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特集 北海道シネマパラダイス
プロデューサー 久保 俊哉 氏
北海道発・映画人インタビュー vol.2
「北海道生まれのコンテンツを世界に」 プロデューサー 久保 俊哉 氏
2004年2月に行われたICCフェスティバルにて(写真提供:久保俊哉氏)
今年5回目となった「ショートショートフィルムフェスティバルin北海道」や、イギリス発の映像フェスティバル「ワンドットゼロ_ニッポン」のプロデューサーであり、ICC(※)のチーフコーディネーターであり、ほかにもさまざまな顔を持つ久保氏。大忙しの合間をぬってこんな話をしてくれた。

 デジタルビデオやコンピュータが普及したせいで、映画を撮ったり、映像や音楽を作ったり、いろいろなコンテンツを作ることが非常に簡単になりました。インターネットを使ってそれを世界に流通させることももちろんです。
 そんななかで、北海道の優秀なクリエイターが世界に作品を発信し、きちんと継続することをサポートして、それを一つの産業として成立させていくことが今の自分の役割かなと思っています。

 ぼくの持論のひとつに、「川上戦略」というのがあります。
 簡単にいうと、他のどこにもない深くて面白い情報は、すべて「川上」――つまり「地方」にある。だからぼくらが北海道で作るコンテンツは、膨大で雑多な情報が流れ込んでいる「中央」、つまり東京で作られるコンテンツよりずっと価値がある。それを戦略的に展開しようという理論です。
 少しずつですが、「間違っていないぞ」という手ごたえを感じています。

ショートショートフィルムフェスティバルのポスター(写真提供:株式会社ミム)
2000年ショートショートフィルムフェスティバルのポスター
2001年ショートショートフィルムフェスティバルのポスター
2002年ショートショートフィルムフェスティバルのポスター
2003年ショートショートフィルムフェスティバルのポスター
2004年ショートショートフィルムフェスティバルのポスター

 

 たとえば、ぼくらは2000年から札幌で「ショートショートフィルムフェスティバル」という映画祭を開催していますが、これは前年に東京で始まり、世界の優れたショートフィルムを上映するもので、函館、名古屋、大阪、福岡などでも開かれています。ショートフィルムとは文字通り短編映画のことですが、1分に満たないものから30分程度のものまでさまざまで、長編の劇場映画とはまた別の魅力があります。最大の魅力は、作り手の「ピュアな映像」が観られることでしょうか。

 北海道では、毎年「北海道プログラム」というオリジナルプログラムを作っています。
 これは地元で作られたショートフィルムを一般募集して、面白い作品をみんなでセレクトして、5本くらいずつ上映するというもの。監督や俳優がトークに出ることも多く、観客のみなさんも楽しみにしてくれています。そもそも映画は、作り手の気持ちを観客に伝えるコミュニケーションの道具ですから、身近な人が身近な場所で作った映画は、その伝わり方がとても親密なんですよね。

 そんななかで、2000年には観客だった人が自分でショートフィルムを撮るようになって、その作品が次年度の公式プログラムに選ばれたんです。さらに2003年にはカリフォルニアの映画祭「California Independent Film Festival」に招かれて、「ベスト・ミニ・ショートグランプリ」という賞まで受賞しちゃった。
 北海道で生まれた作品が、東京をすっとばして世界に飛んでいったわけです。そのほかにも北海道からいい作品がたくさん出てきて、「北海道はレベルが高い」って評判になっているんですよ。これは本当にうれしいことです。

 ぼくらが今やっていることは、いわば「土づくり」だと思います。コンテンツが生まれる土壌、コンテンツの価値が認められる土壌、それらをせっせと耕して、数年後か数十年後に立派な樹が育つことをめざして、続けていこうと思っています。

2004年夏の「ショートショートフィルムフェスティバルin 北海道」では、4日間の開催でのべ5500人の観客が訪れ、東京の動員数を越えた。最初は百人ほどの観客からはじまった手づくりの映画祭が、静かに広がり、北海道に新しい映像文化を生み出している。

久保 俊哉(くぼ・としや)

久保 俊哉(くぼ・としや)プロフィール

1957年小樽市生まれ。3歳から7歳まで札幌で過ごし、その後東京へ。日本大学芸術学部・放送学科に入学。在学中にアルバイトで映画評論家・淀川長治氏のアシスタントとなり、多くの映画に出会う。卒業後は東京で全く畑違いの農業関連会社勤めるが、転勤で札幌に2年間暮らしたことを機に北海道に戻ることを決意。札幌の広告代理店や東京のゲーム会社を経て、再び札幌のゲーム・CG会社に勤めた後、2004年に札幌で独立、(有)マーヴェリック・クリエイティブ・ワークスを設立。現在はデジタルコンテンツを中心にプロデューサー、コーディネーターとして活躍する。特に若手クリエイターの育成に力を注ぎ、「100年経っても色あせないコンテンツ」をめざして国内外から講師を招いたワークショップなどを展開中。

関連情報

※ ICC:インタークロス・クリエィティブ・センターの略。正式名称は札幌市デジタル創造プラザ。映像や音楽、デザインなど若手クリエイターのインキュベーション施設として2001年6月に開設。
http://www.icc-jp.com/

 

 

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