ケガニやタラバガニの弁当はよく見かけるが、ハナサキガニはあまりない。釧祥館はハナサキガニ攻略のため、根室の水産会社と共同開発に乗り出した。

 「弁当屋にしかできない弁当にしたかった」
 佐藤部長はそう語る。「ただ大きなカニ身を乗せた、見栄えのいいお弁当なら誰でもできます。見かけではなく、質の高い、手間ひまをかけたものを作るのが弁当屋です」
 その精神は、実際に食べてみるとよくわかる。「花咲かにめし」のご飯は、カニ入り特製ダシで炊きあげ、ご飯自体にカニの身が入っているわけではないのに、きちんとその味が感じられる。ご飯の上には、しいたけやタケノコなどを刻んだ中具(なかぐ)、さらに醤油づけのイクラと、昆布ダシで煮たカニがたっぷりのっている。
 かわいい釜に入った「花咲かに釜」は、同じ特製ダシを使ったカニ入り炊き込みご飯で、昆布と醤油で煮たタケノコとカニが上にのり、食感の違いも楽しめる。
 そして最大の特徴は、時間が経ってもおいしく食べられること。それが弁当屋の弁当なのだ。

 「ハナサキガニは脂が多くて、味がしっかり濃厚です。それがとてもおいしいのよ」と、店長の佐藤洋子さん。ぷりぷりとした身は、噛むとうまみがしみ出してくる。この魅力を最大限ひき出すことに成功したのは、カニを知り尽くし、駅弁を知り尽くしていたからこそ。
 「根室は終点だから、汽車を降りたらお弁当は必要ないでしょ。反対に、根室から乗るとたくさんの駅弁がある釧路が近い。だから根室にはなかったのかもしれませんね」と、佐藤さんが話してくれた。
 駅弁のある町になった根室駅は、長かった空白の歴史の一歩を踏み出した。

 

「花咲かにめし」「花咲かに釜めし」が買える場所
  • JR根室駅構内キオスク

 

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