
最近まで、北海道の酒に使われる米は、本州産がほとんどでした。
しかし、「地元の米を使ってこそ本物の地酒」との思いを強くしていた道内の蔵元は、以前から道産酒米の登場を願っていました。
その願いに応えて登場したのが、道産初の酒米「初雫」です。平成10年に農林水産省北海道農業試験場(現北海道農業研究センター)が開発し、大粒で寒さに強く、淡麗辛口の酒造りに向きます。さらに平成12年には本格的な酒米「吟風」が誕生しました。こちらは北海道立中央農業試験場が開発し、中心部に麹菌が活発に働き、アルコールができやすい心白と呼ばれる部分が大きいのが特徴。現在のおもな産地は空知管内新十津川町や旭川市などです。

稲刈りも終盤を迎えた10月、吟風の産地、旭川市の永山地区を訪ねました。
この地区の酒米栽培は平成11年にはじまりました。「地元の米で地元の酒蔵で地酒を作りたい」と若い農家が手を挙げ、最初は50アールから作りはじめ、翌年からは一気に15ヘクタールで栽培を開始。栽培面積は年々増え、平成14年には50ヘクタールで4,000俵を収穫しました。現在ここでとれる「吟風」のうち、約700俵は地元旭川の「高砂酒造」と「合同酒精・旭川工場」で使われ、残りは関西の酒どころ、灘にまで送られています。
稲刈り真っ最中の松田政晴さん(JAあさひかわ永山支所稲作協議会会長)にお話を聞きました。松田さんは3代続く米の専業農家です。
「酒米は背丈の高いものが多いのですが、吟風は普通の米とほぼ同じで作りやすい品種です。稲刈りも普通のコンバインでできます。ただし耐冷性が弱く、ここ2年は連続で冷夏のため減収が続いています。でも、ここの米はやっぱり土地がいいから上等です。ご先祖様に感謝しないとね」
「吟風」の生産者価格は、道産品種「きらら397」とほぼ同等。農家にとっての栽培のメリットは、経済的なものよりも、複数の品種を作ることで収穫時期がずれることにあるそうです。
もちろん、メリットはそれだけではありません。
「自分たちが作ったお米で造った酒というのは、何とも言えずいいものです。酒蔵の人から『こんなにいいお酒ができました』と言われるのが何より嬉しいと松田さん。生産農家が仕込みの現場を見学したり、蔵元が水田を見に来たり、農家と蔵元の交流も深まっています。

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