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西別岳,北海道
西別岳

西別川,北海道
西別川上流

圭水神社,北海道
ふ化場創立100年を記念してつくられた、圭水(けいすい)神社

鮭,捕獲場,北海道
十四線さけ捕獲場

鮭
堰とめられる鮭たち
 
 
特集 鮭ものがたり 大地と海と神と
  母なる西別川をたずねて
鮭,西別川,文章 鮭の大地を旅して、森と川と人に出会う
鮭,西別川,文章
●鮭を求めて西別川を下る
 西別川は、その起点を標茶町虹別原野に発する。
 摩周湖の水が湖底から抜け、西別岳など外輪山の下をくぐり、虹別にわき出るという。本当かどうかわからないが、湖に落ちた熊が西別川に浮かんだというアイヌの伝承があるそうだ。
 その最上流部の湧水池が、かつては鮭の産卵場であり、現在は「さけふ化場」がそこに作られている。今も稚魚はここから海へ向かうのである。
 西別川にふ化場ができたのは、明治23年。西の千歳ふ化場と東の西別川ふ化場は本道の二大ふ化場とされていた。西別川は「鮭の種川」として、開拓使をはじめ漁業資源の様々な保護策がとられてきた。その伝統は、今もいきづいている。
 
 休日だったせいか、ふ化場には人がいない。
 満々と清水がたたえられているふ化場内の池の水底には、鮭の死骸がよこたわっていた。
 現在は河口から数キロ上流に「さけ捕獲場」があり、遡上した鮭はそこで捕らえられる。ふ化場まで上ることはないはずだが、鮭のなかには捕獲場を脱出して、さらに源流を目指す剛の者がいるのだそうだ。この鮭は、果たして最終目的を達したのだろうか。そう考えると少し切ない。
 ふ化場を見下ろす小山の中腹に鳥居がたっている。
 何かと思って近づいてみると「圭水神社」とある。圭は鮭、水は西別川の清流だろう。この源流の地は、神に守られた聖域なのである。
 西別川は、蛇行しながら根釧原野を下り、やがて根室湾にそそぐ。
 全長約114キロの旅である。その途中、延々と、本当に延々と、地平線のかなたまで牧場が続いている。川にかかる橋には「水産庁鮭・マス増殖河川」の看板が立てられている。そうかただの川でないんだ、さけます増殖河川なんだ。お墨付きをもらった川が、威張っているみたいだ。
 河口近くの「十四線さけ捕獲場」に行ってみることにした。
 川に、すのこ状の堰を作ることで鮭はここで止められる。中央にだけ入り口が開いており、鮭はわさわさと群をなしてつめかける。ところがここは捕獲用の生け簀であり、鮭たちは大きな「たも」で汲み上げられ、人間様の手に落ちるのである。捕獲した鮭は、ふ化場に運ばれ、そこで次の世代を産むことになる。
 生け簀では、遡上しようとする鮭がジャンプを続けていた。体には婚姻色が浮かんでいる。これが、あの美味だといわれる西別川の鮭なのだろうか。近くにいた漁協の方に聞くと、ここで獲れる鮭も十分に美味しいが、一般に加工したり、食べるための鮭は海で獲るのだという。
 はるばる源流から、鮭を求めてついに海に来てしまった。
 目の前は、根室海峡。その向こうは北方領土・クナシリ島である。


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