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花でまちづくり
 北海道の中央部、恵庭市に「恵み野」という美しい名前のまちがある。名前だけではない。札幌からJRで約20分、駅を降りたとたんに、歩道沿いにあふれるように咲く草花が目に入る。商店街はどこも花屋と見まちがえるほど、店先にたくさんの花が飾られている。小路に入れば家々の庭の美しさに目をうばわれる。
 花のまち、恵み野を訪ねた。
 ニュージーランドにクライストチャーチという都市がある。「ガーデンシティ」とよばれる、イギリス風のガーデニングが盛んなまちだ。1991年、恵庭市の職員が視察にでかけ、花に包まれた市街の風景をスライドに納めてきた。その後、恵庭市で報告のスライド上映会が開かれた。
 「ああ、これだ!」
 スライドを見ていた市民のひとり、内倉真裕美さんはそう感じた。そして「私たちのまちも、クライストチャーチのような美しい場所にしよう」と思った。
庭,イメージ
恵み野  内倉さんは、1988年から家族とともに恵庭市恵み野に住みはじめ、商店街で小さな手芸店を開いていた。恵み野はまだできたばかりの新興住宅地で、きれいだけれど何もない。目の前の歩道にも、大きな植樹枡(花を植える区画)があるけれど、生えているのは雑草ばかり。ずっと「どうにかしたい」と思っていた内倉さんは、クライストチャーチに習って「ガーデンコンテスト」を開催することを決意。自分ひとりで主催するのは無理と思い、商店会などに相談をもちかけた。でも、最初は誰も賛成してくれない。「何のためにやるの? お金はかかるの?」そんな反応がほとんどだった。

 「自分たち住む土地を自分たちで美しくするのは、やらなきゃいけないという『義務』ではなく、美しく出来る『権利』だと思うんです。いつも通るまちなみを、気持ちいい場所にしたいじゃないですか」
ガーデニング 内倉さんの気持ちは、少しずつ周りに広がっていった。「内倉さんがそう言うなら、1回やってみようか」と、恵み野西商店会が主催となり、第1回ガーデンコンテストが開かれた。

 コンテストは今年で12回目、最初は公募方式をとっていたが、今は恵み野町内のすべての家庭を対象に、美しい庭を探す「恵み野花探検団方式」で審査を行っている。コンテストの実行委員会が、まちを歩いて認定した庭を優秀賞として表彰するのだ。
 「今まで、うれしいと言われたことは何度もありますが、文句が出たことは一度もないですよ」と内倉さん。恵み野のまちは、ガーデンコンテストをきっかけに、毎年美しい庭が増えていった。また、個人の庭だけでなく、いろいろな団体が活動をはじめ、歩道の植樹枡や植樹帯などにも花が植えられるようになった。

 「いま、恵み野はどこを歩いても花でいっぱいですよ」
 12年前、内倉さんが描いた夢はすっかり現実となった。これは簡単なことではない。花は植えてから後が大変なのだ。草取りをし水をまき、肥料を与え、常に手入れをしなければ、こんなに美しい風景は保たれない。まちに住む人が、自分のまちに愛着や誇りをもって、はじめて実現できることだろう。  花を中心に、恵み野のまちは輝きを増す。そこに住む人も、通りすがる人も、やわらかな幸せに包まれる。

・恵庭市のホームページ 
 http://www.city.eniwa.hokkaido.jp/
・「内倉真裕美のガーデニングダイアリー」
 http://www8.tok2.com/home/hananomachi/
・「ブレインズ」 
 http://www7.ocn.ne.jp/ ̄brains/

内倉真裕美
内倉真裕美
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