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雪あそび名人登場!<1> 犬ぞり名人 犬,ソリ,新野和也
犬,ソリ,説明

◆冒険家・植村直巳氏に憧れて
どんころ野外学校 札幌から車で約3時間半。国道38号をひたすら釧路方面へ進み、南富良野町のまちを抜けると、占冠方面へ進む道道1117号線が見えてくる。そこを約2キロ走ると、アウトドアスポーツの拠点として毎年多くの人々が訪れる、「どんころ野外学校」に到着する。そこには、暖かい日差しの中で気持ちよさそうにまどろむ11頭の犬の姿があった。この11頭の犬、すなわち11頭の「ソリ引き犬」の育ての親であり、犬たちと深い愛情と強い絆で結ばれた人物がいる。どんころ野外学校でガイド歴10年目という新野和也さんである。

犬,ソリ 新野さんは、1991年大阪から南富良野町へやって来た。冒険家・植村直巳氏に憧れていたこともあり、帯広にある植村直巳野外学校の姉妹校・どんころ野外学校の研修生として訪れたのだ。1年の研修を終え、北海道の生活にも慣れてきた1996年、マスメディアなどで「犬ゾリ」が取り上げられるようになり、「犬ゾリ」ブームが巻き起こる。1976年にグリーンランドからアラスカまでの北極圏1万2000キロを犬ゾリで単独走破した植村直巳氏の影響もあって、エスキモー犬、ハスキー犬、ゴールデンレトリバーの3頭の犬を飼い、犬ゾリを開始した。最初は好奇心。これが、新野さんが本格的に犬ゾリをはじめたきっかけである。



◆雪原を犬ソリがゆく
犬 チームのボスであるルーマ、一番の力持ちであり淋しがり屋のゴンタ、ぼたん雪から名付けられた牡丹、青い左目が特徴の文太、犬ゾリを引退した最年長犬・ブックなどが一つのケージの中で暮らしている。どの犬も人への愛情をにじませた穏やかな表情にみえる。のんびりムードで、吠える犬も一頭もいない。
犬 ところが、いざソリを用意してみんなが配置場所につき、「セット、ゴー!」のかけ声がかかると雰囲気が一変した。一斉に前へ前へと突き進む犬たち。先程までの穏やかな表情からは想像できない、勇ましい野生味をおびた顔へと変貌するのだ。繋いでいるリードをとおして全身にみなぎる力強さが伝わってくる。なめらかに滑り出したソリは次第にスピードを増し、まるで雪原の上を魔法の絨毯が走り抜けるように爽快感が全身を包み込む。人と犬、そして一帯の冷たい空気が一体となり、すべての意識が前に広がる銀世界に向けられる。
 やがてゴールをこえて静かにソリが停止すると、犬たちはいつもの穏やかな表情へと変わっていくのである。「よーしよし、よく走ったね。えらいぞ」。新野さんたちは力一杯走ってくれた犬を、力一杯抱きしめてほめていた。
 ツアーなどで長時間、長い距離を走るときは、時速約7キロで走り続ける。ちょうど人が走るくらいのスピードだ



◆人と犬との信頼関係は時間をかけることから生まれる
犬 ところで、なぜどんころの犬たちはこんなに温かく優しい目で私たちを見つめるのだろう? 
 「それは、人が大好きだからです」と新野さんが教えてくれた。
 1頭の犬が立派なソリ引き犬になるまで、約1シーズンかかるという。まずはハーネス(ソリを引く綱のこと)をつける不安をなくす訓練からはじまり、背後から聞こえる音(自分が引くソリの音。初めての犬は何かに追われているように感じるらしい)に慣れる訓練、ベテランのソリ引き犬と混じってソリを引く感覚を覚える訓練など。そして一番重要なことは、犬がソリを引くことを「楽しい」と感じてくれることだと新野さんはいう。
 「教えたことが出来た時、いっぱいほめるんです。どんなに小さなことでも。出来なかった時は根気強く待ちます。出来るまで。どんな犬でもやれば必ず出来るんです。問題は人があきらめるか、あきらめないか。根気よくあきらめなければ、必ず人と犬との間に信頼関係が生まれて、そこから『犬ゾリ=楽しい』『人=大好き』って認識するんですよ」
犬 これはソリ引き犬に限らず、愛玩犬のしつけにも共通するという。
 「とにかく、犬のサインを見落とさないことです。いま何を訴えているかを読みとることが犬と関わるための第一歩ですよ。あとは、ほめ方と叱り方ですね。そのバランスは僕もまだ勉強中です」。
 人と犬との関係は、大人と子どもの関係によく似ている。上からの目線では相手には何も通じない。同じ目線に立ってこそ、はじめて分かり合い、共鳴し合える。犬ゾリを通じて、新野さんはそのことを教えてくれた。


どんころ野外学校
住所:空知郡南富良野町落合1074
電話:0167-53-2171
URL:http://www1.ocn.ne.jp/ ̄donkoro/

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