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特集 羊とジンギスカン 特集 羊とジンギスカン 北海道人トップページへ
イメージ 羊アイス 羊牧場をたずねて 松山牧場(美深町)
ふるさと美深で松山牧場を営む柳生佳樹さん ふるさと美深で松山牧場を営む柳生佳樹さん
 旭川市から北へ約100キロのところに、美深(びふか)というまちがある。盆地なので寒暖の差が大きく、夏の気温は30度以上、冬はマイナス30度以下にもなる。このまちに、日本でたぶん唯一、羊乳の生産をメインにした羊牧場「松山牧場」がある。牧場主の柳生佳樹さんを訪ねた。

 もともと柳生さんは道北でアンガス牛の肉牛牧場を経営していた。「牧場の仕事がしたい」というのは少年時代からの夢だった。しかし昭和62年に牛肉の輸入自由化が決まったとき、「赤身の多いアンガス牛は輸入肉にかなわない」と判断し、牛は思い切ってやめた。
 でも、大好きな牧場はなんとか続けたい、どうしよう…と考えていたころ、昔シベリアにいたという知人が「寒い所でも丈夫に育って、子どもをたくさん産んで、肉も美味しい羊がいるよ」と教えてくれた。これをきっかけに海外へ視察にでかけ、カナダで「ロマノフ」というその品種を発見。さっそく10頭を購入して羊牧場をスタートした。

 「これが手ごわい羊でした」と笑う柳生さん。ロマノフは粗野な草地でも元気に育ち、1回のお産で3頭もの子を産む多産種で、質の良い毛と肉が得られる。その反面、野性的で人に慣れにくい。「最初はかわいくないなぁと思いました」。その後、順調に飼育数をふやし、牧場は300頭ほどの規模になった。
 しかし、それに見合うだけの販路はなかなか広げられなかった。価格の安い輸入羊肉との差別化が難しく、売り先がみつからないのだ。またしても牧場の方向性で悩んでいたとき、たまたま産まれてきた仔羊が死んでしまい、余った母羊の乳を試しちょっとに飲んでみた。これが羊乳との初めての出合いだった。

 このとき柳生さんは「すごくショックを受けた」。飲むまでは飼っている本人でさえ羊臭いと思っていたのが、口に入れるとクセや臭いは全くなく、その「濃さ」におどろいた。牛乳のような甘みはないけれど、滋味豊かなスープのような味がする。あらためて世界の羊文化をみてみると、中近東、地中海沿岸、ヨーロッパ諸国では古くから羊乳を原料としてチーズやヨーグルトがつくられている。
 「これを使ってみよう」。かれは決心した。

 牛に乳用種のホルスタインがあるように、羊にも乳用、肉用とそれぞれ適した品種がある。再び柳生さんはイギリスから「ブリティッシュ・フライスランド」という乳用種を導入し、ロマノフなどとかけ合わせて乳量が増えるようにした。こうして、平成5年から本格的に羊乳の加工を開始。アイスクリームやチーズなどに加工するほか、羊肉の生産も続けている。肉は最近になって少しずつ需要がのびてきた。
 現在は約120頭の羊を飼い、毎日2回、朝と夕方にお母さん羊から乳をしぼる。

 この乳しぼりの風景はじつに壮観な眺めだった。
 羊のオッパイがずらりと並び、小さなバケツに白い乳が満たされる。ほんのり温かく、ふっくら泡立っているミルクはいかにも栄養たっぷりに見える。乳搾りをする大ベテランの牧場担当・吉田さんが、リズミカルにすばやく作業をすすめていく。こういう風景が、北海道にはあるのだ。毎日毎日あたりまえのように積み重ねられる営みを目にすると、尊敬の気持ちがずっしりとわいてくる。
 「うちの牧場はまだ始まったばかり。羊乳もこれからの仕事です。でもこれは私のライフワークですから、一生かけてじっくりやりますよ」。柳生さんの後ろには、雨にぬれた広大な牧場と、雨にも負けない羊たちの群れが広がっていた。

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関連情報
・松山牧場
 住所:北海道中川郡美深町字仁宇布660
 電話・FAX:01656-2-4765
 http://village.infoweb.ne.jp/ ̄matuyama/
 牧場の近くにファームインもあり、夕食には特製羊料理を味わうことができる。また「メリーさんのひつじアイス」、「メリーさんのひつじチーズ」、「メリーさんのひつじヨーグルト」「シープミルク」、牧場産の羊肉はホームページで通信販売するほか、美深町にある直営売店「コイブ」でも販売。

・美深町のホームページ
 http://www.town.bifuka.hokkaido.jp/

 

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