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役立つ雪
役立つ雪,説明

コミュニティホーム美唄
2000年に完成した介護老人保険施設「コミュニティホーム美唄」にも雪冷房が導入された。ここでは「冷水循環方式」と、空気を雪で冷やす「全空気式」を併用。身体に優しい冷気が入居者から喜ばれている。

貯雪庫
貯雪庫の雪入れ作業は3月が本番。





びばい雪蔵漬け
氷室内で作る漬物は、低塩でも美味しく熟成することが大きな特徴。近く「びばい雪蔵漬け」として商品化される予定。

雪蔵工房
イメージ
美唄は道内有数の稲作地帯。JAびばいの米殻貯蔵施設「雪蔵工房」には約6千トンの玄米が貯蔵され、高品質で安定した供給が行われる。


・美唄市
http://www.city.bibai.hokkaido.jp/
・美唄自然エネルギー研究会
http://www.net-bibai.co.jp/eneken/
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新エネルギーとしての雪―美唄自然エネルギー研究所(美唄市) 新エネルギーとしての雪―美唄自然エネルギー研究所(美唄市)

 2002年度は雪と氷の「新エネルギー元年」といわれる。風力や太陽光などと同じく、「雪氷」を新エネルギーとして国が正式に認め、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」を改定した。これによって、雪氷(冷凍機器で生産したもの以外)をエネルギーとした冷蔵や冷房、その他の利用を進めることが決まった。導入には補助も受けられる。石油に替わる新エネルギーとして、雪氷の価値が認められたのだ。

 「やっとここまで来ました」というのは、美唄自然エネルギー研究会の研究員、金子幸江さん。年間降雪量8メートルの豪雪地帯、美唄では、5年前から同会による雪エネルギー研究が行われ、建物の冷房や農作物の貯蔵など、すでに5カ所の施設に雪エネルギーが使われている。
 最初に完成したのは、1999年の世界初「雪冷房マンション」。春先に約100トンの雪を貯雪庫に入れ、融雪解水(冷水)を循環させて、夏の冷房に使う(これを「冷水循環方式」という)。結果は上々だった。全国から高い注目を集め、視察見学の人々がいまも後を絶たない。
 雪冷房は温度の涼しさだけでなく、雪が空気中のホコリなどを吸い取ってくれるので、室内を清浄に保つ。マイナスイオンを出す効果もある。二酸化炭素などの環境負荷も極めて低い。コスト面も継続して使えば低くなる。

 これほど優れたエネルギーが、雪国には天から無償でしかも大量に降ってくるのだ。もちろん雪を貯蔵して利用するには設備とシステムが必要になる。しかし、「そのための技術はもうすべて完成しています」と金子さんはいう。あとはどうやって普及させるか、より効率良く利用するかが課題だ。


 農業分野の利用も盛んである。1999年、古い石造りの倉庫を使った「JAびばい氷室(ひむろ)貯蔵研究所」が設立された。氷室内に雪を入れ、年間を通して低温(0〜4度)高湿度(90〜99パーセント)に保ち、地元でとれた野菜を貯蔵した。野菜の鮮度が維持されるだけでなく、糖度や旨味が増すことが数値で示された。アミノ酸などが増えるのだ。雪によって野菜が美味しくなる。
 さらに研究が進められ、氷室は発酵・熟成食品を作るのに適していることがわかった。漬物や味噌作りも行われている(近いうちに商品化される予定)。

 そして2001年、国内最大規模の施設が完成した。JAびばいの米殻貯蔵施設「雪蔵工房」である。貯雪量は最大3万6千トン、貯蔵できる米は6千トンにものぼる。庫内は米に最適な環境(温度5度、湿度70パーセント)に保たれ、同時に低温乾燥調整が行われるので、新米のような味が維持される。しかも倉庫の維持経費は今までの低温倉庫に比べて約半分。米の貯蔵だけでなく、温度と湿度を変えれば野菜や切り花、苗の育成など様々な用途に活用できる。JAびばいでは多目的な利用をみこして倉庫を設計した。

 金子さんはいう。「雪エネルギーは再利用できるんです。目的に応じて段階的に利用する。これを『カスケード利用』と呼びます」。
 カスケードとは、段々になった滝をイメージするとよい。たとえば、貯雪庫で温度0度、湿度90パーセントの冷たい空気を使って、米の乾燥調整や貯蔵、建物の冷房などを行う(第一段階)。すると副産物として3度の冷水が大量にできるので、循環させて住居の冷房を行う(第二段階)。戻ってきた水は温度が少し上がって6度になっているので、もっと温度が高くてもよい野菜のビニールハウスの冷房に使う(第三段階)。ここで戻ってきた水は17〜20度、そのまま畑の農業用水として使う(第四段階)、といった仕組みである。
 雪で付加価値のついた農作物は、第二、第三次産業への広がりも生まれる。その可能性はまだ無限大。雪エネルギーをこれからどうやって発展させるか、大きな期待が寄せられている。
 2002年7月6〜7日には、美唄で「第五回全国雪サミット」が開かれる。雪エネルギー先進地・美唄は今年ますます注目を集めることになるだろう。

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