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ドラゴンとアンモナイト --化石が語る太古の北海道 イメージ 北海道人トップページへ
2. デスモスチルスのことなら「足寄動物化石博物館」へ デスモスチルスイメージ
 1976年、デスモスチルスの仲間のうち、世界最古の化石が足寄(あしょろ)町で発掘された。見つけたのは北海道大学の大学院生で、地質調査の途中にぐうぜん発見したという。
 発掘後しばらくは北大に保管されていたが、本格的な研究がはじまるとともに、町に専門的な博物館ができることが決まり、1995年、めでたくふるさとに帰ってきた。
 その後の研究によって、デスモスチルスのなかでも新種であることがわかり、足寄にちなんで「アショロア ラティコスタ」と命名。現在は、1998年にオープンした「足寄動物化石博物館」に、産状復元(地面に埋まっていたときの様子)のレリーフや全身骨格などが堂々と飾られている。

 町で最初の化石が発見されてから、にわかに立ち上がった兄弟がいた。その後の化石のほとんどを発見した、矢吹勝美・勝家兄弟である。
 矢吹さんたちは、化石が見つかったモラワン川の近くで農業を営んでいた。それまで化石には全く興味がなかったが、大勢の研究者が熱心に作業する様子を見ているうち、「自分たちも探してみようか」と思うようになったという。
 そして4年後の1980年、同じくモラワン地区でみごとな大物化石を発見。アショロアとはまた別の、2500万年前に生きていたデスモスチルスの仲間、「ベヘモトプス」を見つけたのだ。
 この化石が見つかったことで、足寄町では本格的に化石探求が始まるともに、「デスモスチルスの町」として名前を知られるようになった。

 

アショロアの産状復元
アショロアの産状復元
全身骨格標本
全身骨格標本
復元図
復元図
2800万年前に生きていた「束柱目 デスモスチルス科 アショロア ラティコスタ」。1976年に足寄町茂螺湾(モラワン)で発見された。デスモスチルスの祖先にあたり、骨格が復元されたものでは世界最古。
足寄町モラワンで発見された「束柱目パレオパラドキシア科 ベヘモトプス カツイエイ」の全身骨格標本 1980年、同じく足寄町モラワンで発見された「束柱目 パレオパラドキシア科 ベヘモトプス カツイエイ」の全身骨格標本。発見者のひとり、矢吹勝家さんの名前にちなんで名づけられた。体長約3メートル、体高約1メートル。

 

さまざまな研究者が描いたデスモスチルスの姿。
さまざまな研究者が描いたデスモスチルスの姿。
さまざまな研究者が描いたデスモスチルスの姿。
さまざまな研究者が描いたデスモスチルスの姿。
 このほか、博物館にはデスモスチルスの研究の変遷、世界中の化石標本や資料がズラリと並んでいる。
 デスモスチルスはナゾの多い生物だけに、生きていた時の骨格復元がとても困難だった。1936年にサハリン産の化石が初めて復元されてから、同じ化石が3人の研究者によって、それぞれ違った体形に組み立てられている。最初は、カバをモデルにしたといわれ、次にサイやバクに似て、最後はデスモスチルス独自の骨格にたどりついている。
 ここではその三体の復元が並んで展示してあり、時代による変化を見るのも面白い。

 展示室のとなりには、化石のクリーニング作業などを行う「化石工房」がある。ここで偶然、ベヘモトプスの発見者である矢吹勝家さんに会うことができた。勝家さんは数年前に農業を引退し、今は化石一筋の毎日を送っている。定期的にモラワン川付近の調査も続けていて、この日も発掘したクジラ類の化石をクリーニング中だった。
 「べヘモトプスを見つけたときは、そんな貴重なものとは思いませんでした。その後30年近く化石を発掘していますが、今までに、ひとつとして同じ化石はありません。それが楽しいんです」
 電動式のエア・ツールを巧みにあやつり、慎重に慎重に作業を続ける勝家さん。その小さな針の先になぞられて、さまざまな命の痕跡が現れる。
 太古の生き物たちも、静かにそれを待っているように思われた。

歴代のデスモスチルス復元標本。いちばん右が犬塚標本で、現在はここに落ち着いている。
歴代のデスモスチルス復元標本。いちばん右が犬塚標本で、現在はここに落ち着いている。


ベヘモトプスの第一発見者・矢吹勝家さん
ベヘモトプスの第一発見者・矢吹勝家さん。博物館にある地元産化石のほとんどが、お兄さんの勝美さんと二人で発見したもの。
工房では、化石のレプリカ作りができる。石こうを練って型に流し込み、小一時間待つと完成。1つ200円でお土産にも最適。
化石のレプリカ作り

 

文・写真/編集部
取材協力/足寄動物化石博物館・館長 澤村寛さん


■足寄町のホームページ
http://www.town.ashoro.hokkaido.jp/

 
■足寄動物化石博物館
住所:足寄郡足寄町郊南1丁目
電話:01562-5-9100
開館:午前9時30分〜午後4時30分
休館:毎週火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/30〜1/6)
http://www.museum.ashoro.hokkaido.jp/

[2004年企画展のお知らせ]
●世界最古のアカボウクジラ 特別公開
4月29日(木)〜5月5日(水)
※同館は現生のクジラを含む骨格標本などを展示し、貴重な化石と標本でクジラの進化を解明しています。2003年12月には、町内で発掘された化石が世界最古のアカボウクジラと判明。今回の企画展で一般初公開します。



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