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べこもち 端午の節句に、モチモチべこもち
北海道で一般的な「べこもち」は、木の葉の形で白黒のツートンカラー
 4月も終りに近づくと、やっと「外へでかけよう」という気持ちになってくる。日差しがあたたかさを増し、風もさわやかで、もう外にいても寒くない。空には鯉のぼりがおよぎ、お菓子屋の店先には「べこもち」の張り紙がはられる。

 北海道では、5月5日の子どもの日に「べこもち」を食べる。「かしわもち」もあるが、道南や日本海沿岸などでは、圧倒的にべこもちが多い。子どもの日でなくても、和菓子屋には大抵いつも並んでいるし、値段も安いので(1個100円くらい)おやつによく食べられる。あまりに身近すぎて、「べこもちがあるのは、北海道と東北だけ」ということを、気づかずにいる人が多いのではないだろうか。

端午の節句に、モチモチべこもち「鯉のぼりイメージ」

 そもそも、なぜ「べこもち」というのだろう。
 じつはこれには、いくつかの説がある。
 まずは「ホルスタイン説」。
 現在、北海道で主流のべこもちは、白黒二色のものが多い。そのため、白黒模様の乳牛、ホルスタインに似ているからこう名づけられた、という説である。牛のことを、東北から北海道の方言で「べこ」というのだ。
 しかし、ホルスタインが日本にやって来たのは明治20年代、普及したのはその後のこと。べこもちはそれよりずっと前からあるので、この説は成立しない。

 次に、「べっ甲説」。
 お菓子屋さんの店先で、しばしば「べっ甲もち」という看板をみかける。べっ甲のような色合いからそう呼ばれるのだが、道南などに古くからあるべこもちは、黒一色のものが多い。したがって、べっ甲もちは、現代のお菓子屋さんがイメージ商戦を展開するなかで生まれた、比較的新しい名前といえるだろう。

 そして最後に、「和牛説」。
 こちらは、 黒や茶色の昔ながらの日本の牛が、足を折ってふせている姿に似ているから、という説。
 道南の長万部(おしゃまんべ)町出身の作家・和田芳惠(明治39年〜昭和52年)は、「鯉のぼりと乱れ箱」という随筆のなかで、端午の節句の思い出をこう書いている。

 私たちは橋の近くにある小さな沼に自生した菖蒲を腰までつかって採って来て家の軒ばにさし、母がつくってくれた「べご餅」をたべた。(「べご」とは牛という東北地方の方言で、しん粉を黒砂糖水で味つけしたものを蒸籠に入れて蒸した食べ物である。牛の臥(ふ)した姿に似ていた。)――『和田芳惠全集 第五巻 随筆』より

 また、民俗学者の柳田国男は、全国の食べ物の名前を調査した『分類食物習俗語彙』のなかで、岩手県のお菓子について、「牛の臥す形だからベコモチとよぶ」と書いている。

 しかし、葉っぱ形のべこもちは、どう考えても牛には見えない。かつて作られていたべこもちは、今とは全くちがう形をしていたのだろうか。あるいは、もっと歴史の古い東北地方では………。
 このあとは、次回更新の「べこもちの系譜」をお楽しみに。



べこもちの図 松前の菓子職人・刀禰武夫さんが描いた「べこもち」の図。
「白砂糖と黒砂糖と二種の種を作りダンダラに混じて小判型に作り蒸したもので、白と褐色の縞模様にしたもの」とある。――『松前福山の行事と餅類』(昭和21年)より




老舗のべこもちを訪ねて --菊原餅菓商(小樽市)

菊原餅菓商
菊原餅菓商
菊原餅菓商
菊原餅菓商のべこもち
 看板に、店名より大きく「朝生の店」とある。
 朝生(あさなま)とは、作ったその日のうちに食べる、日持ちのしない大福や桜餅などの餅菓子のこと。業界の専門用語だが、地元の人から「朝生の店」で親しまれているのが、創業90年以上の「菊原餅菓商」である。
 ご主人は3代目の菊原清志さん(77歳)。さっそく、ご自慢のべこもちつくりを見せていただいた。
 まず、生地の上しん粉を大きなせいろに入れて蒸す。砂糖を混ぜた白い生地と、黒砂糖を混ぜた黒い生地をつくり、蒸したあと別々に大きな臼と杵でつく。つきあがったら棒状により合わせ、一口大に切り、葉っぱの形の木型に詰めていく。
 コンコンコンと木型の角を台に打ちつけると、白黒が複雑に混じりあった生地がころりと転がり出る。なんともリズミカルで楽しげだ。再びきれいにせいろに並べ、10分ほど蒸して完成。黒糖の部分がきらめいて、つやつやと美しい。もちろん味も格別。このべこもち、普段でも1日60個は出るという。小樽のひとはべこもちが大好きなのだ。

菊原もち店・3代目の菊原清志さん
「むかし東北・石巻から小樽に来ていた行商人が、べこもちを『べっ甲もち』と言っていました。海岸から見えるくじらの群れの背中に、朝日があたって「べっ甲色」に光って見えたので、そう呼んでいたそうです。うちはそれにちなんで「石巻べこもち」という名前をつけています」
菊原もち店・3代目の菊原清志さん
 
■菊原餅菓商
住所:小樽市奥沢1-17-4
電話:0134-22-6860
営業:午前8時〜午後6時
定休:日曜



手づくりべこもちに挑戦しよう! べこもち

最近は店で買うことが多いけれど、かつてはどこの家庭でも作っていた。味も形も、家によってさまざま。べこもちの型は、母親がお嫁に来るときに持ってきた、という家も多い。(指導:北海道浅井学園大学の山塙圭子先生/制作:編集部)
  べこもちの材料と作り方はこちら    
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