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北海道人特集−「となりの北海道人」
文/大藤紀美枝 写真提供/旭川市旭山動物園

父親の最大の役目は安全の保障

天気や気温を見計らって2006年12月、もうじゅう館デビューした赤ちゃんライオンのアキラ

天気や気温を見計らって2006年12月、もうじゅう館デビューした赤ちゃんライオンのアキラ

―最近のライラ・ファミリーの様子を教えてください。

 「母子と父親の部屋は別々で、放飼場でだけ一緒です。よく3頭で日なたぼっこしていますよ。幼いアキラに恐怖心はなく、ライラのたてがみに平気でじゃれついてますね。あまり近づくとレイラに呼び戻されますが、好奇心の方が勝って、またライラに近づいて行くんです。ライラにすれば、アキラにまとわりつかれるのが、わずらわしくてしょうがないんでしょうね。で、ポンと払うとアキラが「ギャーッ!」と啼き、その声を聞きつけて走って来たレイラに、ライラはガンと叩かれてます」

―レイラに叩かれても、ライラは怒らないのですか。

 「怒らないですね。そういうときは、むしろちっちゃくなってます。本気で闘うと10秒足らずで決着がつくぐらい圧倒的に雄の方が強いのに、母親に叩かれても反撃せずに引き下がるんです。距離感とか時期による立場の違いとかを互いに分かり合っているところが、すごいなと思います」

―ライラは、アキラが自分の子だと認識しているのでしょうか。

 「レイラが産んだ子だと認識していますが、それはレイラが大事にしているからであって、人間の父親の意識とは異なります。生まれてよかった、可愛いという感覚ではないし、親として教育的にかかわることもありません」

もうじゅう館(放飼場)のお気に入りの場所で、日なたぼっこをするライラ・ファミリー(筆者撮影)

もうじゅう館(放飼場)のお気に入りの場所で、日なたぼっこをするライラ・ファミリー(筆者撮影)

―では、子ライオンにとって、父親はどのような存在なのでしょう。

 「ライオンの群れは基本的に母系集団で、どこからかやって来た強い雄がリーダーにおさまって群れを統率しますが、そのお膳立ては雌が行っています。雌にしてみれば、群れに常に強い雄がいることで餌を獲る縄張りが確保でき、安心して子どもを育てることができます。父親は子どもに直接何かするわけではないけれど、“安全な場所の提供”という極めて重要な役割を果たしています」

―動物園ですから、ライラは他から雌や子どもを守らなくてもいいわけですよね。

 「そこが野生と根本的に違うところです。野生下で群れを率いる雄ライオンは、縄張りのパトロールをはじめ、しなければならないことがたくさんあります。でも、動物園ではゴロンとしていてもいいわけで、図らずも子どもの遊びのターゲットになってしまうわけですね。子どもは、じゃれることから狩りを覚え、図に乗ると大人に叱られることや父親にぐっと押さえ付けられたときに感じる力の差など、いろんな学習をします。ですから、動物園においても父親と子どもが同居する環境を設ける必要があると思います」

雄ライオンは成長したら群れを離れ一人立ち

―野生の雄ライオンは、成長すると群れから出されますが、動物園の場合はどうなるのですか。

 「1歳から1歳半になると、父親は雄の子の同居を許さなくなります。母親といつまでも一緒にしておくわけにもいきませんから、動物園では通常もらい手を探してから計画繁殖をします。野生下では群れから出された雄ライオンは、あちこちの群れの縄張りで追い払われ、所属していた群れから徐々に遠ざかり、その間に力を蓄え、どこかの群れの雄を追い出してリーダーにおさまりますが、飼育下では臆病な雄でも群れを持つことが可能です。もちろん、繁殖に至るには雌との相性というものがありますが……。動物ってみんなそうなんですけど、雌が雄を使うというか、実にうまくコントロールしているんですよ」

放飼場を俊敏に駆け回る生後6カ月のアキラ。一人っ子なのでじゃれる相手はおのずと両親に(筆者撮影)

放飼場を俊敏に駆け回る生後6カ月のアキラ。一人っ子なのでじゃれる相手はおのずと両親に(筆者撮影)

―雌に気に入られるには、強くなければ駄目なんですか。

 「ただ強いだけでは駄目で、群れの中で雌同士いざこざがあったとき仲裁に入って収めるといった能力も必要なんです。雄同士の闘いになったときは、雌が加勢した方が優位に立ちます。母系集団を率いて自らの子孫を残すには、やはり雌にモテなければならないわけです。ライラとレイラは、雄と雌1頭ずつで選択権のない中、飼育がうまくいって、いい関係を作ってくれています」

―アキラもモテる雄に育ってもらいたいものです。

 「レイラと一緒にしておけるのは1歳半ぐらいまでです。アキラの一人立ちのときをしっかり見極め、元気に旅立っていってもらいたい。そう考えてます」

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