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特集 北海道シネマパラダイス
映画の生まれた舞台を歩く 函館編 『キッチン』――少女たちへの旅
「キッチン」の舞台である函館周辺のイメージ画像

 

少女たちの孤独へ

 函館周辺を舞台にした映画の記憶をたどると、そこに少女たちがいる。
 「キッチン」もそうだが、透明感をもった少女を演じて、今なおわたしたちの心に残るのは、小栗康平監督の「伽耶子のために」で伽耶子役を演じた南果歩である。
 これは札幌出身の在日朝鮮人作家、李恢成の原作を映画化したもので、舞台は函館近郊の大沼や森町。在日二世の林相俊(イムサンジュン)と、在日一世の男性と日本人女性の夫婦の養女となった日本人少女伽耶子は、ここで出会う。二人のひそやかな恋と、別れ。切なさが全編にただよう作品だった。
 相俊と伽耶子は、駒ヶ岳にいだかれた大沼でボートに乗る。
 つかの間のデートである。輝くばかりの伽耶子の表情には、北国の透明な空気感があった。

大沼を訪れるカップルの定番は今もボート。
「オートバイ少女」のDVD(コロムビアミュージックエンタテインメント/3990円)
『オートバイ少女』の 原作は、北海道出身の鈴木扇二のわずか17ページの漫画。(筑摩書房/1785円)
道端にポツンと建つ臼尻劇場は、時間がここだけ止まったようだ。

 あがた森魚が監督した「オートバイ少女」には、少しふてくされた表情で、父を訪ねる孤独な少女が登場する。全編、函館出身のミュージシャン、あがた森魚らしいレトロな音楽に包まれ、少年とも少女ともつかない、中性的な石堂夏央が、オートバイ少女=長田みのるを演じた。
 タイトルバックに使われた、函館山を遠くに見る七飯町の田園地帯の風景や、五稜郭公園など函館市内の風景は、これまで映像としてあまり使われたことのないものを上手につないでいる。
 映画のなかで、みのるが父を訪ねる南茅部町の臼尻劇場は、実際に存在する。
 函館から車で約1時間の距離にある南茅部町は、昆布で有名なまち。最近では縄文遺跡のまちとしても全国に知られるようになった。
 臼尻劇場は、国道沿いにある。
 すでに映画館としてははるか昔に閉鎖されているが、一時は町の文化財の保存倉庫に使われ、うずたかく土器が積まれていたことがある。
 ここ南茅部町は、「海猫」でもロケに使われており、物語の上でも重要な舞台となっている。
 「キッチン」、「伽耶子のために」、「オートバイ少女」という函館周辺を舞台にした少女たちの映画には、少女の孤独感がにじむ。その切ない映像感覚は、ねっとりした本州の濃密な空気感からは生まれなかったかもしれない。北海道の乾いた、希薄な、そして透明な空気が、少女の孤独感を増幅するのではないだろうか。

 

※伽耶子の「耶」は正確には「イ(にんべん)に耶」となります。

 

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