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中華まんじゅう
北海道のお葬式と中華まんじゅう

 「葬式まんじゅう」という言葉があるように、仏事には和菓子が欠かせない。
 北海道で葬式まんじゅうといえば、もちろん中華まんじゅうである。
 葬儀の慣習には地域によって違いがあり、引き出物の和菓子も各地でいろいろなものが使われる。北海道以外をみると、関東で「春日まんじゅう」や「青白まんじゅう」、関西では「黄白まんじゅう」「おぼろまんじゅう」などが多いようだ。逆に、これほど広い北海道が、中華まんじゅう一色というのはめずらしいことかもしれない。
「春日まんじゅう」
ひのきの葉など、表面に焼き印をつけた「春日まんじゅう」
「青白まんじゅう」
関東地方に多い「青白(あおしろ)まんじゅう」
 


 北海道の葬儀に、いつから中華まんじゅうが使われるか定かではないが、1644年(正保元年)函館に建てられた「称名寺」の住職であり、郷土史研究家でもある須藤隆仙さんはこう語る。
 「戦前は『通夜ぶるまい』といって、お通夜に来た人みんなに中華まんじゅうを配っていました。大正時代にはもうあったと思いますよ」
 函館など道南ではかなり古くから使われていたようだ。もともと、中華まんじゅうは家庭で作るものではなく、専門の職人が作るお菓子である。そのため、葬儀で使う習慣も、農業漁業といった第一次産業ではなく、商工業が中心の都市からはじまった、都会的な習慣だったともいえるだろう。実際に、札幌の老舗菓子店「千秋庵製菓」に聞いてみると、創業の大正10年からすでに中華まんじゅうを作っていたという。

 では、なぜ北海道全域にそれが定着したのか。
 北海道の葬儀には、いくつかの特徴がある。まず、他と比べて通夜やに葬式に参列する人が非常に多いこと。本州などでは葬儀を自宅で行うことが多いが、北海道では公民館など大きな会場が多い。また、香典も、どちらかといえば額は少なめだが、「広く浅く負担し合う」という合理的なシステムができている。これらは明治のきびしい開拓時代から、互いに力を合わせなければ生きていけなかった「助け合いの精神」が息づいているためだろう。

 人がたくさん集まるので、当然、引き出物もたくさん必要になる。そのとき、中華まんじゅうは比較的作りやすく、急に人数が増えても対応できたため、重宝がられたのではないだろうか。
 『菓子の事典』の著者で、日本菓子専門学校教師の鎌田克幸さんによると「通常のまんじゅうは、あんを作ってから冷まし、成形してから蒸すので時間も手間もかかります。一方、中華まんじゅうはあんが熱くても大丈夫ですし、蒸す必要もありません」とのこと。こんなところにも、北海道と中華まんじゅうの深いつながりがあるようだ。

「おぼろまんじゅう」
関西地方に多い「おぼろまんじゅう」

写真提供:とらや



心を込めた中華まんじゅう--お菓子のまさおか(芽室町)  

 日本有数の小豆産地・十勝の芽室(めむろ)町で、大正6年に創業し、初代からずっと中華まんじゅうを作り続けている「お菓子のまさおか」を訪ねた。この店は、8年ほど前から十勝の菓子店数軒と協力し、札幌の百貨店で「十勝の菓子フェア」を開き、中華まんじゅうの実演販売を行っている。

 「商品を売るだけなく、作るところを見ていただきたかったんです。でも最初は、お葬式のお菓子なので縁起が良くないかなぁと心配もしました」と宣征さん。
 しかし、予想に反して評判は上々。ブースの前は長蛇の列ができ、1日に1200〜1500本も売れた。フェアが終わると店への注文がにわかに増え、札幌から芽室まではるばる買いに来る人も現われた。

中華まんじゅう製造イメージ 工場におじゃますると、ちょうど中華まんじゅうを焼く真っ最中だった。
 銅製の四角い平鍋に、楕円の形が9つ並んでいる。何十年も使っているうちに、焼き跡がついてしまったのだ。よく熱したこの銅の上に、サジで1杯ずつ生地を流す。すかさず、サジの背で生地をクルクルッとなぜて厚さを均一にし、火加減を調節して待つこと6分。この間もあんを細長く丸めたり、生地の様子をみたり、作業は途切れることがない。

 やがて香ばしい匂いが漂いはじめ、生地から湯気が上がってくる。表面に小さな気泡ができたころ、生地の中央にあんを配置。生地のはじをそっと持ち上げ、あんを包むように二つ折りにする。慣れているとはいえ、素手の指先が熱そうだ。
 さらに熱いうちに、こし器を改良した手製の道具にのせ、全体にカーブをつけ、経木を敷いた木箱に並べ、冷まして完成。一連の動きが流れるようにムダなく美しい。そして、できあがった中華まんじゅうはとびきり美味しい。



■取材協力:虎屋文庫


【参考文献】
・『近世菓子製法書集成1・2』鈴木晋一・松本仲子編訳注2003年(平凡社)
・『カステラ文化誌全書』1995年(平凡社)
・『北海道の葬送・墓制』矢島睿1979年(明玄書房)
・『北海道を探る 23・25・27』1992〜1994年(北海道みんぞく文化研究会)他)
三代目ご主人の正岡宣征さん。
三代目ご主人の正岡宣征さん。「大事なのは皮とあんのバランス、そして材料の質です。うちは地元十勝産の『エリモショウズ』という小豆の一等品を使っています」

二代目ご主人の明さん。
今年86歳になる明さんは、2代目のご主人で現在会長。「お菓子は贈るかたの『まごころ』を伝える媒体です。そう思うと、どんな小さな仕事もゆるがせにはできません」
■お菓子のまさおか
住所: 芽室町東1条2丁目2(JR芽室駅からすぐ)
電話: 0155-62-2118
営業: 午前8時〜午後8時(月〜土)、午前9時〜午後6時(日)
定休: 無休
お菓子のまさおか




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