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北海道人特集−「となりの北海道人」

オランウータン流、男の背中で引き付ける

−旭山動物園では母子と父が同じ空間にいますが、自然界でもあることですか。

 「本来オランウータンは、1頭の強い成獣の雄が、ジャングルの中に大ざっぱな縄張りのような生活圏をつくり、そこに数頭の雌がいて、基本的に雄も雌も単独で生活しています。雄は雌と出会って交尾し、終わるといなくなっちゃう。ですから雄が育児にかかわることはありません。しかし、自然界でも雄と雌が偶然出会うことがあるわけで、うち(旭山動物園)では、ある程度距離を保てる施設に同居というかたちで行動展示をしています。ただし夜は母子とジャックは別室です」

平成17年、2歳になる少し前のモモ
平成17年、2歳になる少し前のモモ。母親リアンが許容する範囲内で自由行動するようになり、樹上生活者の本領を発揮(写真提供:旭山動物園)

−ジャックとリアンは平成14(2002)年に出会い、翌年モモが誕生。見事なペアリングでしたね。

 「想像していた以上です(笑)。成獣のオランウータンは雌と雄の体格差が大きく、雄が圧倒的に強いので、一緒にいて何か気にいらないことがあると雌を殺してしまう危険性があるんです。だから普通は、幼いときから雌と雄を一緒にし、そのままおとなになりペアになってもらいます。広島安佐動物園で雌に先立たれて単独生活を続けていた20歳のジャックと旭山育ちの10歳のリアンという、成獣同士のペアリングは実を言うと危険をはらんだものでした」

−うまくいった秘けつは。

 「オランウータンの本能が発揮できる環境を整えたことと、ジャックという個体の巧妙な作戦ですね。ジャックはずっと平面的な生活をしていましたから、はじめはリアンのように自在に塔に登ったりロープを渡ったりすることをしませんでした。ジャックはリアンにすごく興味を持って、リアンを追うんだけれど捕まえることができなかったんです。で、どうしたかというと、地面にベターッとはいつくばり、いじけたそぶりをしたんです。すると、リアンの方が気にしだして、ちょっかいを出すようになった。それで、ジャックが動くとリアンが逃げる。そういうことを延々と繰り返した後、しょんぼりしているジャックの背中をリアンが指先でチョンチョンと触るようになっていったんです。ジャックはリアンを捕まえられる距離でも捕まえずにずっと体を小さくしていて、やがて肌が触れ合ってペアリングが成功したんですよ。それで、めでたくモモが生まれました」

長い毛もまた成獣の雄の自慢
長い毛もまた成獣の雄の自慢。それを見せるように背中を向けたりも。モモはそんなジャックに興味津々

−「ジャックはモモのお父さん」というふうに、私たちはつい擬人化して呼んでしまうのですが。

 「先ほども言いましたように、オランウータンのオスが育児にかかわることはありません。ジャックはモモに対して父親として積極的に何かするわけではないんです。でも、強い雄が近隣にいてくれると結果として雌も安心して生活できるわけで、そういった意味では直接ではないけれどもジャックも子育てに貢献していることは確かです。われわれ人間は、動物に子ができるとすぐ「親子」という発想になりがちで、「親子」でいれば幸せそうに見えたりしますね。しかし、それは見る側の一方的な気持ちの流れであって、相手がそのような状態であるかどうかとはまったく異なる話です。日々、動物を見ていると、われわれ人間の考えや人間の生き方が動物たちの生き方の基準にはならないということを痛感します」

−モモの将来像は。

 「オランウータンは通常7〜8歳で単独生活を始めます。リアンが次の子を産み、子育てをする姿からモモはさまざまなことを学んで一人立ちしていくはずです。その間にジャックを見て、雄とはこういう生き物だということも学習しますから、有能な雌の成獣になると思います」

旭山動物園 http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/

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