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牧場,イメージ 羊 羊牧場をたずねて 茶路めん羊牧場(白糠町)
牧場,イメージ 白糠町で羊飼いをはじめて16年になる武藤浩史さん
 道東、釧路のとなりまちの白糠(しらぬか)町で、400頭の羊を飼う武藤浩史さんを訪ねた。かれは、おそらく日本の羊界(羊好きの人は不思議なネットワークでつながっている)でもっとも有名な羊飼いである。
 牧場では、サフォーク、ロマノフ、ポールドーセット、サウスダウン、チェビオット、ベレンデール、ボンドコリデールとさまざまな種類の羊たちがモクモクと草を食べている。ここは羊肉販売が中心だが、羊毛の取り扱いもしているので、いろいろな毛色や質の需要がある。そのため、10種類もの羊がいる珍しい牧場だ。
羊  私たちが近づくと、羊たちはゆっくり後ずさりした。でも、しばらくすると音もなく近寄ってきて、ビー玉のようなクルリとした目でじっとこちらを見ている。肩で小さく息をしている様子がなんともかわいい。顔の前に手を出すと、しっとりした鼻息があたたかい。いったい何を考えているのだろう。「羊は憶病だけれど、すごく好奇心が強いんですよ」と武藤さん。

 武藤さんは京都生まれ。北海道にあこがれて帯広畜産大学に入学し、羊の研究に取り組んだ。「シープクラブ」という愛好会も結成し、仲間とともに羊をさばき、皮をなめしたり、毛を紡いだりの日々を過ごす。卒業後はカナダへ渡り、実地で羊の飼育を学び、「羊飼いになろう」と決意を固めて北海道へもどる。
 そして1987年、白糠町に土地をみつけて35頭の羊を飼いはじめた。しかし最初は困難の連続だったという。まずは資金の確保、新規就農のさまざまな苦労、そしていちばんの難関は販路の確保。羊肉は通常の流通ルートにのらないため、自分で買い手を見つけていくしかない。しかも、一般的に食べられるロースやモモだけでなく、スネやバラなどの部位も利用できなければ、せっかくの羊がかわいそうだし、もちろん採算も合わない。
 そこで武藤さんは自分で羊の丸焼き道具をつくり、肉と道具を車に積みこんで、出張販売を開始した。これなら1頭全部を使いきれる。なにより生肉のおいしさを存分に宣伝できる。武藤さんは全道全国をかけ回った。

 やや遠火の炭火で、余分な脂をじわじわと落としながら待つこと2時間。肉汁を逃がさないように表面をパリッと焼き上げた羊肉は、香ばしい香りがたまらない。このおいしさを一度味わった人は、すっかり羊のとりこになってしまう。こうして武藤さんは確実にファンを増やしていった。
 評判が広がるにつれ、羊にこだわるレストランから直接注文が来るようになった。そこから「内臓も使いたい」「自分で枝肉をさばきたい」という羊を愛する料理人との出会いがあり、1頭まるごと…の問題もクリア。
 また肉だけでなく、毎年春に毛刈りをしたあとは、羊毛を手紡ぎする人たち(スピナーとよばれる)に販売するほか、専門の工房と連携してくつ下に加工。それでも余った毛は牧舎の敷きわらにし、最終的には良質な肥料とする。
 こうして、武藤さんの周りには有機的で親密な口コミによる「羊ネットワーク」が形成されていった。牧場をはじめたときから、かれがずっと目指しているのは、「衣食住をまかなってくれる羊を有効に活用すること」。その願いは20年の歳月をかけて、少しずつ形になっている。

いろいろな種類の羊たち
羊,毛刈り
羊,毛刈り
羊,毛刈り
羊,毛刈り
上手に毛刈りをすれば、1頭あたり5分もかからず終わる 茶路めん羊牧場には、いろいろな種類の羊たちがいる。顔つきも性格も違う
 
関連情報
・茶路めん羊牧場
 住所:北海道白糠郡白糠町茶路基線88-1
 電話: 01547-2-4623/ FAX:01547-2-3546
 http://www.aurens.or.jp/hp/caution/
 牧場の羊肉(内臓も含め500グラムから販売)は、電話またはFAXで注文を受け付けている。
 ただし量に限りがあるので対応できない場合もある。

・白糠町のホームページ
 http://www.hokkai.or.jp/siranuka/

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