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道産小麦にこだわった「はんかくさいパンづくり」―れもんベーカリーの10年
北海道人特集

道産小麦にこだわった「はんかくさいパンづくり」―れもんベーカリーの10年

 「顔の見える麦」にこだわり続けるパン屋さんがある。
 札幌市豊平区に「れもんベーカリー」が開店したころ、「地産地消」の言葉はまだ市民の耳になじんでいなかった。充分に流通する輸入小麦に背を向け、いち早く地元の素材でパンづくりを始めた店は、その後の10年間で多くの支持を得ることになる。
 取り組みを後押ししたのは、北海道生まれの小麦の新品種と、それを求める消費者たちの声だった。

れもんベーカリー入り口
パン好きが嵩じ、2005年にはレシピブック『だい好きパンの12か月』を上梓したすずきももさん

パン好きが嵩じ、2005年にはレシピブック『だい好きパンの12か月』を上梓したすずきももさん

「だい好きパンの会」には、小麦の栽培体験などの催しも=2000年8月の収穫作業

「だい好きパンの会」には、小麦の栽培体験などの催しも=2000年8月の収穫作業

 「れもんベーカリー」を経営するシロクマ北海食品(札幌市中央区)の荒川伸夫社長(59)は、「戦後に余剰農産物を活用するために始めた商売が、半世紀経って地元農業を応援することになるとは」と苦笑する。
 シロクマが函館市で創業したころ、パンは決して美味しい食べ物ではなかった。
 「昭和27(1952)年に経済統制が解除されてからも、『うまいパンをつくる』という発想は生まれなかった」と、荒川さんは話す。その後の高度成長とともにパン食は普及したが、飽くまでも手軽で簡便な食事としてだった。

 イラストレーターのすずきももさん(44)も、長いことパンを美味しいと思っていなかった一人だ。少女時代は給食のパンをよく残し、近所の野良犬に与えていたほどだったという。
 そんなももさんが初めてパンを「美味しい」と感じたのは、学生時代に旅行先のサンフランシスコで「サワーブレッド」を口にした時だった。大きく切り分けたパンから漂う独特の酸味を含んだ匂いを、ももさんは今も忘れられない。帰国後、「すぐれた食材があふれている北海道で美味しいパンに出会いたい」という思いを強く抱くようになった。
 平成9(1997)年、ももさんはパン好きの仲間たちと一緒に「だい好きパンの会」を旗揚げした。地元にようやく「美味しいパン」の店が増え始めたころで、れもんベーカリーが開店したのもこの年だ。発足当初から会に協力していた荒川さんらとの交流を通じ、ももさんは道産小麦の新品種「ハルユタカ」に出会うことになる。

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