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「私のお父さん」 in 北海道盲導犬協会
人間の場合も、何歳で一線から退くか、その見極めが難しい。盲導犬の場合、引退は12歳と決められており、以後その個体に適した環境で悠々自適の毎日を送ることになる。
2005年に“定年退職”したエール(雄)は、北海道盲導犬協会内の老犬ホームでシルバーライフをスタートさせたが、そこには意外な出会いが待ち構えていた。2007年に父リックが老犬ホームにやって来て、ともに過ごすことになったのである。
北海道盲導犬協会老犬ホーム運営チームリーダーの辻恵子さんに16歳と15歳の老犬親子の歩みと日常を伺った。
プロフィル エールさん(15)=犬、札幌市出身、札幌市在住

盲導犬として活躍していた10歳当時のエール。ユーザーの指示に的確に応え、安全に誘導するのが務め(写真提供:北海道盲導犬協会)
――リックとエールの体調はいかがですか。
「リックは老化が進み、1カ月ほど前から人の支えがなければ歩けなくなりました。目もあまり見えていないようです。日中も寝ていることが多いですね。エールは歩行に衰えが見えるものの健康体で、ボランティアさんとの散歩を楽しみにしています。だれかがリックをかまっていると、いつの間にかエールもそばに来ていますし、リックを立たせて歩かせているとエールも並行してゆっくり歩く……。横たわっているリックの顔や体をなめることもあります」
――愛情表現のようにも思えますが、どのような意味合いがあるのでしょう。
「エールがはじめてリックの顔をなめたのは夕食後のことでした。エールは普段はおとなしいのに、食事の時間が近づくと、“早くくれ〜”って吠えるんです。食い意地が張っているものだから、リックの口元に残っていた食べ物の匂いにつられて思わずなめた(笑)。それがきっかけで目をなめ耳をなめるようになったのだと思います。リックはされるがまま。静かになめられています」
――リックも盲導犬だったのですか。
「いいえ。リックは新しい血統を残していくためにオーストラリアから導入した繁殖犬でした。盲導犬の犬種はラブラドル・レトリバーが主流ですが、当時、ラブラドル・レトリバーとゴールデン・レトリバーの雑種(F1)が注目されており、エールはラブラドルのリックとゴールデンの母の血統を受け継いでいます」

老犬ホームは北海道盲導犬協会の1階に。横たわる父リックの顔や体をなめる子のエール(写真提供:北海道盲導犬協会)
――リックは16歳、エールは15歳。長寿ですね。
「盲導犬の平均寿命は約13歳で、一般の飼い犬の平均寿命より1歳ほど長いという調査結果が出ています。これまで100頭以上の老犬の世話をしてきましたが、17歳まで生きた犬が何頭もいます。そうした経験から考えるに、盲導犬は誕生以来きちんと健康管理がなされていますし、いつも人に接しているので寂しい思いをせず、喜んで仕事をしているのでストレスが少ないのではないかしら。盲導犬は作業意欲が旺盛で、人間に対して反応がよい犬を選んで育成していますから、仕事が負担になっていないんです。また、“一日中働きづめでかわいそう”との声も聞かれますが、盲導犬が仕事をするのはユーザーさんが通勤・外出する際の数時間に限られ、それ以外はハーネス(胴輪)を外し、一般の飼い犬のように甘えたり遊んだりしているんですよ」
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