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特集 産業遺産への旅 北海道人トップページへ
 
 

炭鉱,廃墟 それは「廃墟」のようにも見えた。
 閉山になった炭鉱跡に、点々と残るコンクリートの構造物。
 夏には生い茂る緑のなかに、死んだようにたたずむ過去となった存在。
 しかし、ひとたびわたしたちが近づくと、緑に埋もれたその「過去の遺物」は、静かに語り始める。
 そこに生きた人々の歴史。活況を見せた街の幻影。
 産業遺産―それは歴史の記憶であると同時に、その追体験の扉をひらくカギでもある。

 北海道は、明治以来日本有数の「産炭地」として、日本の石炭の約三分の一を産出してきた。農林水産業においても、昭和初期まで続いたニシン漁や北洋漁業をはじめ、多くの富を生んできた。人間や物資を運ぶために、鉄道が敷かれ、無数のトンネルが掘られた。
 鉱山、農漁業の施設、港湾、工場、鉄道など、近代をいろどった産業の施設の多くは、その役割を終えたが、残された産業の遺産を保存し、新たな地域資源とする動きが広まっている。
 世界的にも産業遺産は、「ヘリテージパーク」としてよみがえり、たとえば産業革命発祥の地であるイギリス・コールブルックデールは、いま「アイアンブリッジ渓谷博物館」として世界に知られる産業歴史テーマパークとなり、世界中からの観光客を集めている。
 衰退のシンボルとして、忘れ去られようとしていた産業の遺産が、新しい観光やまちの誇りとして、その価値を見直されている。産業遺産は、もはや過去の遺物ではなく、地域の貴重な資源なのだといえる。

 北海道の産業遺産には何があるのか。
 各地にのこる鰊御殿や番屋跡もそのひとつだ。ダムや発電所もある。都市のなかに再生されたかつてのビール工場もある。しかし何よりも北海道らしい産業遺産といえば、北海道中央部にひろがる炭鉱の遺産と、全道各地に廃線や橋梁、アーチ型構造物などを遺す鉄道の遺産だろう。
 保存されているものもあれば、地域の人にさえ忘れられたものもある。
 新たな空間として再生され、記憶をとどめさせるものもある。

 「産業遺産」は、産業の記憶や人々の歴史を伝えるエコミュージアム=環境博物館である。
 わたしたちは、もうひとつの旅の途中で、この記憶と出会うのだ。
 さあ、産業遺産への旅にでかけよう。

 
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