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うつくしい北の島へ。海鳥の島、天売島 森の島 焼尻島
北海道,イメージ ウトウ,海鳥
60万羽のウトウの壮大なバトル

 「夜は夕ご飯を早めに食べて、ウトウを見にいったらいいよ」
 宿のお母さんに勧められて、夕暮れの赤岩展望台に登った。
 日本海に真っ赤な太陽が沈むころ、空一面に、黒い小さな斑紋が動いている。島に向かって近づいてくる。それが「ウトウ」という海鳥だ。

 ウトウは現在、島で最も多く見られる海鳥で、夏の繁殖期には60万羽も棲息するという。海岸沿いの地面に夫婦で一つずつ、深さ1メートル以上の巣穴をつくり、そのなかでヒナを1羽育てている。目をこらしてよく見ると、飛んでくるウトウの口元にキラキラ光るものが見える。イカナゴなどの小魚だ。親鳥たちは昼の間、海に潜ってヒナのためにエサをとり、それを口いっぱいくわえたまま戻ってくる。これほど大群のウトウの帰巣が見られるのは、世界でもここだけという。とにかく圧巻である。

 しかし、帰ってきたウトウは、そう簡単に巣穴に入れない。ウトウのくわえるエサを待ち構えて、ウミネコがたくさん集まってくるのだ。ウミネコはウトウの口からエサを横取りし、素早く飛んでいってしまう。こうしたウトウとウミネコの戦いが赤岩では毎晩くりひろげられ、見ている人間たちにも熱が入る。ついみんなでウトウに声援を送ってしまう。
  でも、しばらく見ていると、ウミネコはウトウの身体を傷つけることはなく、エサをいただくだけである。ウミネコたちも、巣で待つヒナのために一生懸命エサを集めているのだ。しかも、ウトウが上手に逃げてしまい、失敗することも多い。悔しそうに鳴くウミネコの姿に少し同情してしまった。

 

ウトウ
海鳥が知らせてくれること

 かつて、天売島といえば「オロロン鳥」の繁殖地として有名だった。
 正式和名はウミガラス、白黒のペンギンのような姿の海鳥で、昭和初期には約4万羽いたという記録がある。1938年に国の天然記念物に指定され、島のシンボルであり、観光の目玉だった。しかし、観光客の増大やエサの減少とともに棲息環境が悪化し、漁網に引っ掛かって死亡するものなども増え、現在はほとんど見られなくなってしまった。昨年の調査では、天売島で繁殖したウミガラスはわずか17羽だった。

 天売島のある羽幌町と環境省では、地元の人々と協力して十数年前からウミガラスのデコイ(模型)を置いたり、鳴き声をスピーカーで流したり、本物のウミガラスを呼び込むプロジェクトに取り組んでいる。同じように、絶滅に瀕したウミガラスの繁殖に成功したカリフォルニア州との研究交流も進めている。今年度から本格的に計画が実行されている。
 また、ウミガラスだけでなく、ほかの海鳥についても同じように保全の必要性は絶対的である。どんな小さなゴミも、一滴の油も、海鳥にとっては生存を脅かす驚異となる。

 羽幌町の「北海道海鳥センター」で、海鳥の調査や保護活動などを行う小野宏治さんにこんな話を聞いた。
 「海から多大な恩恵を受けて暮らしているわたしたちにとって、海鳥の減少はけっして無縁な問題ではありません。海鳥たちは、海洋環境全体を表わす、モニターでもあるのです。個体数の変動という目に見える形で、海洋環境の変化をわたしたちに知らせているのです」
 海鳥保全のゴールは、豊かな海洋環境を取り戻すことにある。

 

ウトウ,海鳥
北海道海鳥センター
苫前郡羽幌町北6条1丁目/電話:01646-9-2080
URL:http://www.seabird.go.jp/
日本で唯一、海鳥について専門に調査研究・保全活動などを行う機関。海鳥を観察する前に、また天売・焼尻島を訪れる前に、ぜひ当センターを訪ねたい。世界の海鳥の生態とともに北海道の海鳥情報が分かりやすく展示されている。入館無料。 また、「海鳥センター友の会」(http://www.seabird.go.jp/tomo/index.html)では年間を通じてさまざまなイベントや調査を行っている。海鳥と海鳥をとりまく自然環境についてより深く知ることができる<入会は随時受付け中>。
海鳥,絵 海鳥センター,スタッフ
説明文
天売島海鳥情報センター「海の宇宙観」
苫前郡羽幌町大字天売字相影110/電話:01648-3-9009
URL:http://www.teuri.jp/
天売島在住の自然写真家・寺沢孝毅さんが開設した海鳥情報センター。島の四季を写した美しい写真とともに、海鳥を中心とした島のさまざまな自然の様子を知ることができる。スライド上映会やネイチャーガイドなど多彩なメニューがそろっている。入館料300円で何度でも入ることができ、喫茶コーナーもあるので散歩の途中で休憩するのにも最適。
寺沢考殻,説明 天売島海鳥情報センター
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