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エンレイソウ 特集 北の花めぐり 北海道人トップページへ title=
エンレイソウ
取材・文/編集部
写真・イラスト提供/大原雅さん
エンレイソウ,説明

 日高や道東地方のエンレイソウは、林のなか一面に大群落を形成する。見渡すかぎりのエンレイソウ。白い花が一斉に開くと、小さな踊り子が輪舞しているように見える。
 ひし形の大きな三枚葉に、同じく三枚の花びらを拡げ、夏には三角すいの実をつける。この実がソバに似ていることから、エンレイソウの仲間は古くから「ヤマソバ」ともよばれてきた。また全く別の呼び名もある。

 エンレイソウの研究を20年以上にわたって続けている、北大大学院の大原雅助教授にこんな話を聞いた。大原さんが十勝の広尾町で林を観察していたときのこと。まちの人に声をかけられた。

 「何か探しているのですか?」
 「ええ、オオバナノエンレイソウの観察です」
 「えんれいそう? 何ですかそれ」
 「これですよ」
 「なんだ、アメフリボタンのことか」

 この呼び名は霧が多い道東特有のもの。「花を摘み取ると必ず雨が降る」という古い言い伝えもあるという。なるほど、エンレイソウにはどこか雨を思わせるしっとりとした風情がある。

大原雅
大原雅さん(北海道大学大学院 地球環境科学研究科 生態遺伝学講座 助教授)
エンレイソウは、長生き草

エンレイソウ エンレイソウは、漢字で書くと「延齢草」。まさしく長生きの草である。
 成長がとてもゆっくりで、花が咲くまでに10〜15年もの時間がかかる。しかもその長い年月を経て、可憐な花を咲かせるのことができるのはごくわずか。うまく発芽できなかったり、途中で枯れたり、自然のおきては厳しいものだ。
 しかし一度花を咲かせたあとの寿命は、とてもとても長い。まだはっきり解明されていないが、平均年齢は30〜50年ともいわれている。
 大原さんは、研究を始めた22年前から、同じ株のエンレイソウを観察し続けている。まったく野性の状態で何年くらい花が咲くのか。徹底した追跡調査を行った研究者は今までにひとりもいない。だから寿命がはっきりわからない。
 大原さんは「今年も元気に咲きました。いつまで咲き続けるか、ずっと観察を続けるつもりです。私が先にリタイアするか、はたまたエンレイソウが先か。どちらが勝つか勝負ですよ」と笑う。

<オオバナノエンレイソウの生活>

  1. 夏にできた種子が地面におちる。翌年の春、土の中で種子が発根する。
  2. 2年目の春、1枚だけ葉を地上に出す。
    夏が過ぎると地上の葉は枯れ、次の春まで土の中で暮らす。
  3. 3年目の春、もう少し大きな葉を1枚だけ伸ばす。
    最初の5〜6年は毎年これをくりかえし、少しずつ大きくなる。
  4. やがて3枚の葉を出すようになり、これを5〜6年くりかえす。
  5. 10〜15年目の春にようやく開花。この後は毎年花を咲かせる。
  6. 花の後に黒い果実を結び、1つの花から100〜150個の種子ができる。
エンレイソウ