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北海道人特集−「となりの北海道人」
文/大藤紀美枝 写真提供/ばんえい十勝

父の性格は競走にぴったり、一方息子は癒やし系

―リッキーの性格は温厚、物静か、競うことがちょっと苦手と特別住民票に記されていますが……。

特別住民票を首に掛けた辞令交付式のリッキー。右は砂川敏文帯広市長、左は服部義幸調教師、馬上は佐藤希世子騎手

特別住民票を首に掛けた辞令交付式のリッキー。右は砂川敏文帯広市長、左は服部義幸調教師、馬上は佐藤希世子騎手


 服部「うちでならし始めたころは、リッキーも飛んで歩いたりしてたんですよ。それが調教を重ねるうちにだんだんおとなしくなっていったんです。だから、リッキーは何事にも一生懸命取り組むんだけど、競走馬としての魅力はそのぶん乏しかったかもしれません。しかし、穏やかで人に慣れやすいところは群を抜いていて、ばんえいのPR活動をするならこの馬しかいないと思いました。この馬なら子どもと触れ合ったり、街中で馬車を引いても大丈夫だろうと誰もが認めたのがリッキーだったんです」
 大河原「動物は体が大きいほど臆病でしょ。馬が騒いだり怒ったりするのは恐怖心からなんだけど、リッキーは人間に対して安心しているというか、自分ら騎手はもちろん、誰に対しても態度は同じなんです。PR活動と言ってもその内容はさまざまなわけだけど、リッキーはそこで何をすべきか、すぐに把握できるんですよ」

―リッキーのお父さん、カゲイサムはどんな馬だったのですか。

明星小学校の入学式に出かけ交通安全啓発活動をしたときも、リッキーの周りには子どもたちがいっぱい

明星小学校の入学式に出かけ交通安全啓発活動をしたときも、リッキーの周りには子どもたちがいっぱい

 大河原「カゲイサムは練習から本番まで100ある力を常に100出せる、ばんえい馬としては最高の馬でした。体はリッキーに比べたらスマートで、1000キロ前後だったかな」
 服部「われわれ競走馬を選定する者にとってカゲイサムは、あの馬の子を馬主さんに買わせたいと思わせる名馬でしたね。カゲイサムのお父さんのマツイサムは、ものすごい素質を持っていながら体が細くて大成しきれなかったけど、マツイサムも有名な種馬の子なんですよ」

―リッキーは素晴らしい血統なわけですね。

 服部「聞き分けがいいところは、確かに父親譲りですね。普段はやんちゃでも、ここはというところではキッチリ騎手の言うこと聞く。そういう馬でなけば大成しないで終わっちゃう。カゲイサムは強気で聞き分けがよく、リッキーはおとなしくて聞き分けがいいんですよ」

触られ、なでられながら、命の温もりを伝える

―リッキーは139戦6勝という戦績ですね。

 服部「連戦連敗したときは北のハルウララと呼ばれていました。競走馬は、自身の能力はもちろん、いいオーナー(馬主)、騎手、調教師、厩務員との出会いがあって初めて大成するんです。一番大事なのはオーナーとの巡り合わせで、リッキーのオーナーは競走馬としては採算ベースに乗らないリッキーを長い目で見守り、みんなに喜んでもらえるならいいように使っていいと言ってくれました。それで前例のない道が開けたわけです」

リッキーは国際トラクターBAMBA(更別村)にも参戦。集った人たちと触れ合い、ばんえいの魅力をアピール

リッキーは国際トラクターBAMBA(更別村)にも参戦。集った人たちと触れ合い、ばんえいの魅力をアピール

―2007年3月にレースを引退したリッキーは、いま、どんな毎日を過ごしているのですか。

 服部「ばんえい十勝開催日は、帯広競馬場で子どもたちを背中に乗せたり馬車を引いたりしてお客さんと触れ合っています。あとは市内はもちろん各地のさまざまなイベントに出かけています」

―リッキーの体重はサラブレッドの約2倍もあるのですね。

 服部「でも怖がる子はそういませんよ。リッキーに触って、なでて、ニンジンを食べさせたりして喜んでいる子どもたちを見ると、私たちも本当にうれしいです。リッキーの温かさは、触った子どもでなければわからない。生き物に実際に触ることによって生きていると実感できるし、生を実感したことによって死を悼む気持ちがわくと思うんです。そういった意味でも、多くの子どもにリッキーと触れ合う機会を提供していきたいです」

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