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北海道人特集−「となりの北海道人」
文・写真/大藤紀美枝
 

ある日突然、海からやって来て、水族館の人気者に

「私のお父さん」inおたる水族館

1997年のある朝、おたる水族館で、その事件は起きた。見知らぬトドが1頭、トドのショーを行うプールで泳いでいたのである。しかも漁網を首にグルグルと巻き付けて……。傷を負い海から水族館に迷い込んだ“流れトド”はガンタロウと名付けられ、やがて成獣になって子を次々にもうけた。2004年に生まれたキンタ(雄)もそのうちの1頭である。獣医師で同館海獣飼育課長補佐の角川雅俊さんにトドの父と子について伺った。

プロフィル
キンタさん(2)
トド、小樽市出身、小樽市在住

“流れトド”から繁殖に貢献する“逸材”に

プールから上体を出したところのガンタロウ。首の回りの傷跡が痛々しいが、いたって元気
プールから上体を出したところのガンタロウ。首の回りの傷跡が痛々しいが、いたって元気

−ガンタロウは巨体で風格がありますが、首の回りの傷跡が痛々しいですね。

 「迷い込んで来たとき、漁網を首にグルグル巻いて、肉がえぐれ、もう少しで骨に達するところでした。治療して元気になったけれど、傷跡は10年経った今も消えません。野生の個体ですから、元気になれば海に放すのが通常ですが、そうすると、また漁網を食い破って漁業被害を出してしまうだろうということで、水族館で飼うことになったんです」

−それにしても、どうやって海から水族館に入って来たのでしょう。

 「うち(おたる水族館)のプールは、海岸をコンクリートで仕切って造っていますから、フェンスを挟んで海とつながっているわけです。トドはどっしりした見た目からは想像できないほど運動能力が高く、前脚がフェンスに掛かれば、あごを支点として乗り越えることは可能です。うちのプールのフェンスは上部を内側に向けた“返し”を設けているので、プールから外に出ることはできないけれど、入ってくることは可能だったということでしょう」

−まさに珍客ですが、ガンタロウは、この環境にすぐになじんだのですか。

 「ええ、まあ。トドは北太平洋に生息し、冬は北海道沿岸にも回遊してきます。ここが生息域であることに加えて、うちは自然のプールですから、人工的な施設に比べるとなじみやすかったと思います。ガンタロウは見てのとおり顏はいかついけれど、人を威嚇することもあまりなく、穏やかです。そういう性格もプラスに働いたかもしれません。ガンタロウは現在、推定14〜15歳。血筋の異なる貴重な雄として繁殖に貢献しています」

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