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特集 北海道、駅弁紀行 北海道人トップページへ
北海道の名物弁当を訪ねて/最近は、昔ながらの駅弁だけでなく、空弁(そらべん/空港で売っている弁当)や道の駅のお弁当も話題です。各地で弁当づくりにかける人々の、熱い思いをお届けします。
家庭の味から生まれた、小さな駅のお弁当 室蘭本線・母恋駅「母恋めし」
北海道室蘭市の地図 ホッキは、「北寄」と書く大きな二枚貝。本州などのかたは、驚かれることが多い。室蘭市に、ホッキを使っためずらしい駅弁がある
開駅86周年を迎えた母恋駅
開駅86周年を迎えた母恋駅。その駅名から、母の日には切符がよく売れる。待合室の一角に売店がある。
昔あった「鱧(はも)弁当」以来の室蘭の駅弁。ごはんとおかずを個別に包装しているのは、はしを使わなくていいようにという工夫。おかずの「縄文チーズ」は、古代遺跡ファンのご主人が考えた縄目模様のついたスモークチーズ。
ホッキを仕入れた当日すぐ使わず、目の前の海に1日浸けて砂を吐かせる。「水で洗ったら味が落ちるから」とご主人。
関根勝治さんと妻の久子さん
店名の「ブロートン」は、幕末に訪れた英国探検船プロビデンス号の船長の名前で、内浦湾を「噴火湾」と名づけた人物。目の前の海には白鳥大橋がかかる。

 かつて鉄の町として栄えた市の中心部へは、東室蘭駅から伸びる室蘭本線の支線を、各駅停車でトコトコ進む。終点の室蘭のひとつ手前に、趣きのある名前の駅がある。その駅は「母恋(ぼこい)」という。
 ホームに降りると懐かしい木の階段があり、切符売りの窓口におばあさんが縫い物をしながら座っている。昭和の古きよき時代の、時間がゆったりと流れているような駅。ここで駅弁「母恋めし」を見つけた。
 
 まずふたを開けるとあらわれる、大きなホッキ貝に驚く。貝殻のなかには、ホッキの炊き込みごはんのおにぎりがすっぽりおさまっていて、おかずはスモークチーズ、くん製卵、漬物がついている。酒の肴にぴったりな取り合わせだ。さっそく母恋めしを食べてみた。なんともいえないほの甘さが口の中に広がり、ホッキがシコッとした歯ざわりを残しつつ、とてもやわらかい。
 
 この駅弁、室蘭港にあるエンルムマリーナ内の喫茶店「ブロートン」で、関根勝治さんと妻の久子さんの2人が毎日20個ほど作っている。もともとは、久子さんが昭和62年「第2回むろらん郷土料理コンクール」の弁当部門で、最優秀賞をとった作品から生まれたもの。
 最初は駅弁にするつもりはなく、母恋めしという名前は、「母恋」という地名がアイヌ語で「ホッキがたくさんある所」という意味だったことからつけた。
 実は、ご主人も久子さんも本業は工芸作家。ご主人は貝工芸作家で、ホッキなどの貝殻を加工し、ブローチなどのアクセサリーや置物などを作っている。すると貝殻を使ったあとの中身ばかりがあまってしまう。母恋めしは、久子さんが中身をなんとかしようと考えたことから誕生した。
 久子さんは銀粘土でアクセサリーを作っている。現在の喫茶店は久子さんのアトリエだったが、喫茶店とよく間違われたので、それならと5年前からオープンし、母恋めしを出したところ大評判になった。
 そして2年前、もっと多くの人に食べてもらいたいと駅で売ることを思いつき、めでたく希望がかなえられた。夏の観光シーズンには1日100個以上の注文があるほどの人気ぶりだ。

 「今はすっかり弁当屋です」と笑うご主人。喫茶店のメニューもホッキづくしで、「普通の料理も作ったらって言うんだけど、だったら作る意味がないって言うの。凝り性なんですよね」と久子さんも笑う。ホッキに恋してしまったご主人の作る母恋めしは、ほんのりやさしく甘い。

 

母恋めしが買える場所
  • 喫茶店「ブロートン」
    住所:室蘭市絵鞆町4-2-14
    電話:0143-27-2777
  • 母恋駅「母恋めし」売店
    住所:室蘭市母恋町1丁目 ※販売は午後2時まで
  • 道の駅「みたら室蘭」
    住所:室蘭市祝津町4-16-15
    電話:0143-26-2030

 

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