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特集 産業遺産への旅
 

 はじめて札幌に来た観光客に「一日市内を観光したい。どこか案内して」と言われたら、ぜひ行きたい場所がある。約130年の歴史をほこるビール工場(現・サッポロファクトリー)だ。明治初期、日本のビールを支えた人々の夢に想いをはせながら、歴史を刻むレンガの建築群を眺めながら、できたてビールを楽しもう。

 1869(明治2)年、北海道に開拓使が設置され、札幌にはさまざまな事業所が開かれた。1876(明治9)年にできた「開拓使麦酒醸造所」もそのひとつ。最初の工場は木造だったが、札幌産ビールが全国に販売されるようになるにつれ、レンガ造りの工場が増設された。現在残る最古のものは、明治25年完成の貯酒発酵室だ。そそり立つ巨大な壁はヨーロッパの街並みを思わせる。開拓使のトレードマーク、赤い星も健在である。

 開業式の写真を見ると、工場の壁にホップの枝がかざられ、ビールの樽に「麦とホップを制すればビールという酒になる」と書かれている。ここでベルリンで醸造学を修めた中川清兵衛が醸造責任者となり、日本人による初のビール醸造がはじまった。商品名は「札幌冷製麦酒」。
 中川が技術を学んだドイツのブルワリーへ、札幌で作ったビールを送ったところ、こんな評価が届いたという。
 「冷製札幌麦酒はホップが少し過分だが、ともかく、やわらかなエールのような美味をおびた上質のビールである。また、ホップはアメリカ産のそれによく似ていて、その品質も良好で、ドイツ産に比べて少しも劣ることはない」(西村英樹著『夢のサムライ』より)
 当時日本ではホップを入手できないので、すべて札幌で栽培した。水は地下に井戸を掘り、豊かで清冽な伏流水を使った。また、ドイツ式は製造過程で麦汁(ビールの元になる液体)を冷却するため、たくさんの氷が必要となる。これには近くを流れる豊平川から、冬の間に氷を切り出して使った。
 さまざまなビール醸造の条件が、北海道の冷涼な気候風土に適していたのだ。

 数年後に開拓使が廃止され、ビール工場も民営となる。1888(明治21)年「札幌麦酒会社」としてスタートし、1906(明治39)年には札幌麦酒会社、日本麦酒、大阪麦酒の三社が合併して「大日本麦酒株式会社」が発足、1949(昭和24)年に現在のサッポロビール株式会社となる。
 その後、1989(平成元)年に工場が札幌近郊の恵庭市に移転することになった。それにともない、歴史的な建築物を保存し、跡地を新しい商業施設として再生しようという都市再開発計画が持ち上がった。そして1993(平成5)年、現在のサッポロファクトリーがオープンした。
 たくさんのショップやレストラン、映画館やホテルが並ぶほか、札幌の歴史記録写真を多数収蔵、公開展示している「札幌写真ライブラリー」や現代の写真展が開かれるギャラリーなどもあり、年中多くの人でにぎわっている。

 この一角に「札幌開拓使麦酒醸造所」がある。美しい銅製の仕込釜などが間近で見られるほか、明治時代の貴重な資料や道具が見学できる(歴代のビール瓶や王冠が楽しい。王冠が発明される前はコルク栓だったのだ)。
 となりの地ビールレストランでは、当時の味を再現した「開拓使ビール」が人気だ。通常ビールは酵母をろ過して(瓶や缶の中で発酵が進むのを防ぐため)販売されるが、ここでは「未ろ過ビール」が飲める。色は少し白っぽく、クリアでないのが特徴。味わいはコクがあって豊か、「滋味豊かなたべもの」という感じがする。ぜひ一度お試しを。

※参考文献
『夢のサムライ』西村英樹著(北海道出版企画センター発行)
『日本の産業遺産』山崎俊雄・前田清志編(玉川大学出版部発行)
『建物の見方・調べ方』日本産業遺産研究会+文化庁歴史的建造物調査研究会編著(ぎょうせい発行)等

DATA
■サッポロファクトリー
住所/札幌市中央区北2条東4丁目
電話/011-207-5000
営業時間/ショッピング:午前10時〜午後8時
レストラン:午前11時〜午後10時
休館日 /2003年4月は無休
※各施設によって休業の場合がありますのでご確認ください。
アクセス/JR札幌駅前から徒歩12分、または地下鉄東西線「バスセンター前」下車徒歩5分、または市営バスファクトリー線「ファクトリー前」下車すぐ

ビールの歴史について、もっと詳しく見学するには…
サッポロビール博物館
■サッポロビール博物館(サッポロビール園)
住所/札幌市東区北7条東9丁目
電話/011-731-4368(10名以上の団体は要予約)
開館時間/午前9時〜午後5時(入館は3時40分まで)
休館日/11〜4月の土日・祝日、年末年始(12月29日〜1月5日)


・札幌市役所のホームページ
http://www.city.sapporo.jp/city/
・ウェブシティさっぽろ
http://web.city.sapporo.jp/
・サッポロファクトリーのホームページ
http://www.sapporo-factory.co.jp/

 

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