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特集 唄と祭り
道南・江差町で8月9.10.11日に行われる「姥神大神宮渡御祭」 ※写真/爲岡進さん
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ニシン漁から生まれた伝統の祭り 江差町「姥神大神宮渡御祭」
 北海道でもっとも古い歴史をもつ祭りのひとつが、江差町の「姥神(うばがみ)大神宮渡御祭」である。この祭りは今から約350年前―江戸時代、北海道が蝦夷とよばれて松前藩がおかれていたころ、人々がニシンの豊漁を神様に感謝したのがはじまりとされる。

 姥神の伝説は、こう伝えられている。
 かつて江差に移住してきた人々は、寒冷地のため米の収穫ができずに困っていた。あるとき、於鱗(おりん)という老婆が現われて江差に住みつき、人々に敬われるようになった。ある夜、弁天島(いまの鴎島)から於鱗の小屋に光が差し込んだ。老婆が島に渡ると、島の守護神であるという老人が現われて老婆に小瓶を与え、その中の白水を海に注ぐとニシンという魚が大群でやって来るので、それを捕って生業とするよう告げた。老婆がお告げ通りに白い水を注ぐと、浜にニシンが群れて大漁となり、人々は漁を行うようになった。しばらくすると老婆は姿を消し、彼女が住んでいた小屋には「神明の尊体」が残されていた。これを人々は「姥が神」とよんで神社にまつり、漁業祖の神として尊敬するようになった。

   祭りは8月9、10、11の3日間、御輿と13台の山車がまちを練り歩き、囃子と太鼓と人々の熱気でまちじゅうが沸き返る。江差生まれの人々は祭りめがけて帰省し、全国から見物客がやって来るため、ふだんは人口1万人のまちが何倍にもふくれ上がる。
 また、祭りの1カ月ほど前からは、子どもたちが町内会ごとに稽古場に集まって太鼓や笛の練習にはげむ。あちこちから祭り囃子が聞こえてくる。
 姥神の祭りは、江差の夏をすべて使い果たすほど大きな祭りなのだ。

 25年間、この祭りを欠かさず撮影してきた岡進さんにお話を聞いた。彼も祭りに心をうばわれた一人である。
 「写真を撮っているうちに、私もすっかり江差に入り込んでしまったんです。まちの人からは、名前ではなく『写真やさん、写真やさん』と呼ばれていましたが、あちこちでお酒をすすめられ、全部のご相伴にあずかっていると酔っぱらって仕事ができなくなるほどでした」
姥神大神宮渡御祭の様子(祭り囃子)  祭りの日、江差の家庭では山ほどのご馳走をこしらえ、酒を用意し、客人をもてなす。身近な知人はもちろん、知り合いの知り合い、または見知らぬ人が宴に混じることもめずらしくない。その熱気と活気とにぎやかさは、祭りのもつ空気である。
 「江差の人たちの意気込みは、昔も今も少しも変わりません。町の人口がしだいに減り、御輿の担き手が少なくなったりしていますが、夏が近づいてくると、祭人の心に祭り囃子が鳴り響くのです」。
  江差,祭り,※写真/爲岡進さん
 

爲岡進さん  
爲岡進さん
1942年生まれ。1973年から北海道開拓記念館の写真技術員として道内各地の祭りをはじめ、さまざまな生活文化をカメラに収める。撮影を担当した出版物は膨大な数にのぼり、『ぼくらの町の村まつりと行事(1)北海道地方』『北海道のやきもの』などのほか、写真集に『江差姥神大神宮祭礼写真集』『北の譜』などがある。

◎2003年7月19日〜8月30日(予定)に江差町で写真展を開催。『江差姥神大神宮祭礼写真集』に掲載していない膨大な数の写真を一堂に展示。会場は、歴まち夢会館(江差町)、入場無料。


関連サイト  
   
江差町ホームページ
http://www.hokkaido-esashi.jp/
北海道人「北海道遺産連載第14回姥神大神宮渡御祭」のページ
http://www.hokkaido-jin.jp/heritage/14.html
   
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