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特集 羊とジンギスカン 北海道人トップページへ
羊の不思議にせまる 「羊はどうして同じ方向をむくのか?」---ほか 「羊はどうして同じ方向をむくのか?」---ほか
人類史上もっとも古い家畜である羊。人間と羊が出あったのは、いまから8000年以上も昔といわれている。いつも私たちの身近にいて、おとなしく、親しみやすい羊たちの生態をご紹介しよう。
文・写真・イラスト/編集部 title=

Q1・羊の群れは、どうしてみな同じ方向をむくのか?
 
 羊の群れには、猿のように決まったリーダーやボスがいない。上下関係もない。そのため、群れの中のどれか1頭が危険を感じたり、何かに気づいて反応すると、他の羊もみんな追従する。たとえば1頭が走り出すと、全頭が一斉にあとに続いて走る。羊にとって「自分だけ別の行動をする」ことは非常に不安なことで、1頭だけになるとパニック状態になり、捕まえるのも難しい。そのため「1頭の羊を捕まえるよりも、100頭の羊を捕まえるほうがたやすい」といわれるほど。
 こうした習性は、羊の群れが狼などの敵から素早く身を守る大切な習性だが、群れの最後のほうにいる羊は、自分がなぜ走っているのかさっぱり分からないだろう。

Q2・羊の出産ラッシュはどうして春なのか?
 
 羊の発情期は一年のうち秋だけなので、この時期に交配し、冬を越して早春に出産をむかえる。妊娠期間は約150日。発情は、夏至をすぎて日が短くなる9月から11月に起こり、日照時間と大きな関連があることがわかっている。そのほか気温や標高などの環境条件に影響を受ける。
 春に生まれた仔羊は、芽吹いたばかりの栄養豊かな青草を食べて育つ。また、出産で疲れたお母さん羊もゆっくり体力を回復することができる。羊の妊娠・出産時期は、種族を効率的に残すために最適なサイクルであり、家畜になる以前の野生動物の営みが続いているのかもしれない。

Q3・羊肉の特長は?
 
 羊肉は、栄養価の高さやコレステロールの低さなどから健康によいヘルシーミートとして注目が集まっている。ラムの代表的な特長は以下のとおり。参考文献:「めん羊・山羊技術ガイドブック」(財団法人日本めん羊協会)

1・ 低コレステロール
ラムのコレステロール含有量が他の食肉に比べて低く、魚肉と同じくらい。 
2・ 不飽和脂肪酸が豊富
コレステロールを減らす働きがあり、人体内では生成することができない不飽和脂肪酸が豊富に含まれている。
3・ 鉄分やビタミンが多い
鉄分やビタミンB12、ナイアシンなどが吸収しやすい形で豊富に含まれている。
4・ 必須アミノ酸が豊富
必須アミノ酸は8種類あるが、ラムのたんぱく質にはこれらすべてが含まれている。
そのほか、脂肪を燃焼させる働きのある「カルニチン」という物質が多く含まれていることが分かっている。

●羊肉(枝肉)の分類と用途例

Q4・羊が、牛より短い草を上手に食べるのはなぜか?
 
 ひみつは唇の構造にある。羊の上唇は左右に分かれていて、それぞれが別々に動き、その自由自在に動く唇で草の根ぎわからむしり取るようにちぎる。そのため、短い草も上手に食べられる。牧草は生えたばかりの短いもののほうが栄養価が高く、やわらかく、羊が好んで食べる。
 一方、牛は長い舌で草を巻き込むようにしてちぎるので、あまり短い草は苦手。

Q5・羊はシッポがないの?
 
 牧場で見る大人の羊にはシッポがないが、産まれてきた仔羊には、長いシッポがついている。このシッポをそのままにしておくと、ふんなどで汚れて不潔になるので、仔羊のうちに除去(=断尾)するのが普通。断尾には、シッポに小さなリングをはめて自然に落とす方法や、ハサミで切る方法などがある。

Q6・羊はガマン強いか?
 
 羊は全身を羊毛でおおわれているので、病気になっても外見から分かりにくい。また、自然界では常に弱ったものが肉食獣に狙われるので、羊たちは具合が悪くてもガマンすることで自己防衛をしていたとも考えられる。羊飼いは、毛刈りを行うときや、日ごろから羊の身体に触ってボディチェックをしながら、病気やケガがないか観察する。
 羊の性質は一般的に温順で、環境適応能力が高く、警戒心が強く臆病であるといわれる。

Q7・健康な羊の見分けかたは?
 
 眼が輝やき、毛づやがよく、耳がピンとして活気のある羊が健康。ふんはコロコロしているのが正常。ただし、青草を食べているときは柔らかくなる。反対に食欲がなく、何となくボーッとしていたり、鼻水やよだれが出ている羊は注意が必要である。

Q8・羊は暑くないのか?
 
 羊は暑さや湿気に弱い動物なので、毎年春に毛刈りをしなければ、夏の暑さに参ってしまう。家畜としての羊は、人間がウールの利用法を発明してから何千年もかけて改良したため、かつては自然に生え変わっていた毛が抜けなくなり、温かな羊毛がたくさん生えるようになった。
 また、夏の日差しが強いときは日射病や熱射病になりやすいので、木かげなどが必要。

Q9・羊は雨にぬれても平気?
 
 羊毛は適度な脂を含んでいるので、少しくらいの雨ならはじき、ある程度の雨になると水分を吸い取る効果があるので、肌にすぐ浸透するのを防いでくれる。この性質はウール100%の衣類にそのまま残っている。羊毛は、刈り取った後も生きている、すばらしい天然繊維なのだ。

Q10・羊の目は、ひとみが横向き?
 
 羊の目をよく見ると、どこを見ているのか分からない横向きのひとみをしている。これは品種によって目立つものと、そうでもないものがあるが、ヤギなども横向きである。また、目が顔の横についているので、真後ろ以外は全方向が見え、外敵から身を守るために役立つ。

Q11・ラムとマトンのちがいは?
 
 羊の年齢による肉の呼び名で、国によってさまざまだが、日本では生後12カ月未満の仔羊肉を「ラム」、それ以上の成羊肉を「マトン」という。また、12カ月から24カ月未満を「ホゲット」という場合もある。生後4カ月未満の母乳だけで育てた仔羊は「ミルクラム」とよばれ珍重される。


取材協力:北海道立畜産試験場 家畜生産部 戸苅哲郎さん
http://www.agri.pref.hokkaido.jp/sintoku/

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