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北海道の名物弁当を訪ねて
おつまみから生まれた空弁 釧路空港「えぞしか肉弁当 生姜風味の天ぷら」
「えぞしか肉弁当 生姜風味の天ぷら」が売っている釧路の地図 鹿肉は、ヨーロッパでは古くから冬のごちそう。北海道といえばエゾシカである。2004年、釧路空港にあるレストランが待望のエゾシカ弁当を発売。道東ならではの空弁が誕生した
空港には、出発を待つビジネスマンの姿が目につく。
1段目は、香ばしく揚げたエゾシカ肉に、しょうがと長ねぎを添え、甘辛のタレをかけたごはん。
2段目には、北海道の食材をモチーフに工夫をこらしたおかずが並ぶ。
煮込みは和風の味付けで、牛すじ煮込みに似ている。寒い季節、いちばん人気のメニュー。
空弁のもとになった、鹿肉の天ぷら。ごはんがついているのと、また違った味わい。
店長の佐藤良幸さんは、小清水町生まれ。「道東出身者として地元の食材をおいしく使いたい、という意識が強くあります」
道東の空の玄関「釧路空港」

 道東の空の玄関口・釧路空港で「えぞしか肉弁当」を作っているのは、レストラン「エメラルド」。本社は阿寒湖温泉にある「カラカミ観光ホテルエメラルド」で、2004年3月ころから、宿泊客のみが食べられる地元のエゾシカを使った料理に人気が出た。それがエゾシカ肉の空弁誕生へとつながっている。

 「えぞしか肉弁当」は、注文してから5分ほどで、ほかほかの作り立てができあがる。主役のエゾシカ肉は、薄く衣をつけて揚げた天ぷらで、甘辛いタレがかかり、ふっくらごはんの上にのせられている。おかずは、旭川産アスパラのベーコン巻き、釧路産サケのすり身ダンゴやオホーツク産のホタテなど、種類がいろいろなのがうれしい。これらが、かわいいランチボックスに2段になって納まっている。

 考案したのは、店長の佐藤良幸さん。東京や釧路などで修行を重ね、エゾシカ料理はホテルで経験し、調理のコツをつかんだ。
 「まず、一晩以上きっちり血ぬきをすることと、スジをしっかりとること。このひと手間が大事です。でないと冷めたときに味に影響しますから」と、佐藤さんは教えてくれた。さらに衣をつけて揚げると、肉のパサつきがなくなり、やわらかさが長時間保たれる。シカ肉の性質を知りつくした、佐藤さんだからこその発想である。この考えつくされた料理法は、あるきっかけから生まれた。

 釧路空港は東京や関西との直行便もあるが、道内便の札幌からのビジネスマンが、いちばんよく利用する。レストランには、仕事帰りで、搭乗前にビールを飲みにやってくる人が多い。エゾシカをもっと食べてもらいたい、とつねづね思っていた佐藤さんは、「おつまみにも、ごはんのおかずにもなるメニューはできないか」と考えていた。
 ふつうエゾシカ肉は、タタキやステーキで食べるのが定番になっている。しかし、和食の経験もある佐藤さんがめざしたのは、和食と洋食をミックスした、庶民的で新しい料理だった。なんどでも食べたくなる、親しみやすい味を作りたかった。試行錯誤の末、しょうゆ味をベースに、道産の野菜をたっぷり加えた和風の煮込みを作ったところ、これが大好評。「エゾシカってこんなにおいしいの」と、出張のたびにやってくる札幌の常連客も増えた。
 これはいける、と手ごたえを感じて考えた次なるメニューが、弁当の元となった天ぷらだった。サンマの蒲焼をヒントに、甘辛のたれをかけてみると、鹿肉とばつぐんの相性。店に出したとたん、ビールにぴったりと絶賛された。

 その後、空港で新しい空弁を出すことになったとき、佐藤さんは迷わず「エゾシカでいこう」と決めた。冷めてもやわらかい天ぷらは、弁当にはうってつけだった。売ってみて意外だったのは、レストランで食べたいけれど、飛行機の時間が気になって落ち着かない、という年配の旅行客が買っていくようになったこと。空弁なら機内でゆっくり味わうことができる。この空弁をきっかけに、エゾシカファンは着実に増えている。
 「エゾシカのお弁当としては、これ以上ない、というほどの出来です」と、佐藤さんは自信をのぞかせるが、その認知度はまだまだ低い。まずは北海道の人にこそおいしさを知ってほしいと、新しい挑戦は今も続いている。

 

「えぞしか肉弁当」が買える場所 釧路空港
  • 釧路空港
    レストラン「エメラルド」(空港ビル3階)
    ※現在は営業していません

 

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