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      べこもちの系譜
「べこもち」と「かたこもち」 「べこもち」と「くじらもち」 まだまだ深まる名前のナゾ べこもちのルーツ?東北をたずねて
「べこもち」と「かたこもち」
 下北から北海道にもどり、道南の江差町の菓子店でべこもちを注文すると、店のご主人が言った。
 「『べこもち』って名前で売っているけど、これは『かたこもち』とも言うんだよ」
 道南の江差町、上ノ国町、松前町、八雲町などでは、木型に入れて作る北海道式のべこもちを、「かたこもち」または「かたもち」とよぶ地域があるという。
 北海道のべこもちは、手でひとつずつ成形するタイプと、木型に入れて成形するタイプの大きく2種類に分かれる。ここにまた、くじらもちとは別の系譜があるようだ。
 木型には、長方形の材に1個だけのものと、羽子板のように持ち手が着いていて、1枚に2個、3個とくり抜いてあるものがある。また、形も木の葉だけでなく、たけのこ、扇、菊、ウサギ、カメなどさまざまだ。もともと家庭で作るお菓子なので、道南などでは明治から家に伝わっている型や、古い菓子店では代々使い継がれているものが多い。

各家庭で大事に使われている木型。戸井町のもの。 各家庭で大事に使われている木型。右が浜益村、左が戸井町のもの。

写真提供
 右:浜益村産業課の羽立欣一さん
 左:「北海道みんぞく文化研究会」の宮良高弘先生(札幌大学名誉教授)

各家庭で大事に使われている木型。浜益村のもの。


 新潟県佐渡地方にも同じように木型で作るお菓子で、「かただんご」とよばれるものがある。新潟から北海道に移住した人々が、故郷の型を持って来たのかもしれない。また、下北の川内町にも木型で抜くお菓子があり、季節の変わりめに作られていた。それと同じ型を使って、べこもちを作る人もいるという。また同じく下北の佐井村や大間町でも、数十年前はカマボコ型の下北式ではなく、木型でべこもちを作っていた、という人もいる。
 これらを見ていくと、「かたこもち」と「べこもち」の間にも、「くじらもち」と「べこもち」と同じように、地域によって名前が少しずつ変わったり、混同が起こったりしたのではと考えられる。

八雲町の「かたもち」
八雲町の「かたもち」(くら屋菓子舗)。緑やピンクなどの色をつけ花型で抜いたもので、仏事などに供えられる。節句に食べる白黒のべこもちとは区別されている。
 はるか遠く海を渡って伝えられた「くじらもち」と「かたこもち」。その両方の流れが、北海道で出合い、溶け合って、北海道式べこもちとなったのではないだろうか。
 べこもち、くじらもち、かたこもち。どれもふるさとで愛され続けるお菓子である。それらが長い年月を経て互いに重なり合い、深く影響し合っているのだろう。
 べこもちの歩んできた歴史が、いま少し垣間見えたようだ。



参考文献
・『日本の食生活全集』1〜6 聞き書「北海道の食事」「青森の食事」「岩手の食事」「宮城の食事」「秋田の食事」「山形の食事」(農山漁村文化協会)
・『聞き書ふるさとの家庭料理』第6巻「だんご ちまき」(農山漁村文化協会)
・『松前藩と松前 10号』1977年(松前町史編集室)
・『北の生活文庫 第6巻・北海道の年中行事』小田嶋政子1996年(北海道)
・『新庄が好き!人が好き! くじら餅物語』高橋雄一2004年(新庄の菓匠たかはし)
・『原典現代語訳 日本料理秘伝集成/第十六巻』1985年(同朋舎出版)他



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