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特集 羊とジンギスカン 羊を巡る挑戦
はじめてのジンギスカン
ジンギスカン・クラスター
ジンギスカン,イメージ
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●はじめてのジンギスカン

 北海道で、初めて羊肉が食べられたのは大正時代のこと。中国東北部(かつての満州)に渡った日本人が、モンゴルの羊肉料理(※1)を見て研究をはじめたといわれる。研究は、大正7年に設立された札幌月寒と滝川の種羊場を中心に行われた。羊の飼育をすすめるには、羊毛だけでなく羊肉のPRも必要と考え、そのため数々の料理が考案されたのだ。料理だけでなく、羊の脂を固めてロウソクにしたり、石けんを作ったりもした。今風にいうと「羊クラスター」である。

 ジンギスカンもそのころ提唱された料理のひとつ。昭和6年に月寒種羊場の山田喜平さんが書いた『綿羊と其飼ひ方』という本には、「成吉思汗(ジンギスカン)」の料理法がくわしく掲載されている(※2)。その後、昭和11年には札幌狸小路の「横綱」という店のメニューに初めてジンギスカンが登場。昭和28年には月寒に会員制の「ツキサップ成吉思汗クラブ」が発足。このころから北海道の観光名物として、野外で豪快に鍋を囲むスタイルに人気が出はじめる。
 農村では食生活指導の講習会がひんぱんに行われ、羊肉料理の実習が盛んになる。昭和20年代後半から「タレ」や「味つき肉」を販売するメーカーが現れ、家庭でも簡単にジンギスカンが食べられるようになる。あるメーカーでは、当時タレ1箱に鉄鍋を1つずつつけて肉屋に卸し、肉屋が客に鍋を貸し出して、ジンギスカンの宣伝に努めたという。昭和41年には「サッポロビール園」が開店し、メニューに「食べ放題のジンギスカン」と「飲み放題のビール」が考案される。こうして、ジンギスカンは一大ブームを巻き起こし、昭和30年代後半には道内の羊肉が不足するほどになった。

 こうして、北海道にはじつに短い間にジンギスカンという食文化が根づいた。北海道人の嗜好と気候風土によほど合っていたのか、花見でも海水浴でも遠足でも、何かあればジンギスカンを食べる。雨の日はガレージのなかでも食べる。大勢で宴会をするときに、こんなに開放的でおいしく、手軽な料理はない。知らない者同士でも親しくなれるし、ビールとおにぎりにピッタリである。




 
モンゴルの羊肉料理 モンゴルの羊肉料理
写真:石嘉福 「週間朝日百科 世界の食べもの62・中国2」(朝日新聞社)

綿羊と其飼ひ方 (※2)「綿羊と其飼ひ方」(北海道大学付属図書館所蔵)
綿羊と其飼ひ方,説明

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