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道産小麦にこだわった「はんかくさいパンづくり」―れもんベーカリーの10年
北海道人特集
ともに当別町生まれの大塚利明さん・裕子さん夫妻は、約50haの農場で毎日汗を流す

ともに当別町生まれの大塚利明さん・裕子さん夫妻は、約50haの農場で毎日汗を流す

“ふっくら”とは一味違う食感の、道産小麦100%パン

“ふっくら”とは一味違う食感の、道産小麦100%パン

 国産小麦のほとんどは、うどんなどに適した「薄力小麦」で、決して「美味しいパン」には向いていない。だが、寒冷で雨の少ない地方ならば、パン向けの「強力小麦」の収穫に期待できる。昭和60(1985)年に道立農業試験場で生まれたハルユタカは、その期待が形になった春蒔き小麦だった。
 石狩管内当別町に約50ヘクタールの農地を持つ大塚利明さん(52)は、「ハルユタカが充分に出回り出したのは、『初冬蒔き』が軌道に乗ってからですよ」と説明する。
 春蒔き小麦が収穫される8月中旬、北海道は雨の日が多い。小麦が雨に当たると、「穂発芽」を起こして澱粉が変質してしまう。「通常300ないし400単位の『アミノ数値』が、雨に当たると100前後にまで落ちてしまう」と、大塚さん。「初冬蒔き」は、その問題を解決する手法だった。春に蒔くべき種を前年の冬に蒔き、雪の下で冬を越させることで、翌春の早いうちから生育をスタートできる。雨期が訪れる前に収穫するため、アミノ数値も下がらない。
 その初冬蒔きが定着したのが、5年ほど前のことだった。

れもんベーカリーでは、アレルギー物質の有無を含めた成分表示を早くから行っていた

れもんベーカリーでは、卵・牛乳などのアレルギー物質の有無の表示を早くから行っていた

「道外の農家さんが小麦の話を聞きにくることもあります」と、荒川伸夫さん(左は、れもんベーカリー専属タレントのジェームズさん)

「道外の農家さんが小麦の話を聞きにくることもあります」と、荒川伸夫さん(左は、れもんベーカリー専属タレントのジェームズさん)

れもんベーカリー店内風景

 「うまいパン」への思いが、製造者の荒川伸夫さんと、消費者のすずきももさん、そして生産者の大塚利明さんの3者を繋げた。道産小麦を求めて、荒川さんは大塚さんと出会い、れもんベーカリーは地元の小麦だけでパンを焼き続けることになった。ごく初期のころから卵・牛乳などのアレルギー物質の有無を商品に明記しているのは、ももさんら「パンの会」と関わり、メンバーらの声に耳を傾けたためだ。「地産地消」や「食の安心・安全」といった考えに適うパンづくりは、「パン好きの皆さんに言われる通りにやってきた結果」なのだと荒川さんは言う。少数派の要望に応えて安価な輸入小麦に背を向ける事業は、「はんかくさい会社でないとできないこと」だった。

 道産小麦のパンには、輸入小麦のパンにはないコシがある。さらに小麦本来の風味を味わうことができるので、充分な食感をもちながらどこかやさしい味だ。鶏卵や牛乳などの副材料を含んでいても、また惣菜を盛り込んだ調理パンに仕上げてあっても、一口頬張ると「パンを食べている」ことを実感できる。主流のハルユタカのほか、当初からパン用に開発されたキタノカオリやホクシンなど、素材そのものの味を食べ比べるのも楽しい。お米でつくったパンまである。れもんベーカリーでは、これらの独自商品が一日平均600個売れる。来店客の多くは、そういうパンを探し求めてお店を見つけた人たちだ。

 荒川さんは、この10年間で私生活でもパンを口にするようになったという。もともと「ごはん党」だったはずの嗜好が変わったのも、地元素材の魅力を知ったからには仕方のないことだった。

れもんベーカリー

http://www.lemon-bakery.com/

(2006.11.30 掲載)

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