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特集 産業遺産への旅
 

 札幌と旭川の中ほどに位置する美唄(びばい)市。
 焼き鳥がおいしいこのまちは、1913(大正2)年に飯田美唄炭鉱(のちの三菱美唄炭鉱)ができたのを最初に、三菱・三井美唄炭鉱といった大炭鉱から中小の炭鉱までがひしめきあっていた。戦後、日本経済復興の主役として巨額の資金が投入され、石炭産業は拡大が続く。まちは活気にあふれた。
 しかし他の産地と同様に、国のエネルギー政策の転換によって閉山が相次ぐ。石炭を運ぶために開通した「美唄鉄道」も1972年に廃線となり、翌年にはすべての炭鉱(ヤマ)の火が消える。

 現在、市内には当時の巨大な立坑や発電所、鉄道駅舎、機関車など、炭鉱施設が歴史的な遺産として保存され、まち全体が大きなミュージアムのようになっている。この構想は、かつてこの地に大きな炭鉱があり、多くの人々が働き、暮らしていたことを、未来の子どもたちに伝えたいという人々の願いから生まれた。
 美唄市と美唄出身の彫刻家・安田侃氏、市民有志の人々の働きかけにより、廃校になった小学校を利用してつくられた「アルテピアッツァ美唄」もそのひとつ(アルテピアッツァとは、イタリア語で芸術広場の意味)。安田氏の彫刻が常設され、ギャラリーやコンサート会場として多くの人が訪れる。1992年に完成し、その後も少しずつ手が加えられている。
 かつて校庭だった大きな庭は美しい芝生におおわれ、周りはなだらかな山に囲まれ、じつに気持ちのよい場所だ。

 アルテピアッツァには、いろいろな人がやって来る。
 まず、木造校舎の1階はいまも幼稚園として使われているので、元気なちびっこが通う。屋外に配された大きな彫刻も子どもたちには格好の遊び場だ。大理石の上に登ったり、しがみついたり、穴をくぐり抜けたり。こんな幼稚園に毎日通えたらどんなにいいかとうらやましくなる。
 2階はギャラリースペースで、安田氏の彫刻がゆったり並び、彫刻を楽しみに全国から多くの人が訪れる。ひとつずつの作品が心地よくこの場所に「住んでいる」ようなギャラリーだ。小さく流れる音楽も、窓の外に広がる彫刻と庭の景色も、うまく溶け合ってひとつの世界を生み出している。

 校舎の向かいにあるかつての体育館は、高い天井を利用してすばらしいコンサートホールとなった。市民参加のコンサートや詩の朗読会がいくつも開かれるほか、毎年恒例の林峰男氏のチェロコンサートなども開催され、音楽好きの人々がこちらも全国からやって来る。
 そのほか、芝生の上でお弁当を広げる人、散歩する人、絵を描く人、木かげで本を読む人等々、日常的にアルテピアッツァを楽しむ人々がいる(しかし、なにしろ敷地が広いので、少しも窮屈な感じがしない)。

 それからお盆の季節になると、昔この学校に通っていた人や、この地区の炭鉱住宅に住んでいた人がやって来る。教室の壁に昔のまま残る名札を見て、壁に掲げられた校歌を見て、涙を浮かべる人がいる。
 1950年ころ、ここ栄小学校には975人もの小学生が通っていた。
 1946年に三菱地区(美唄は三井による開発が行われた南美唄町と、三菱に開発された地区に分かれる)で5番目の小学校として児童数219人で開校。炭鉱の拡大とともに子どもたちも急増し、1949年2階建て校舎を新築するが、その後は児童数が減り続け、1981年に廃校となる。このときの校舎が現在のアルテピアッツァなのだ。
 そういう背景を知っても、知らなくても、訪れる人々はここで安らぎと心地よさを得る。

DATA
■アルテピアッツァ美唄
住所/美唄市落合町栄町
電話/01266-3-2082
営業時間/午前10時〜午後7時(水曜〜日曜)、午前10時〜午後3時(月曜)
休館日 /毎週火曜、祝日の翌日(日曜は除く)、12月31日〜1月5日
入館料/無料
アクセス/JR美唄駅前から市民バス「アルテピアッツァ美唄行き」で20分、または車で道央自動車道を利用の場合、札幌から約35分・旭川から約50分・新千歳空港から約60分

・美唄市のホームページ
http://www.city.bibai.hokkaido.jp/
・「そらち・炭鉱(やま)の記憶の旅」(北海道空知支庁ホームページ内)
http://www.sorachi.pref.hokkaido.jp/yama/index.html
・北海道を知る100冊『アルテピアッツァ美唄―安田侃の芸術広場』
http://www.hokkaido-jin.jp/issue/books/022.html

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