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役立つ雪

・高砂酒造株式会社
住所:旭川市宮下通17丁目
電話:0166-23-2251
http://takasagoshuzo.com

一夜雫
高砂酒造「大吟醸 雪氷室 一夜雫」(4280円/720ミリリットル)
最高級の米、山田錦を35パーセントまで精米して仕込んだ大吟醸酒。

アイスドーム
日本唯一という酒造り用のアイスドームは、丸2昼夜かけて作られる。酒の味と香りを損なわないよう、使う雪氷は無味無臭の井戸水を凍らせたもの。





・和寒町農業協同組合
住所:上川郡和寒町字西町36番地
電話:016532-2441(代)
※商品は各地のホクレンショップにて販売

越冬,キャベツ
雪の下には青々としたキャベツがびっしりと並んでいる。畑は一面の雪野原で、どこにキャベツが埋まっているか全然分からない(農家の方は、ちゃんと目印をつけているので大丈夫)。

越冬,キャベツ
包丁を入れると、シャキシャキとみずみずしい音が聞こえるほど新鮮。
特集 雪の楽園<パラダイス> 北海道人トップページへ

極寒の雪の中での酒造り―高砂酒造(旭川市)
 雪を使った「美味しい話題」をもう少しご紹介しよう。
 こちらは日本酒の話。マイナス20度にも冷え込む寒さのもと、最高級の大吟醸が造られるという。旭川で最も歴史の古い酒蔵、「高砂酒造」を訪ねた。

 その酒の名前は「大吟醸 雪氷室 一夜雫」。名前のとおり雪と氷でつくった雪氷室(アイスドームとよぶ。直径10メートル、高さ約3メートルもある)の中で、もろみの入った酒袋を吊るし、自然に滴り落ちる雫を集める。
 ひんやりしたドームに入ったとたん、もろみの香しい匂いに包まれた。どうして雪の中で酒を造るのか、高砂酒造の専務である小桧山俊介さんに聞いた。
 「アイスドームでは、もろみを濾して清酒と酒粕を分ける搾り作業を行います。この作業は味と香りを損なわないようにするのが第一。雑菌などが入るのも絶対にいけません。風がなく静かで清らかな空間が理想です。ドームの中はその条件に最適で、風味のよい美味しい酒ができるんです。特に冷え込む1月の夜に、一晩かけてじっくり滴り落ちた酒は最高の味わいです」

 「搾りたての生酒」という言葉をよく聞くが、これは「滴り落ちたての生酒」である。ひと口いただいてみる。ほんのりと甘く、涼やかな香りがふわりと広がる。爽やかに美味。
 3月になると旭川にも春が近づき、ドームは溶けて天井に穴があいてしまう。ひと冬限定3万本、雪氷室一夜雫づくりの季節はそろそろ終わりだ。


雪の下で春まで新鮮、越冬キャベツ―JA和寒町(和寒町)
 最後に、雪を使った「越冬キャベツ」について。
 旭川市から北へ約40キロメートル、なだらかな山並みに囲まれた盆地のまち、和寒町へむかった。
 和寒では、約100戸の農家が秋に収穫したキャベツを畑で雪の下に貯蔵し、春まで少しずつ堀り出して出荷している。品薄の時期に地物のキャベツが食べられるとあって、全国に名の知られた特産品になっている。
 深さ約1.5メートルにもなる雪のおかげで、キャベツはしばれることなく湿度も充分に保たれて、長い間保存できる。それどころか、保存前よりアミノ酸が増えてずっと甘味が増すという。
 「11月から4月までの1シーズンで、3500トンのキャベツを出荷しています」というのはJA和寒町販売部の小野田祐司さん。ということは1日に約20トン。すごい量だ。

 さらに驚いたことに、この越冬キャベツは偶然から生まれたという。その誕生秘話とは―30年ほど前、町ではわずか7戸の農家がキャベツの栽培を行っていた。収穫はしたものの、買い取り価格が低下したので畑にそのまま放っておいた。すると、ちょうどドカ雪が降ってキャベツはすっかり雪の下に。ところが、春が来て雪の下から見事な青さをたたえたキャベツが顔を出した。半信半疑で市場に出したところ、驚くほどの高値で売れた。その後いろいろな品種を試し、保存方法も研究し、現在の越冬キャベツが確立された。

 葉菜(キャベツ)部会の部会長、出戸鉄夫さんの畑に案内してもらった。
 「収穫したあとの畑にビニールシートをしいて、キャベツをきっちりと並べ、あとは根雪が積もるのを待ちます。早すぎるとキャベツが凍ってしまうし、遅すぎると収穫ができない。いつ雪が来るか、この見極めが肝心です」
 そういいながら、大きなキャベツを掘り出してくれた。外側の葉を数枚はがすと、ツヤツヤと美しいキャベツが現れた。一口かじってみると、パリパリと歯ごたえがよく、なんとも甘い。「うちでは生で食べるほかに、スープで煮込んだりして食べています」とにこやかに話す出戸さん。
 役立つ雪は、北国の大きなエネルギーである。

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