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ドラゴンとアンモナイト --化石が語る太古の北海道 北海道人トップページへ
1. 海の牛と書いて、カイギュウ
 アンモナイトや恐竜の天下だった中生代が終わるのを、じっと待っていたかのように、地球に「哺乳類の時代」がやって来る。
 ネズミの祖先、ゾウの祖先、ウマの祖先、そして、もちろん私たちの祖先を含めて、現在なじみのある動物の仲間たちが続々と出現する時代である。
 クジラやセイウチなどと同じく、海にすむ哺乳類「カイギュウ」類も、このころ現われた哺乳類のひとつ。今から5000万年ほど前(地質年代では新生代の第三紀。さらに細かくいうと、そのなかの始新世)に、その姿を現わしたと考えられている。

マナティ
大西洋の暖かな海やその周辺の河にすむマナティー(模型)。足ヒレの丸い形が特徴。体長2〜3メートル。
 カイギュウは、漢字で書くと「海牛」。
 字が示す通り、海の中で海草、海藻を食べていたおとなしい草食動物である。現在生きている仲間は、いずれも南の暖かく浅い水域にすむマナティー3種と、ジュゴン1種のみ。
 マナティーは昔から人魚伝説のモデルとして有名だが、全体的にコロンとした身体つきで、なかなか愛嬌のある姿をしている。いかにも草食動物っぽい、モサモサっとした口元も可愛らしい。でも、美しい人魚のイメージとはあまりにも遠いような…。
 では、なぜかれらが人魚に見られたかというと、これにはいくつか説があるらしい。一つには、両腕のつけ根にあるオッパイから、赤ちゃんにお乳をあげる姿が人の親子に似ていたからというもの。そのほか、後ろ姿がつややかな黒髪の女性のシルエットに似ていたから、という説もある。しかし本当のところはハッキリ分からない。それもまた楽しいけれど。

ジュゴン
ジュゴン
太平洋やインド洋の暖かな海にすむジュゴン(模型)。現在は沖縄が棲息の北限にあたる。体長3〜4メートル。
 現在も詳しく分かっていないが、カイギュウの先祖とされる化石は5000万年前の地層から発見されていて、このころはまだ足が4本あり、陸に上がって歩いていたようだ。
 その後少しずつ進化が進み、海に適応した身体となって、前足はヒレ状になり、後ろ足はすっかり退化したと考えられている。世界中でいろいろな時代のカイギュウ化石が見つかり、その進化が明らかにされてきた。

 日本でも、約30カ所でカイギュウ化石が発見されており、そのうちの約2/3が北海道産である。アンモナイトに引き続き、またしても「カイギュウといえば北海道」である。
 北海道は、暖かい海にすむグループのカイギュウと、冷たい海にすむグループのカイギュウの両方の生息地が、時代によって交差する地域だったため、多くの化石が残されているという。
 見つかっている場所は、1967年の初山別村が最も古く(しかしこの化石がカイギュウと確認されたのは1990年になってから)、1980年の滝川市、そのほか、沼田町、本別町、阿寒町、釧路市、豊頃町、幕別町、今金町、黒松内町、蘭越町、北広島市、札幌市など。

  北海道のおもなカイギュウ化石産出地とタキカワカイギュウ

  ※写真撮影はすべて滝川市美術自然史館



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