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イッセー尾形が惚れた場所−札幌麻生コスモス作業所の話
北海道人特集
メモ帳の紙を切るのも手作業―「機械で裁断しないからいい味が出る」という
アイロンをかける手を休めずにヨーコさんは記憶を手繰る
イッセーさんが描いた版画の原版が、大量に保管されている

 結婚を機に北海道に移住したヨーコさんは、趣味の陶芸や染織に打ち込むつもりでいた。夫の光路さん(48)が運営する小規模作業所に通うことになるのは完全に想定外だった。
  「染めもできるし縫い物もやってるし、ま、いいか」と思っていた矢先に「オリジナルグッズつくったら面白いんじゃないか」というひらめきがあり、イッセーさんと森田清子さんにグッズ製作を提案したのだった。
  移住翌年のお正月、ヨーコさんは公演で来道していたイッセーさん一行と合流し、「キヨコさん」にグッズの話を持ちかけた。
  「イッセーさんのグッズ、うちでつくりたいんだけど」と言うと、キヨコさんは「いいねえ! ぜひやんなさいよ」と即答した。
  ものの3秒で提携が決まったのだった。
  量産はできないけれど、手作り感に満ちた物。お金をかけないで作れる面白い物。授産施設は、そうしたグッズの工房にうってつけだった。

この布が「カフェエプロン」になる
作業日課表の上に、イッセーさん直筆のイラストパネル

 20歳代から60歳代までの15人が、それぞれのペースでオリジナルグッズづくりの作業に没頭する。午前9時から午後3時まで、降っても照っても、その風景は変わらない。
  今年3月に参加したばかりの女性は、画用紙を切る手を休めずに「自分の仕事に集中するのが、いいです。集中すると、面白い」と、笑顔を見せる。成果が形になるたびにキヨコさんが「いいねえ! これ」と声を上げる。

 四半世紀以上にわたって一人舞台を踏んできたイッセー尾形さんは、テレビデビューから今に到るまで芸能事務所の誘いに応えたことがない。演出の森田雄三さんとともに役者1人・演出家1人の超小所帯で活動してきた。
  年間100回を超えるイッセーさんの国内公演は、毎回満席となり、チケットを手に入れるのも大変だ。英国やドイツなど、海外での評価も高い。昨秋には『ニューズウィーク』誌の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれもした。そんな役者の公演会場を彩るグッズの製作が、今も北海道の工房に一任されている。
  「“独占企業”ですよ。またそれが、築50年のアパート改装した施設だなんてね」と、ヨーコさん。

 2002年のクリスマスイブには、ふらりと工房を訪れたイッセーさんが、その場で働く人たち全員の絵を描いて贈った。今、その絵は西向きの窓から作業場を見ている。広さ22帖ほどの作業場に通う仲間たちは、毎朝その絵に迎えられて作業を始めるのである。

イッセー尾形さんの連載コラム配信決定!

 ポータルサイト『北海道人』で、イッセー尾形さんの連載コラムが始まります。
  公演で国内外の各地を訪れるイッセーさんが、旅先で見つけたあんなこと・こんなことを思いのままに綴る日記。全篇に描き下ろしイラストを添え、『北海道人』サイトとメールマガジンの同時配信でお届けします。
  第1回配信は、10月上旬を予定(メルマガ配信は10月23日から)。沖縄から北海道まで、一人芝居を続けながら北上する“旅芸人”イッセーさんの舞台裏からの報告に、どうぞご期待ください。

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