
「初雫」や「吟風」が登場する以前にも、道内の蔵元のいくつかは、何とか道産米で酒を造ろうと努力してきました。なかでも熱心だったのが、空知管内栗山町の「小林酒造」です。
先代の社長は「内地米(山田錦)に負けない道産米の酒を」と念願し、30年以上も前から挑戦していました。
「北海道の酒屋が、北海道米を使わないで北海道がよくなるはずはない」という気概からです。昭和42年から「キタヒカリ」などの地元米を使って酒造りを試行し、昭和61年にはじめて販売されました。
平成9年には、北海道農業試験場が開発した米「北海278号」を使っての酒造りに初挑戦し、ここでの成功がきっかけとなって、北海278号が道産第1号の酒米の品種、「初雫」と名付けられました。

新米での仕込みがはじまる直前、小林酒造の杜氏・脇田征也さんを訪ねました。
脇田さんは苫小牧市出身。北海道の蔵元のほとんどは南部杜氏が仕切っているなか、めずらしい道産子杜氏です。43歳で杜氏になり、今年で17年目です。
「初雫を試してほしいという話は、北海道農業試験場から来ました。はじめてとれた52俵の引き受け手がなく、昔から道産米を使っての酒造りに熱心だった私たちに声がかかったのです。使ってみると今までにない軽やかな酒ができて、これはおもしろいと思いました。それをきっかけに評価が進み、道の奨励品種となったのです」
その後、さらに「吟風」が開発され、関係者の熱意により「吟風」も認定されることになり、北海道の酒造りはいよいよ活気づきます。
「こちらを使うと濃醇な味わいに仕上がります。それぞれ個性があるので、今は両方使っています」と脇田さん。
小林酒造は炭坑と運命を共にしてきた蔵元です。昭和30年代の炭坑の最盛期には、1,200キロリットルを超える日本酒を生産していました。現在も地元とのつながりを大切にし、特色のある日本酒を誠実に造り続けています。

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