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北海道人特集−「となりの北海道人」

人工哺育の“刷り込み”で、人間に求愛

2005年6月に孵化し、2カ月経ったころ。
2005年6月に孵化し、2カ月経ったころ。セーヴェル(写真後ろ)はセルゲイ(手前)に比べパワフルなヒナだった

−猛禽類のフリーフライトを始めたきっかけは何ですか。

「来園者に鳥の生態を理解してもらうのと同時に、鳥をとおして自然界からのメッセージや現代の鷹匠の役割を伝えるためです。それから猛禽類のリハビリの意味合いもあります。動物園には、けがをした野生の鳥が頻繁に運び込まれ、獣医さんが治療して治った時点で自然復帰を図りますが、それだと病み上がりの人をフルマラソンに出すようなもの。猛禽類はアスリートです。ベストな状態で初めて狩りができ、それがかなわなければ飢えて弱って死んでしまいます。だから野生に戻すにはリハビリ期間が必要なんです。トレーニングは鷹狩りの技術をもってするしかなく、誰かが身につけなければと思い個人的に修業を積んで、昨年、諏訪流鷹匠の資格を取得するに至りました」

−セーヴェルをフリーフライトに出す理由は。

「猛禽類のヒナは生まれて最初に見たものを親だと覚え込みます。いわゆる“刷り込み”ですね。そして1カ月ぐらいすると繁殖相手の刷り込みが入ります。人工哺育のセーヴェルはずっと人間にしか接していないので、将来、繁殖期がきたら人間に求愛するはずです。フクロウの場合、人工哺育でも自然繁殖した例がありますが、人間の姿が刷り込まれた鳥は自然繁殖できないというのが一般論としてあり、フリーフライトの解説の中で、そうした背景も含めて語ることにより、お客さんに種の性質について多面的に伝えることができると思うんです」

自然界からのメッセージを伝え羽ばたく

羽音を立てず飛翔するセーヴェル。
羽音を立てず飛翔するセーヴェル。こうしたフリーフライトは、狩りの習性を利用してコントロールしている

−野生のシロフクロウは、どのように生殖活動し、また子育てをするのでしょう。

「雄も雌もそれぞれテリトリーを持ち、普段は単独生活をしています。春、交尾の時期になると雄は雌を求めて遠征し、出会って繁殖に入ります。雌は1個ずつ日をずらして産卵しトータルで4個から7個ぐらい産み、約30日間温めて孵化させます。ヒナが巣立つのは約40日後。その間、雄は常に狩りをして巣に餌を運びます。人間の物差しではかると、愛情を注いで一生懸命子育てしているように見えるけれど、ヒナは親を“自動餌出し機”ぐらいにしか思っていないようです。シロフクロウに限らず猛禽類は、みなそうです。腹が減ったヒナはものすごくアグレッシブだから、ある程度大きくなると、餌を運んできた親ごと捕まえて、けがをさせてしまうこともあり得ます。親はヒナが成長するにつれ、餌を徐々に巣から離した場所に置きますが、それには巣立ちを促すと同時に、危険を避ける意味合いもあると思います」

−セーヴェルが、刷り込みがあっても人になつかないのは、猛禽類の本能によるものなのですね。担当者としてセーヴェルの将来像をどのように描いていますか。

「猛禽類のフリーフライト」に登場したセーヴェル。
「猛禽類のフリーフライト」に登場したセーヴェル。本田さんは来園者に解説をし、鷹匠の技術を生かして猛禽類を飛ばす(筆者撮影)

「毛がわりをさせるために、5月ごろから夏いっぱい、トレーニングを中止します。毛がわり中は精神的にも成長する時期ですから、今回は人の姿が見えないケージで人の姿を見せないようにして餌をやり、餌と人間とを切り離していく作業をしようと考えています。セーヴェルの繁殖については、人間にしか求愛行動をしませんから、僕に射精した精液を採って、人間の刷り込みがある雌に人工授精させるしかないと思います。シロフクロウの雄は3回毛がわりしたところで真っ白になります。ですからセーヴェルも来年の秋には真っ白になるはず。これからもフリーフライトなどを通じ、自然界からのメッセージを伝える役割を担ってくれると思います」

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