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3. シシャモをもとめて、鵡川町へ

 苫小牧から日高本線にのって南へ向かった。日高本線は苫小牧から襟裳(えりも)岬に近い様似(さまに)まで、太平洋に面した町々をつないでいる。ここからは一両編成のワンマンカーになった。空は気持ちのよい秋晴れで、車窓からはどこまでも広い勇払原野が見える。川をいくつか越え、30分ほどで鵡川(むかわ)町についた。

 鵡川町は、一級河川である「鵡川」がそのまま町名になっている。秋になると遡上するサケやシシャモなど、豊かな恵みを受けて人々は古くから川とともに暮らしてきた。また、川の流れがつくった平野部、つまり鵡川町は、道内でも有数の稲作地帯になっている。
 10月下旬から11月にかけて、鵡川町はシシャモ一色にそまる。
シシャモ
地域の人々に「母なる川」とよばれてきた「鵡川」

店先にズラリと並ぶシシャモは、鵡川の秋の風物詩
 シシャモはサケと同じく、ふるさとの川に戻って産卵する魚である。川の水温が急に下がり満潮と日没が重なるときに、河口から群れをなして遡上し、卵を産む。そしてこのころ、シシャモ漁が解禁となる。
 町内の店先には、秋の風物詩となった「シシャモのすだれ干し」が下がり、それを買い求める客が全国からやって来る。さっそく私たちも、ユラユラゆれるシシャモののれんをくぐり、何匹も味見をさせてもらいながら、生干しのシシャモを買った。この季節、太平洋からの秋風のおかげで、一日干すだけで食べごろになる。塩気がほどよくきいていて、脂がのって、香ばしい。卵を抱いたメスもいいけれど、身のしまったオスも美味しいものだ。

 シシャモは漢字で書くと「柳葉魚」。アイヌ語の「スサム」、柳(シュシュ)、葉(ハム)に由来する。アイヌの人々の言い伝えにこんな物語がある。
 あるとき、天上に住むカンナカムイ(雷神)の妹が、沙流(さる)川と鵡川の水源地に降りてきた。ところが、川下のどのコタン(集落)の家々からも煙が立ち昇る様子がなく、不思議に思って人々に聞くと、飢饉で食べるものがなく途方にくれているという。そこでカンナカムイの妹は、天に向かって助けを求めた。天上の神は大いに驚き、フクロウの女神が柳の枝を杖にして、魂を背負い地上に舞い降りた。魂を入れた柳の葉を鵡川に流したところ、みるみるうちに柳葉魚になったという。

 このほか、天上の神の庭にあった柳の葉が、まちがって地上に落ちてしまい、神様はその葉が地上できたなく朽ちるのをかわいそうに思って魚にした。だから秋になると天上のふるさとを慕って川へ遡ってくる…という物語もある(『北海道の旅』に出てくるのはこちら)。

 さて、残念ながら苫小牧では「シシャモ、チップ寿司」を味わうことができなかったが、鵡川町では今も盛んにシシャモ寿司が作られている。
 なかでも、かつての駅弁に最も近いと思われる、シシャモの押し寿司を見つけた。作っているのは町の料理店「むさし」。5年前ほどに、ご主人の古川さんが関西のバッテラをイメージして考案したという。あっさりした白身に上品な香りがあって、焼いて食べるのとは全くちがう味が楽しめる。それにしても、この小さなシシャモを一尾ずつ開いて、キレイに骨をはずし、こんなに美しい寿司にするのはさぞ大変だろう。「日に一万食くらい売れた」と話してくれた近藤俊一さんの顔が、また思い出された。

シシャモの押し寿司

「むさし」の柳葉魚寿し
住所: 鵡川町松風町1丁目34
電話: 01454-2-2032
土・日曜・祝日は、鵡川町 道の駅「四季の館」で販売。
平日は、前もって予約すると店で購入できます(5個から)。
特集 旅と食と文学と 文人たちが出会った味をたどる


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関連情報

・鵡川町のホームページ
http://www10.plala.or.jp/mukawa/

2003年11月9日(日)、「ししゃもあれとぴあin 鵡川」というイベントが開催されます。泳ぐシシャモの観察、資料の展示、シシャモ料理(寿司、ししゃも鍋、ししゃも酒)など、シシャモを存分に体感できる一日です。ぜひお立ちよりください。

場所: 役場庁舎北向い広場特設会場、物販は道の駅「四季の館」「ぽぽんた市場」ほか
時間: 午前10時〜午後2時
問い合せ電話: 01454-2-2411(鵡川町 商工水産観光課 振興係)

鵡川特産物直売所「ぽぽんた市場」は、年内12月20日まで営業。
町内の農・水産物や加工品を、生産者の手から直接お届けしています。