北海道人・特集バックナンバー HOME バックナンバー一覧

特集 北海道、駅弁紀行 北海道人トップページへ
北海道の名物弁当を訪ねて
地域で作り上げた、空とぶます鮨 女満別空港「オホーツクます鮨せっぱり」
「オホーツクます鮨せっぱり」が買える女満別空港の地図 「せっぱり」は、主にオホーツク海でとれるマスの愛称。カラフトマス、オホーツクサーモンなどとも呼ばれる。
カラフトマスを使った「オホーツクます鮨せっぱり」。淡白な味とチーズがよく合う。日高産のリコッタ・ノストラーナは、メンバーのお米屋さんが探してきた一品。
北武フーズの田村豊さん。本業は漬物製造で、じつは弁当は初めてだった。「いろんな意見を聞きながら作るのは、なかなかまとまらなくて難しいですね」。
網走市水産港湾部の湯浅崇さん。「網走には、『活き粋き七珍(いきいきななちん)』と名づけたキンキ、クジラ、シジミ、シラウオなど水産物がいっぱい。これからさらに、おもしろいお弁当ができるかもしれません」
カラフトマスは、7月〜8月下旬がもっともおいしい。秋にはサケと同じく繁殖のため川にのぼり、オスの背中が“せっぱり”になる。「ABASHIRIおさかなパンフレット」より 
さっと酢漬けにしたマスを、チーズ、青じそとともに酢めしにのせ、ササの葉でていねいに巻いていく。
網走管内の留辺蘂産エゾマツの経木は、ふわりと木の香りがする。最初「熊の手土産せっぱり」という名で魚型の経木だったが、空弁にするとき小型の四角い経木にした。予約購入では魚型も選べる。
「オホーツクます鮨せっぱり」のポスター。

 「オホーツクます鮨せっぱり」を製造している、北見市の「北武フーズ」を訪ねた。
 スタッフの女性がひとつずつ、ていねいにマスを酢飯にのせていく。間には白いチーズと青じそをはさみ、くるりとササの葉で巻いてできあがり。
 「こうして見ると簡単そうだけど、この形が決まるまで、なかなか大変でした」
 副社長の田村豊さんが、カラフトマスのます鮨製造にたどり着くまでの道のりを聞かせてくれた。

 カラフトマスは、網走地方のオホーツク南部海域だけで年間約1万1000トンの水揚げ高があり、北海道全体の約半分を占めている。網走を代表する魚のひとつといってもよい。
 「でも、サケの缶詰など加工品の原料となるのがほとんどで、値段も安く、カラフトマスそのものとして食べられることはほとんどありませんでした」と田村さん。豊富な水産資源であり、味もよいカラフトマスをどうにかして産業として見直したい。そう考えていた「産業クラスター研究会東オホーツク」のメンバー13名が立ち上がり、カラフトマスの有効利用をはたすべく、「ます鮨作り」にのり出した。

 「産業クラスター研究会東オホーツク」は1998年に設立した団体で、いくつかの部会から構成されている。観光部会、ホタテ部会、またたび部会などがあり、そのひとつが「ます鮨部会」。そもそもクラスターとは、ブドウやサクランボの「房」という意味で、産業クラスターというのは、一つの地域で発展する産業というものは、さまざな関連企業や団体、人々が、房のようにつながって連携したり競争したりするという考え方。また、そうなることをめざして、各地でたくさんの産業クラスターが設立されている。

 ます鮨部会のメンバーもじつにいろいろで、網走市役所の若手職員、地元網走管内の漁業者、米屋、水産加工業者、経木(きょうぎ)屋、そしてます鮨作りを発案した東京農大の助教授など。月に2、3回、それぞれの仕事が終わった夜に、網走市にある東京農大に集まって、商品づくりについて徹底的に話し合った。道産米をどう使うか。折箱をどうするか。味はどうするか。
 発案当初、めざすは「富山のますずし」だった。しかし、どんなにうまくいったと思っても、富山を手本にしている以上、それを越えるものはできない。メンバーはみんな「富山のものと比べて…」と評価されることに疑問を感じはじめた。

 「富山のすしではなく、北海道だけの、オホーツクらしいすしを作ろう!」。
 富山式の丸い形をやめ、1カンずつササの葉で巻くスタイルにした。マスの身もどっしりと厚く切り、食べごたえを重視。また、淡白な味に合うように、醤油より濃い味の魚醤(ぎょしょう)をそえることにした。試食会などで出たアイデアもどんどん取り入れた。北海道産のリコッタチーズを入れるのは札幌のシェフのアイディア。マヨネーズをつけるという大学生の意見を取り入れたこともある。折箱も、今まで例のない魚型を開発した(現在は小ぶりの角型に変更)。ネーミングも北海道らしい名前をいくつも考えた。
 こうして、約2年の試行錯誤の末に誕生した「オホーツクます鮨せっぱり」は、航空会社の目にとまり、「空弁」として女満別(めまんべつ)空港に登場した。現在は新千歳空港でも販売され、ジワジワと人気を集めている。
 オホーツクの人々の努力と情熱によって、ます鮨に生まれ変わったせっぱりは、全国の大空をめざして今、胸を張って飛びはじめた。

 

「オホーツクます鮨せっぱり」が買える場所
  • 女満別空港
    BLUESKY JALUX(出発ロビー店、ゲートショップ)
  • 新千歳空港
    キオスクBLUESKY JALUX (出発とお土産のフロア内)
    売店BLUESKY JALUX(ゲートラウンジ内)

 

前のページへ 次のページへ
北海道、駅弁紀行 目次へ戻る