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中華まんじゅう 中華まんじゅうのフシギを訪ねて
こんがり焼いた皮に小豆あんをはさんだ中華まんじゅう。
 「中華まんじゅう」と聞いて、何を想像するだろう。
 ホカホカの白い「肉まん」や「あんまん」?
 それとも、細長い「どら焼き」のような、こしあんのギッシリ入った中華まんじゅう?
 最近は見かける機会が減ったものの、北海道に住む人なら、きっと後者を思い描くことだろう。年齢が30代以上の人なら、「お葬式でもらったなぁ。なつかしいなぁ」としみじみ思い出すことだろう。とにかく、北海道人にとっては、とても親密なお菓子である。

中華まんじゅう
北海道でも、作る店によって少しずつちがう中華まんじゅう

日本中に広がる中華まんじゅうの仲間  

 東京などで中華まんじゅうの話をしても、たいていは肉まん・あんまんのほうと勘違いされ、説明しても「何それ? 知らない」と言われてしまう。そのため「中華まんじゅうは北海道のもの」と思い込んでいたが、これは大きなまちがいだった。
 調べてみると、長野県の須坂市には、かつて須坂藩主の奥女中だった千代香さんが伝えたといわれる「中華饅頭」があるし、秋田県には白あんと黒あんの2種類の「中花」がある。東北などでは「中皮(ちゅうかわ)」とよばれるお菓子がある。名前や形が少しずつちがうけれど、北海道だけのものではないのだ。

 そもそも「中華まんじゅう」の「ちゅうか」は何かというと、これはお菓子の生地に関係している。
 小麦粉・砂糖・卵を基本の材料とする生地を、和菓子の世界では「中花種(ちゅうかだね)」とよび、これを焼いて作るものを総じて「中花(ちゅうか)」という。「中花」は「中華」と書くこともあり、北海道ではなぜか「華」の字が定着したようだ。
 この中花種で作るお菓子には、ほかにもいろいろな種類がある。だれにでも好まれ、手に入りやすい材料を使う中花種は、日本各地に広がるうちに、さまざまに変化をとげたのだろう。



中華のいろいろ

 
「調布」 「あゆ」 「残月」  
外側の皮を布に見立て、やわらかい求肥を包んだ「調布」。
ヒレなどの模様をつけ、魚の鮎に見立てた「あゆ」。こちらも求肥を包んだ夏の菓子。
しょうがの絞り汁で風味をつけた、とらやの「残月」。中華まんじゅうより、かなり小ぶり。
 



  江戸路代の庶民も食べた中華まんじゅう
   
 それでは中華まんじゅうの歴史をたどってみよう。
 おそらく、書物に残る最古の中華まんじゅうは、江戸時代の滑稽本、式亭三馬の『浮世床』(1813年)に登場する。行商の菓子売りの口上に、ようかん、最中、かすてらなどと並んで、「ちうか」の名が出てくるのだ。さし絵がないので形はわからないが、これが「中華まんじゅう」だろうといわれている。すでに名前を省略するほど一般的だったのだろうか。

『鼎左秘録(ていさひろく)』 『鼎左秘録(ていさひろく)』  そのあと、『浮世床』の約40年後に書かれた菓子製法書『鼎左秘録(ていさひろく)』には、「中華饅頭」の名前で、材料と作り方がきちんと紹介されている。

○中華饅頭(ちうくわまんぢう)
 鶏卵大 一ツ
 雪白砂糖 拾匁
 うどんの粉 拾匁
右三品カステイラの方の通り、能々(よくよく)すり交ぜたる処へ水を入れ、ゆるくどろりとなるように煉(ねり)まぜ、赤がねの皿の上へ、ながし焼にして餡をつゝむなり。

中華まんじゅう  
 卵、砂糖、うどん粉(小麦粉のこと)をよく混ぜ、銅でできた平鍋で焼いてあんを包む――まさしく現在の中華まんじゅうと同じ。さらに注目したいのは、「カステラの方の通り」という記述だ。遠くヨーロッパからやって来たカステラと、われらが中華まんじゅうは、材料も作り方もよく似ている。

 時代をもう少しさかのぼり、室町時代の末に目を向けてみたい。
 1543年、ポルトガル人が種子島に鉄砲を伝え、1549年にザビエルが鹿児島にやって来て、日本はスペイン・ポルトガルと貿易をはじめる。「南蛮貿易」のスタートである。南蛮人は料理や衣服、言葉など、さまざまなヨーロッパ文化を日本に伝えた。食べものでは、てんぷら、パン、ぶどう酒、そしてお菓子のカステラ、こんぺい糖などがぞくぞくと入ってくる。
 それまで、日本人は卵や砂糖を食べる習慣がなかったが、南蛮貿易がはじまってから次第に食べるようになる。また、伝来当初は高級菓子だったカステラも、江戸時代には庶民に愛されるお菓子となった。このころ、カステラと同じ材料からなる中華まんじゅうも作られ、江戸から各地に広がっていったのではないだろうか――と想像は尽きない。

 これまで「素朴なふるさとのお菓子」と思っていた中華まんじゅうだけれど、その歴史は江戸にまでさかのぼり、さらにルーツは南蛮文化と関係があるかもしれない…。そう思うと、いつもの中華まんじゅうが、どこかハイカラに誇らしげに見えてくる。





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